★ 事業団レポート


第8回アジア・大洋州畜産学会議、 開催さる

企画情報部 野村 俊夫
アジア・大洋州畜産学会議について

 近年、 乳・肉・卵・毛・皮革等の畜産物の生産と、 それらの利用に関する技術
は、 世界の畜産分野の研究者と技術者の研さん・努力によって、 著しい進歩をと
げている。 これは、 育種学、 繁殖学、 生理学、 生化学、 微生物学、 栄養学、 飼料
学、 家畜管理学、 畜産物利用学など幅広い分野の研究者が、 家畜の生産特性の解
明に向けて協力してきた成果である。 

 こうした中で、 世界でも特有な伝統的小規模複合農業体系と大規模単一農業体
系の両者を有するアジア・大洋州地域においても、 畜産分野の研究者が一堂に会
し、 家畜生産技術の向上という共通目標に向かって協力しようという意識が高ま
り、 1980年に、 第1回アジア・大洋州畜産学会議がクアラルンプール (インドネ
シア) で開催された。 

 その後、 同会議は、 マニラ (フィリピン)、 ソウル (韓国)、 ハミルトン (ニュ
ージーランド)、 台北 (台湾)、 バンコク (タイ)、 バリ (インドネシア) におい
て順次開催され、 今回は(社)日本畜産学会の主催によって、 わが国で開催される
運びとなった。 

 今回の会議では、 特に、 ガット・ウルグァイ・ラウンドの合意が実施に移され
る中で、 アジア・大洋州の各国政府が、 国際的な競争力を有する農業体系の確立
に向けて、 どのような政策を打ち出すか等の点にも関心が寄せられた。 

日本会議の概要

 10月14日 (月) から18日 (金) までの5日間、 千葉市の幕張メッセで開催され
た今回の会議は、  「人類福祉のための持続的家畜生産を目指して」 をメインテー
マに、 アジア・大洋州各国からの多くの研究者を含む1千名を超える参加者を得
た。 

 会議は、 14日の全体会議を皮切りに、 8つのシンポジウム、 4つのワークショ
ップ、 特別講演等により構成され、 それぞれのテーマに即して活発な討議が行わ
れた。 

 このうち、 当事業団が共催したシンポジウム8では、 「新たな世界貿易体制下
におけるアジア・大洋州の畜産の課題と展望」 というテーマの下で、 各国の関係
者から、 それぞれ、 ガット・ウルグァイ・ラウンド合意の実施が、 各国の畜産物
生産及び貿易に及ぼす影響についての報告が行われた。 

 わが国からは、 (社)家畜改良事業団理事長の中瀬信三氏が 「世界貿易機構 (WT
O) 体制下における日本の畜産業」 と題する講演を行い、 世界の食料供給が不確
実な時代に入り、 また、 畜産物を含むわが国の食料自給率も一定の低下が見込ま
れる中にあって、 今こそ国民と国土を維持するための産業調整に向けた新たな国
際原則を打ち立てることが必要であり、 同時に、 各国の技術情報等の交換を大い
に拡大するべきであると訴えた。 

 同シンポジウムでは、 この他、 豪州の肉牛・酪農産業、 タイの鶏肉産業、 台湾
の豚肉産業、 韓国及びフィリピンの畜産業の将来展望等について、 それぞれ各国
の関係者による講演と討議が行われ、 出席者は熱心に耳を傾けていた。 

 なお、 これらの講演・討議内容の一部については、 今後、 「畜産の情報」 海外
編において、 順次、 紹介することとしたい。

 


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