★ 農林水産省から


台湾における口蹄疫の発生と我が国の対応について

農林水産省 畜産局 衛生課

● はじめに

 海外悪性伝染病の一つである口蹄疫は、 死亡率は低いが伝播力が極めて強く一 旦流行すると急速に広範囲にまん延し、 畜産業に壊滅的、 甚大な被害を及ぼすこ とから、 国際的に最もおそれられ重視されている家畜伝染病です。  先般の台湾での口蹄疫発生の報告は、 近年の国際物流の活発化により、 口蹄疫 が侵入する危険性が高まっていることをあらためて家畜衛生関係者に認識させ、 これまで以上の警戒が必要であることを感じさせたものであります。  以下に、 台湾における本病の発生状況と我が国の防疫対策等について記載しま す。

● 口蹄疫とは

(1) 症状  口蹄疫は、 牛、 豚、 めん羊等偶蹄類の動物に発生する急性で伝染性の極めて強 いウイルス性伝染病で、 牛では、 発症すると、 突然の発熱、 元気消失に陥ると同 時に多量の流涎がみられ、 口、 蹄、 乳頭等に水疱を形成し、 食欲不振、 跛行を呈 します。 豚でもほぼ同様の症状を示しますが、 牛に比べると蹄部の病変が強く、 蹄が剥離し離脱する例も認められ、 年齢が若いほどウイルス血症が激しく、 水疱 病変が発現する前に死亡することもあります。 (2) 発生状況  我が国での発生は、 1908年以降見られていません。  海外では、 北米、 オセアニア、 ヨーロッパの一部等の国々が清浄国とされてい ますが、 東南アジア、 アフリカ、 南米等では依然として継続的に発生が確認され ています。 (参考1) (3) その他  口蹄疫は、 一般に人へ感染しないとされており、 仮に口蹄疫に汚染した豚肉を 食べても、 人体に影響はないとされています。

● 台湾での発生状況と講じられた措置

 3月20日、 台湾家畜衛生当局から3月19日に台湾北西部の2県3農場で口蹄疫 の発生を確認した旨の通報がありました。  その後、 口蹄疫の発生は、 継続・拡大し、 わずか4日後の3月23日には、 台湾 西部地域全域に拡大しています。  4月15日現在の発生状況は、 12県5市の3,611農場、 569,702頭となっています。 (参考2)  台湾では、 発生を確認した3月19日から豚肉製品等の輸出を禁止したほか、 国 内防疫措置として、 (1)発生農場における家畜の移動の禁止、 (2)と畜場でのと体 検査の強化、 (3)患畜及び疑以患畜の焼却・埋却措置、 (4)ワクチンの緊急輸入に よるワクチン接種、 (5)発生農場の家畜の全頭殺処分 (3月22日以降) 等のまん 延防止を講じているところです。  なお、 侵入経路等については、 東南アジア汚染国から帰国した旅行者による媒 介又は中国からの感染子豚又は汚染した内臓の不法持込みによると考えられてい ます。

● 我が国が講じた措置

 我が国は、 台湾からの通報を受け直ちに、 台湾からの豚肉等の輸入を禁止し、 我が国への口蹄疫侵入防止のための措置を講じたところであります。  また、 (1)既輸入品の自主回収、 加熱処理の指導、 (2)生産者等関係者の台湾、 特に畜産農家への視察等の自粛指導、 (3)家畜保健衛生所による農家等への立入 検査等による巡回指導、 残飯処理指導の強化、 (4)パンフレット等による普及啓 蒙、 (5)口蹄疫防疫連絡会議を開催し口蹄疫に関する監視体制を強化するととも に、 (6)台湾産イネワラ、 乾草の輸入自粛と検査、 消毒の実施等を行うほか、 (7) 豚肉等の不法持込み、 不法入国者等の監視体制の強化を関係省庁へ協力要請する 等により、 本病の侵入防止措置に徹底を期しているところです。 (参考3)

● 今後、 留意すべき事項

 台湾は、 地理的にも人的物的交流においても日本と緊密な関係にありますが、 口蹄疫の侵入についてだけは、 今後も我が国への厳重な警戒が必要な状況となっ ております。  このような中で、 水際防疫に万全を図ることはもちろんですが、 今後、 次の事 項に留意し、 監視体制を強化することが必要と考えております。 (1) 家畜の集団発熱、 食欲不振、 元気消失、 水疱の形成等の口蹄疫の症状を見   逃さないよう、 家畜の状態をよく観察すること。 (2) 口蹄疫を疑う症状を見つけたら、 すぐ、 家畜保健衛生所か役場あるいはか   かりつけの獣医師へ連絡すること。 (3) 農場、畜舎の出入りのときの車、長靴、 作業服などの消毒を十分に行うこと。 (4) 残飯を飼料にする場合は、 十分に加熱すること。 (5) 台湾産の稲わら、 乾草などの使用は避けること。 (6) 畜産関係者は、 台湾への農場視察旅行などを避けること。 (問い合わせ先) 畜産局衛生課 03−3502−8111 (内線4614)
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