◎地域便り


お灸 (きゅう) 療法で不妊牛治療

鹿児島県/田原 則雄

  「不妊牛を肉牛として売ると、 市場では捨て値同然。 それよりお灸で治療し子

牛を産ませた方が断然お得!」 と、 最近、 牛のお灸療法が話題となり、 静かなブ

ームとなっている。 



 牛のお灸療法は、 福岡県農業共済組合連合会八女中央家畜診療所の保坂虎重獣

医師が20数年前に始めたものである。 当初は消化器病に応用され、 その後産後起

立不能症、 周産期疾病にと応用範囲が広げられてきた。 昭和55年頃、 お灸回数の

多い牛ほど発情回帰が早く受胎率も良いことが判明し、 不妊治療に応用されるよ

うになってきた。 



 鹿児島県北薩地域での活用はまだ日が浅いが、 県内外においてその効果が実証

されたことから、 農家の関心と期待が高まってきた。 各市町の畜産技術員連絡協

議会や農業共済組合、 農協などでの研修会の開催、 広報誌やポスターによる普及

活動により、 酪農家や肉用牛繁殖経営で活用され始め、 不妊牛治療による生産率

アップに効果を上げている。 



 お灸療法は、 安くて、 副作用がなく、 農家が簡単に実施できるメリットがある。 

その方法と注意点は次のとおりである。 



1 牛が暴れないようにつなぎ、 尾を飛節に固定する。 



2 ツボ (別図参照;後部の7か所だけでも効果あり) にみそを塗る。 (もぐさ

  の接着と軽い火傷に有効) 



3 1.5〜2.0gのもぐさを親指大に丸め、 みその上に乗せ、 蚊取り線香などで火

  を付ける。 



4 分娩後50〜60日経っても発情のこない牛は、 1日1〜2回を3〜4日間実施

  する。 



5 発情が確認できても授精できない牛は、 次回発情予定の10〜7日前に1〜3

  日間実施する。 



6 授精した牛は、 妊娠鑑定を行い空胎を確認してから実施する。 (子宮が収縮

  して流産の恐れがある。) 



7 火災予防のため、 敷きワラのないところで行い、 お灸中は牛から離れない。 



8 火傷の後の治療は不要である。 



9 青草給与と運動場に出すことも忘れないでほしい。



【熱気モーモーお灸療法研修会風景(入来町)】








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