◎地域便り


複合経営への歩みとこれからの計画

宮崎県 矢野光絋

 宮崎県串間市の黒木松吾さん (38歳) は、 成雌牛17頭による肉用子牛の生産と、

たばこ、 水稲の栽培による複合経営農家である。 



 昭和49年17歳で農業大学校を卒業し就農した。 当時、 黒木家では、 たばこと水

稲による耕種を中心としていたが、 子牛生産を加えた複合経営にすれば収入が安

定すると考え、 父親に相談し子牛生産に力を入れることとなった。 



 昭和50年、 2頭を自己資金で導入したのを始めに、 近代化資金などで段階的な

増頭を図り、 同52年には飼養規模を8頭に拡大した。 55年に父親が病死し、 労働

力が妻と2人だけになったことから、 無理をしないように肉用牛を3頭減らし、 

水稲30aの減反を行った。 最も辛くて苦しい時期であった。 3年後ある程度自信

がついたのを機会に、 また水稲の減反政策もあり、 肉用牛のウエイトをさらに高

めることとした。 57年、 資金300万円を借り入れ、 畜舎を増設し、 増頭の準備に

かかった。 62年には飼料刈り取り作業を委託、 合理的経営を目指すようになった。 

肉用牛、 たばこ、 水稲の3本柱で経営が軌道に乗ったことから、 さらなる合理化

を目指して青色申告記帳を開始した。 



 これまでの経営の特徴としては以下の点がある。 畜舎の増設は古材などを利用

し、 機械は耐用年数以上に利用することにより、 固定費の削減を図る。 母牛の経

済効果を加味した早めの更新 (平均年齢6.9才、 平均産次4.9産) により、 生産性

の向上 (平均分娩間隔11.5ヵ月) と高収益を実現している。 自給飼料生産では、 

機械の共同利用や通年サイレージ体系の確立により生産コストの低減を図ってい

る。 



 今後の家族の生活設計として、 55歳定年退職、 退職金2,000万円、 年金300万円

を考えており、 この計画を実施するために、 価格保証制度のある肉用牛肥育と、 

価格の安定しているたばこの栽培を中心に、 農業生産所得1,000万円を維持して

いきたいと考えている。 


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