★ 事業団レポート


集まれ! 酪農大好き人間

企画情報部 横打 友恵

酪農の魅力に触れたくて

  「自然が好き」、 「動物が好き」、 「酪農に興味があるから」、 「牛乳やチーズが大 好きだから」、 「視野を広げたいと思って」 とそれぞれの期待を胸に、 8月22日か ら24日の3日間、 16才〜25才までの20名の男女が蔵王の地に集まった。  周年拘束性の高い酪農経営にゆとりをもたらす酪農ヘルパー事業。 その全国組 織である社団法人酪農ヘルパー全国協会が主催したこの酪農体験交流会は、 興味 はあるが実際の酪農体験がない若者に、 酪農や酪農ヘルパーのことを少しでも知 ってもらおうと企画され、 今年で2回目になる。

早起きから始まる作業体験

 2日目の早朝、 身近なところから酪農を知るための体験が始まった。 参加者は、 実際の搾乳を体験する前に、 まずは練習器を使って手搾りや、 チーズとバター作 りに挑戦した。 牛乳を温め、 酢を加えてしばらくすると固まり、 布でこすとカッ テージチーズが、 また、 生クリームと牛乳をビンに入れ振るとバターができあが る。 普段、 何気なく口にしている乳製品が、 自分たちの手で作り出せることに皆 感動の面持ちであった。 出来具合はそれぞれ微妙に異なってはいたが、 考えてい たよりも手軽に作れるので、 今後は、 自分で工夫をして挑戦してみたいという声 も聞かれ、 牛乳への関心が深まったようだった。  【牛乳を使っておいしいカッテージチーズ作りに挑戦】  牧場では、 生後間もない子牛へほ乳をさせてもらった。 旺盛な食欲から乳首と 思って指先に吸い付いてくる仕草があまりにもかわいいので、 その場から立ち去 りがたく、 またその一方で、 乳牛は、 5、 6産でアウト (廃用) されるのが普通 という話を聞き、 この子牛たちもそうなることを考え、 皆言葉を失ってしまった。

ヘルパーはやりがいのある仕事

 宮城県生乳販売農協連合会が組織する酪農ヘルパー利用組合の専任ヘルパーと のパネルディスカッションなどを通して、 参加者は現場で活躍するヘルパーの生 の声を聞くことができた。  ストレスの多かったOL時代とは違って、 ヘルパーになって自分の時間を持てる ようになった人、 20年働いてきて、 何か違うことがしたくなってヘルパーを選ん だ人、 そして実家が酪農家であるにも拘わらずヘルパーの仕事が好きでヘルパー を続けている人。   「酪農は毎日が単純な作業の繰り返しだが、 ヘルパーは毎日違う農家を訪ねる ので、 毎日違ったことができる」、 「牛という財産を預かり、 乳という商品を作る ための責任は重い」 といった率直な感想が聞かれた。 また、 これからは横のつな がりを大切にして、 ヘルパー同士の勉強会や交流会を宮城県全体に広げていきた いという夢もあり、 生き生きとヘルパーの仕事や今後について語る姿に、 参加者 は大いに影響を受けていた。  【広い牧草地でのんびり過ごす牛を間近にして】

私たちは大地を相手に仕事をしている

 2日目の夕方、 実際の酪農ヘルパーの仕事がどういうものかを体験するために、 近隣の酪農家5戸へグループに分かれて向かった。 研修期間中の宿泊地蔵王酪農 センターから歩いて5分の佐藤牧場には、 参加者5人が訪れた。 2人1組のヘル パーのてきぱきとした仕事ぶりに圧倒される。 牛舎の清掃を1人がしている間に もう1人が5種類のエサを順番に給与する。 乳房を拭いてミルカーを取り付け、 4頭を一度に搾乳し、 終わった順に乳房を消毒。 41頭中、 乳房炎にかっているも のを除いて、 38頭を搾乳。 牛舎の2階から、 ロールベールサイレージを落とし、 最後に床におがくずをまく。 この間、 約2時間で、 一連の作業がよどみなく行わ れる。 参加者たちは、 少しでも多くのことを吸収しようと、 ヘルパーの指導の下、 清掃や給じを手伝った。  翌朝の作業は午前6時から始まった。 残った干し草を掃き寄せ、 新しいエサを 給与するといった前日と同じ作業が繰り返されたが、 前日と違うのは、 ヘルパー に指示される前に自分達でほうきを持ち、 床を掃き始め、 エサをリヤカーに積み 出しと、 それぞれが分担して作業に取りかかったことだった。 あいにくの雨と8 月下旬にしては涼しい中で、 汗をかきながら皆黙々と自分たちの仕事をこなして いく。 ヘルパーの邪魔にならない程度に恐る恐る手伝っていた前日とは、 うって 変わった積極さである。  作業終了後、 「大変だけど大地を相手に仕事をしているという実感がある」 と いうヘルパーのひとことに、 今回の酪農体験に参加した答えが集約されているよ うだった。  【早起きして気持ちいい汗をかいて】

充実感いっぱいの3日間を過ごして

 今回の交流会で参加者は、 酪農という仕事の持つ重労働、 汚い、 地味といった イメージが払拭され、 酪農への興味を共有し合う新しい友達と出会い、 また、 将 来の進路の選択肢の一つに酪農を加えることを真剣に考えようとしている。 1人 1人にとって新しい何かを発見した夏休みとなった。
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