北海道/鎌崎 信一
「消費者市場に適合した育種改良」をメインテーマに、9月10日から札幌市で世 界ホルスタイン・フリージアン会議が開催された。アジアで初めての開催とあっ て、オランダ、アメリカなど酪農先進国をはじめ、中国、イスラエル、ブラジル、チリ などの酪農の発展途上国を含めた三十数か国約250名の参加に、国内から約500名 が加わり、各国からの話題提供、現状報告や真剣な議論がなされ、4日間の日程は 盛会に終了した。 なかでも、セッションD「利潤の上がる酪農経営とは」のパネルディスカッション で、酪農経営にbST(bovinesomatotropin牛成長ホルモンの一種で泌乳を促進する) を使用することの是非をめぐって興味深い議論があった。 アメリカ食品医薬品局(FDA)では安全性を認める報告を出しているが、参加した 各国酪農パネラーからは、否定的な意見が相次いだ。 ドイツの酪農家ヘルムート・クネル氏は「今、消費者は非常にデリケートになっ ている。ホルモンを使ったら乳価は暴落してしまう」と警戒。カナダのガイ・シャ ルボノー氏も「今、農業で社会的問題を起こしたくない。私の知る限りでは、使って いる酪農家はカナダにはいない。もし使えば、酪農家が減ってしまう」とまで言い 切った。日本からは、北海道釧路支庁管内標茶(しべちゃ)町の小泉恒男氏(JA標茶 専務)が、「興味はあるが、今のところ使う気はない」と述べた。フランスのポール・ マルタン氏は、「bSTに頼らなくても十分に資源と方法手段がある」、ハンガリーの 畜産公社役員のボール・ツアヴァイ氏も「法律で使えないことになっている」など、 参加者は一様に否定的であった。 世界会議では「酪農と環境保全対策」「技術問題の国際的調整」などが話し合われ たほか、石狩支庁管内恵庭(えにわ)市の福屋脩三牧場、胆振(いぶり)支庁管内早来 (はやきた)町で折から開催の北海道ホルスタイン共進会等への視察も行われた。 次回は4年後、オリンピックの開催地のオーストラリア、シドニーで開かれる。元のページに戻る