◎地域便り


新たな発想で山羊を飼育

群馬県/茂木 浩徳
 山羊は、 戦後の食糧難時代から貴重な栄養供給源として、 多くの一般家庭や農
家等で飼育されていた。 山羊乳は栄養価が高く、 牛乳よりアレルギー症状が少な
いという利点があるが、 最近では豊富な畜産物が安価に手に入るため、 家庭消費
のための飼育はほとんどなくなり、 平成8年2月現在の群馬県内の飼養頭数は60
0頭 (県畜産課調べ) と、 他の家畜と比べて極端に減少している。 

 また、 食肉としての利用は県内では少ないものの、 県東部地区を中心として外
国人就労者に人気がある。 国内では沖縄県の郷土料理として需要があるため、 こ
れらのニーズに目を向けた本県の農家が沖縄向けに山羊の生産に力を入れている。 

 吉井町のIさんは県内外から山羊を買い上げ、 多頭飼育をして安定的な出荷を
目指す一方、 過疎化が進んでいる中山間地域の活性化に一役かっている。 それは
高齢者や以前山羊を飼ったことのある農家に数頭ずつ飼育管理を預託しており、 
生産の喜びを農家はもちろんのこと非農家の方にも味わってもらう手法をとって
いる。 山羊は粗食に耐え手軽に飼えるため、 飼育施設が簡単で済む。 また、 独特
のキャラクターがあるのでミニ動物園ではウサギとともに定番となっている。 預
託された人の話では 「山羊は人に慣れるので、 世話をすればするほどよくなつき、 
山羊から与えられる安らぎはとても大きい」 そうである。 

 今後は、 山羊飼育が耕作放棄地の有効利用や高齢者の生きがい対策等として期
待されている。 それには山羊肉料理の普及や山羊乳を原料としたチーズ・バター
等の特産加工品の研究等が必要であるが、 健康食品ブームの中、 差別化商品とし
て検討の余地があると考えている。 


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