鹿児島県/中村 研
鹿児島県のJA伊佐(大口市及び伊佐郡菱刈町)では、県内では初めての子牛の集 団育成事業を平成8年7月からスタートさせた。 JA伊佐では、肉用牛飼養農家の高齢化や後継者不足から子牛生産頭数が減少傾 向にあり、これをくい止める手立てが緊急な課題となっている。そこで、高齢者対 策及び比較的規模の大きい農家の一層の規模拡大を促進する対策として、子牛の 集団育成事業が開始された。 生産された子牛は8〜10カ月齢まで農家で育成され、子牛市場に出荷し売却さ れるのが従来の方式であるが、この事業は、農家で3カ月間育成された後JAの子牛 育成施設に管理委託され9カ月齢まで育成された後で、子牛市場に出荷されるシ ステムである。九州では宮崎県のJA綾町ですでに実施されている。委託料は1日1 頭当たり395円(実質農家負担、税込み)で、6カ月委託した場合73,233円となる。 この事業では、委託農家、大口市、菱刈町及びJA伊佐で基金を積立て(農家は1頭 当たり7,500円を負担)、対象子牛の価格安定と育成中に事故が発生した場合の損 失を軽減するための対策も講じられている。伊佐家畜市場における平均子牛価格 (税抜き)が330,000円を下回った場合には、330,000円と肉用子牛生産者補給金制 度の保証基準価格である304,000円との差額の80%に当たる、20,800円が基金から 補てんされる。この施設で廃用及び死亡事故が発生した場合は、事故補償金が支払 われる。例えば、6カ月齢の死亡事故の場合195,000円が補償金として支払われる。 また、この基金から1日1頭当たり50円が委託料の一部として助成されている。 7月以降毎月14頭ずつ受け入れられ、9月までに42頭が管理委託されている。今 年度は72頭の受け入れが計画されており、9年度が144頭、10年度以降は300頭の計 画である。事業開始早々ではあるが、委託された子牛の発育状況は良く、契約農家 からの評判は上々である。これまでの受け入れは、比較的規模の大きい農家からの 委託が多く、労力の軽減と空いた牛舎の活用による繁殖雌牛の増頭が期待される。 11月には6頭の出荷が予定され、販売価格の動向によっては事業拡大にさらに 弾みがつくものと関係者は期待している。 【子牛の集団育成風景】元のページに戻る