◎地域便り


無獣医地域パトロール事業による離島の肉用牛振興

鹿児島県/新保 秋雄

 鹿児島県の三島村及び十島村は、 県本土から南方に28kmから300kmの間に島々

が点在する孤立性の強い外海小離島からなり、 厳しい地理的条件下で交通手段と

しては村営船が運航しているだけである。 両村では、 豊富なリュウキュウカンザ

ンチクが繁茂する自然環境を利用した周年放牧により、 2,260頭の肉用牛 (黒毛

和種) が飼養されている。 肉用牛生産は農家収入の大きなウエイトを占め、 大切

な換金作目となっている。 



 鹿児島中央家畜保健衛生所では、 昭和53年度から無獣医地域パトロール事業に

より、 家畜診療、 衛生検査指導などを実施するとともに、 現地農家による衛生補

助員体制の整備を推進している。 ここ4年間で見ると、 パトロール回数は101回、 

人数では述べ198人を数え、 診療・検査頭数においては、 除角1,249頭、 妊娠鑑定

874頭、 血液生化学的検査190頭、 去勢113頭などで、 延べ頭数で合計2,683頭に及

んでいる。 



 家畜診療については、 空胎防除、 子牛の下痢対策と併せて、 薬浴や薬剤散布に

よるピロプラズマ病の発症防止に努めてきている。 また、 各島に配置している20

名の衛生補助員の技術研修を毎年実施し、 疾病の緊急発生時における応急措置体

制が整えられている。 これまでの衛生補助員を中心とした技術指導により、 去勢

については全島に普及定着し、 また、 角突きによる事故防止と多頭飼育を可能と

するため、 繁殖雌牛の除角の推進により、 ほぼ全島の牛が除角済みとなっている。 



 昭和63年度から市場出荷されるようになった三島・十島産の子牛は、 放牧と生

後3カ月で母牛と引き離して補助飼料をあたえる子牛別飼いを組合せた育成管理

に特徴があり、 また、 最近では改良面についても関係者による積極的な指導が行

われ、 市場での評価も向上しつつある。 今後とも、 本事業の実施により生産性の

向上を促進するとともに、 自然条件と豊富な草資源を生かした低コスト生産の推

進により両村の肉用牛の振興が図られることを期待したい。



【除角して周年放牧されている牛群(諏訪之瀬島)】



【三島村、十島村の位置図】




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