◎調査・報告


−平成8年度畜産物需要開発研究から− 外食産業における子牛肉利用に関する研究 (概要)

(財) 外食産業総合調査研究センター 代表研究者 岩 渕 道 生 小 田 勝 己




● 調査目的

 これまで、 その実態が把握されてこなかった子牛肉の国内需要動向を外食産業
に焦点を当てながら把握し、 併せて国内子牛肉生産に必要な条件を整理すること
を目的とする。 



● 調査方法

 酪農団体、 輸入業者、 流通業者、 国内生産者及び外食企業の18件のヒアリング
を行い、 さらに、 ホテル、 西洋料理店等を対象にアンケート調査 ( 1,500サンプ
ル) を実施し、 延べ回収数213サンプル(14.2%) のうち有効回答181サンプル(12.
1%) の分析を行った。 



● 国内への子牛肉供給状況

 平成7年現在、 国内に供給されている子牛肉は2,749トンと推計され、このうち
82.6%が海外からの輸入と見込まれる。 

 アメリカ、 カナダ、 オランダから輸入される子牛肉は、 専用の脱脂粉乳を主成
分とする代用乳により生後4〜7カ月飼育 (ミルクフェッド) された 「ホワイト
ヴィール」 が主体であり、 輸入量は、 アメリカ (200トン/年)、 カナダ (30トン
/年)、 オランダ (110トン/年) の計340トン、 ニュージーランドからは、生後2
〜4週程度の 「ヌレ子」 が1,032トン/年、 オーストラリアからは、生後7カ月間
放牧飼養された 「グラスフェッド」 が900トン/年輸入されている。 (数値は、 い
ずれも推計値) 

 一方、 国内で生産される子牛肉は、 供給量の17.4%を占めるに過ぎず、 そのう
ちの13.1%が、 乳雄の 「肥育子牛」 と呼ばれるもので、 その他は、 乳雄肥育素牛
の事故・淘汰牛として供給されるのが3.2%、 残りの1.1%が和牛等の事故・淘汰
牛と推計される。 

表1 推計国内仕向け量(平成7年)

 資料:農林水産省「食肉流通統計」及びヒアリング結果から推計
 注1:国内子牛生産量は、部分肉ベース
 注2:輸入子牛供給量には、骨付き肉、骨、筋等が含まれる。



● 外食産業における子牛肉利用実態と国産子牛肉の評価

 国内に供給される子牛肉は、 家庭用のテーブルミートとして利用されることは
ほとんどなく、 大部分はフランス料理やイタリア料理用の食材として利用されて
いる。 
(1) 子牛メニューの提供状況 (表2) 

 アンケート調査に回答したレストランの81.8%が、 「常に」 あるいは 「時々」、 
3〜5種類の子牛肉メニューを提供している。 

 その場合のメニュー単価はランチで2,283円、 ディナーで3,684円である。 

表2 業種別提供時間帯別にみた子牛メニューの販売単価


(2) 子牛肉の仕入量と仕入価格

 子牛肉の仕入量は、 月平均で117.7kgと少なく、 このうちの27.4%が正肉(骨付
き肉を含む。 以下同じ。) となっている。 仕入時の価格は、 正肉で3,305円/kgと
和牛並みとなっている。 

表3 月平均仕入量と構成比(複数回答)

 注:骨・筋類は、フランス料理の味の基礎であるフォン・ド・ボーの仕込み用
   等である。

表4 原産国別・種類別にみた仕入価格


(3) 使用正肉の品質と原産国

 レストラン等で使用される正肉は、 「ミルク・ホワイトヴィール」と呼ばれる品
質のものが55.0%を占めており、 原産国別には 「アメリカ産」 を仕入れていると
ころが57.2%と最も高く、 次いで 「オーストラリア産」 が42.1%、 「国産」 も26.
2%であった。 

表5 業種別にみた子牛正肉の原産国(複数回答)


(4) 利用機会増加の条件

 国産正肉類の利用機会が増加するためには、「仕入価格がもっと低下しないと利
用できない」 との回答比率が50.8%、 次いで 「一定品質の子牛肉が安定的に入手
できる状態にならないと利用できない」 が33.7%、「産地 (生産) 情報がもっと積
極的に提供されれば利用しやすくなる」 が30.4%となっている。 

 次に、 希望仕入価格水準を算出してみると、全体平均で2,444円/kgと現在使用
している正肉の平均仕入価格水準 (3,305円/kg)よりも26%低い水準となってい
る。 さらに、 現在、 国産の子牛正肉を利用しているユーザーだけに限定し、 現在
の仕入価格と希望価格を比較してみると、国産正肉の仕入価格が4,116円/kgと高
く、 この実態が 「仕入価格がもっと安くならないと利用できない」 との意見が多
い背景となっているものと考えられる。 

表6 使用している正肉の原産国別にみた国産子牛肉利用拡大のための条件
  (複数回答)

 注:下段は、ユーザー毎の構成比 



● 国産子牛肉の利用増加の条件

 ヒアリング及びアンケート調査の結果から、 今後、 子牛肉の国内消費が拡大し、 
しかも、 国内生産された子牛肉がその需要と結びついていくための課題を整理し
てみる。 

(1) 子牛肉の一般的な認知にかかわる課題

 かつては、 高級レストランを中心に消費されていた牛肉が、 広く家庭に普及す
る過程で、 レストランが果たした役割は大きかった。 同様に子牛肉のレストラン
利用が広がれば、 家庭での日常的な利用にまで結びついていく可能性がある。 そ
のためには、 大衆的なイタリアンレストラン等での利用が拡大するための条件を
整備できるかどうかが課題となる。 

(2) 需給結合につながる情報伝達にかかわる課題

 子牛肉の公式な流通情報は乏しいことから、 情報提供システムを如何に構築す
るかが、 重要な課題と考えられる。 

(3) 子牛肉の取引をするための規格基準に関する課題

 子牛肉に関する公的機関による品質区分は存在しない。 今後は、 輸入子牛肉と
整合性のある規格基準の作成と実施体制の整備が求められる。 

(4) 国内生産供給体制の整備にかかわる課題

 現在の肉牛生産体系の中で、 子牛肉を低価格で提供するためには、 乳雄肥育素
牛を肥育に仕向けないで供給する方法が現実的と思われる。 

(5) 低級部位需要開発の必要性

 子牛肉は、 低カロリー高タンパクがその商品特性であり、 栄養学的にみても利
用価値が高い。 そこで、 このような食材のニーズが高い家庭用食材宅配サービス
分野や、 病院給食等の分野における商品開発や取引情報の提供等を支援すること
も必要と思われる。 


平成8年度に委託実施した調査研究の報告の概要を編集部でまとめたものである。

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