◎地域便り


人工授精で豚の安定生産

群馬県/南山 治美

 日本での豚の人工授精は古くから研究されているが、 ヨーロッパ等に比較する

とその普及率はまだ低い。 



 群馬県畜産試験場では、 昭和49年に豚人工授精所を開設し、 農家への技術講習

と精液の配布を行ってきたが、 オーエスキー病のまん延、 農家戸数の減少等で精

液の配布が一時激減した。 また、 疾病問題のために生産者は外部からの豚の導入

を極力控え、 血液更新ができにくい状況となってきた。 しかし、 人工授精を用い

れば、 高品質で安定した生産、 疾病対策、 低コスト化に大きな効果があり、 最近

になって全国的に関心が高まっている。 



 人工授精への関心が高まるにつれて、 群馬県でも近年少しずつ精液の配布が増

加している。 「自分の農場にあった精液を利用したい」、 あるいは 「実際に種雄豚

を見たい」 という生産者の要望が増えたため、 畜産試験場では8年ぶりに種豚を

公開し、 「豚人工授精講習会」 を今年3月に開催した。 近年は防疫上の理由から

外部の者は当場の農場内に入ることができず、 直接豚を見ることもできなかった

が、 当日は農家や関係者等60名が参加し、 人工授精への関心が高いことがうかが

われた。  



  当場では精液を県内生産者に幅広く利用してもらうため、 精液の宅配の実用化

に取り組み、 平成8年5月から宅配を開始した。 遠隔地の生産者や過去に人工授

精の経験がある人等から多数注文があり、 今後人工授精用精液の需要が増加する

と思われる。 家畜改良促進および養豚経営安定の一助として、 人工授精の利用率

をさらにアップさせていきたい。




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