◎地域便り


自動多回給じ機で省力化と夏場の乳質を確保

鹿児島県/吉永 健一郎
 鹿児島県曽そ於お郡輝北町(きほくちょう)で酪農を営む重久(しげひさ)和雄さ
ん (59) は、 個体乳量を向上させるため、 これまで泌乳能力などの高い種雄牛の
活用、 牛群検定成績の活用による選抜とうた、 飼料給与内容の改善などに取り組
んできた。 その結果、 経産牛1頭当たり乳量は9,000キログラムを超える水準に
あり、 県内の酪農家ではトップクラスにある。 

 ただ、 年をとるにつれ重久さんが気がかりなことは、 後継者が未定であり、 ま
た自分の持つ飼養管理技術のノウハウを正確に肩代わりしてくれるような雇用者
を確保できないことである。 そんな思いの中、 省力化技術研修会において自動給
じ機のメリットを知り、 早速、 今年4月に整備した。 導入経費は、 本体価格270
万円、 レール代70万円、 工事費150万円で、 合計490万円であった。 

 この自動給じ機は、 正確な個体別多回給与が可能である。 また、 泌乳期間中の
給与設定の変更操作は簡単で、 乳検終了後すみやかに乳量データのチェックと給
与診断を行い、 必要に応じて設定変更を行っている。 

 設置した自動給じ機の飼料搬送用のタンクは2槽あり、 2種類の飼料を指定設
定できる。 そこで、 1槽を全頭に給与する基礎飼料用とし、 もう1槽を高泌乳牛
だけに給与する専用飼料用としている。 

 1日の給与回数は8回まで設定できる。 現在、 朝5時から3時間おきに6回給
与するようにセットし、 1回目を1日の給与量の17%、 6回目を23%とし、 残り
の2〜5回目は15%に設定されている。 また、 粗飼料給与は朝5時を除き濃厚飼
料の給与前に行っている。 自動給じ機を導入して改善されたことは、 以下の点で
ある。 

(1)年間総労働時間が約700時間短縮され、 1日の飼料給与労働時間 (これまで4
 回給与) が2時間ほど短縮された。 

(2)従来より2回多い6回の正確な個体別多回給与が可能となった。 

(3)例年あった夏場の乳脂肪率の低下が、 今年は一回もなく乳成分が安定してき
 た。 

(4)飼料給与作業からくる肩や腰などの疲労感が少なくなった。 

 現在、 県内では重久さんを含め3戸の酪農家でこの自動給じ機が利用されてお
り、 「検定成績の入力により自動的に給与量が計算され、 給与量を微調整する機
能が備われば更に利用者が増えるのでは」 と、 重久さんは更なる省力化を期待し
ている。

【省力化と乳質アップを実現した重久和雄さん】

【自動多回給じ機による給与風景】


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