◎地域便り


ムラから町へ広がる国際交流

鳥取県/山崎 和夫
 鳥取県中部、建武の中興の名和長年(なわながとし)ゆかりの船上山(せんじょう
ざん)の裾野に広がる東伯郡赤碕町大父(おおぶ)集落(35戸)。

 ここでは6年前から、主にアメリカのオレゴン州とニューハンプシャー州など
との交流を積極的に図っている。

 現在では交流の輪が大父から町全体へと拡がった。あくまでも民間主導型で町
や県の事業ではない。

 そのきっかけをつくり、架け橋として活躍しているのが、先進酪農経営の道を歩
む山本哲嗣(てつし)さん(49才、乳牛成牛40頭、育成牛13頭)である。

 山本さんは昭和43年、農業青年国際交流のパイオニアとして、3人の日本代表の
1人としてアメリカへ派遣された。

 アメリカ各地でのホームステイを通して貴重な営農技術や地元の人々とのふれ
あいを体験、帰国後は、自身の酪農経営の確立に生かしてきた。

 大父集落が国際交流に取り組むようになったのは、山本さんが平成2年、当時中
一の息子の耕太郎さんを連れて若い頃研修したアメリカを再び訪れ、お世話にな
った人々と旧交を温めたことをきっかけに、日米のムラ同志の交流が話題になっ
たからだ。

 現在、大父集落ではオレゴン州フォートロック村、ハッバード町及びアラスカ州
フォーマー町との交流に取り組んでおり、子供達が書いた絵や作文の交換、ムラの
くらしの紹介等で理解を深めている。

 人の面では青年や留学生の派遣や受入れを行い、個人的な人と人とのつながり
を強めている。山本さんもホームステイを積極的に受け入れ、また、平成5年度の
交換留学生としてお嬢さんを派遣した。もちろん、山本さんの奥さんらも女性同志
の交流をということで現地でのホームステイを経験している。

 今では国際交流は大父から町全体へと拡がり、「赤碕町国際交流協会」が設立さ
れ、農業関係者だけでなく町内の各界各層に交流が広がっている。

 山本さんは現在も協会の中心的メンバー。「農業とか赤碕町とか狭い枠(わく)に
とらわれず、広い視野でグローバルな流れを体験してこそ、新しい町や村の活性化
が可能になるのでは」と語っていた。


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