◎地域便り


近赤外分光光度計を普及活動に利用

愛知県/市川 明

 愛知県では、 農家の要望に応えるために、 たい肥や飼料などの成分を簡易にま

た迅速に測定できる近赤外分光光度計を県内2カ所の農業改良普及センターに導

入した。 



 近赤外分光光度計は、 調べたい試料 (穀類、 牧草、 果実など) に数秒から十数

秒間近赤外線を当てるだけで各種成分が測定できる。 また、 処理は穀類、 たい肥、 

牧草などでは乾燥粉砕するだけ、 果実などはそのまま表面から測定ができる。 そ

れも一度に多成分 (穀類や牧草ではたんぱく質、 繊維、 脂肪など、 果実では糖度

とか酸など) の測定が可能である。 近赤外分光光度計は従来の化学分析に比べ多

量な薬品を使用しなくても済むし、 また分析の手間や熟練が不必要で分析コスト

も安い。 このようなことから、 農家指導において迅速な対応が必要な農業普及員

に対して強力な助っ人となると期待されている。 



 しかしながら、 近赤外分光法は万能ではなく、 いろいろ解決しなければならな

い問題がある。 まず測定をするには各成分の検出の基準となる検量線の作成が必

要で、 それには従来の化学分析値が必要となる。 でも一度検量線ができてしまえ

ば後は簡単で、 一試料の分析が数秒で済む流れ作業となる。 また、 無機成分 (ミ

ネラルなど) は原理的に測定できないし、 微量な成分の測定も困難とされている。 

これらの問題に関しては、 各方面の研究機関で解決法が研究されつつある。 



 現在、 農業改良普及センターの協力を得て県内各地からたい肥、 牧草を収集し、 

たい肥では炭素と窒素含量など、 牧草ではたんぱく質や粗繊維などの一般成分が

測定できる検量線を作成している。 これらの作業は試験場の専門技術員が中心と

なり、 関係研究室との共同研究として実施されている。




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