◎調査・報告


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フランスの養鶏から学ぶこと

  国産鶏普及協議会 会長 後藤 悦男

 

 


はじめに

 国産鶏普及協議会は、(社)日本種鶏孵卵協会と共催し、フランス養鶏視察研
修旅行団を組織し、平成10年9月に、ブルターニュ県の赤ラベル鶏の生産・流通
・消費のシステムと採卵養鶏を中心に視察研修をした。多くの有意義な情報を得
たので報告するとともに、わが国の養鶏において学ぶところがあるので、日本の
重要課題と今後のあり方についての所見を述べておきたい。


フランスと日本の養鶏産業の概要

フランスの養鶏産業

 フランス鶏卵産業の機構を図1に示す。卵用種鶏飼養羽数は70万7,000羽、雌ひ
な生産は年間5,000万羽、成鶏飼養羽数は5,000万羽、卵の生産量は年間145億個、
1人当たり年間卵消費量は250個である。

 フランス食鶏産業の機構を図2に示す。肉用種鶏飼養羽数は880万羽、うち赤ラ
ベル鶏など特殊鶏種が180万羽である。食鶏ひな生産は年間9億8,100万羽、食鶏
生産量が同121万2,000トン、食鶏輸出量が同55万トン、1人当たり年間食鶏消費
量は12.8kgである。
◇図1:フランスの鶏卵産業の機構◇

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◇図2:フランスの食鶏産業の機構◇

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日本の養鶏産業

 日本鶏卵産業の機構を図3に示す。卵用種鶏飼養羽数は 162万羽、雌ひなえ付
け羽数は年間1億羽、成鶏羽数は1億46百万羽、鶏卵生産量は年間252万1,000トン、
1人当たり年間卵消費は 337個である。 

 日本食鶏産業の機構を図4に示す。肉用種鶏飼養羽数は532万羽、食鶏ひなえ付
け羽数は年間6億8百万羽、鶏肉生産量は同118万2,000トン、鶏肉輸入量は同51万
トン、1人当たり年間鶏肉消費量は11.0kgである。
◇図3:日本の鶏卵産業の機構◇

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◇図4:日本の食鶏産業の機構◇

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フランスの養鶏事情

国産鶏と養鶏産業の自主性を守る

 フランスは農業国で、余剰農産物を輸出している。かつて仏米間でチキン戦争
があり、米国ブロイラーの侵入を防ぎ自国の養鶏産業を守るため、卵用鶏と肉用
鶏の育種と飼育を国の方針とし推進した。1976年にステュードラ(STEUDLER・民
間の育種会社)とインラ(INRA・国立農業研究所)を母体にイサ社(ISA)が発
足し、1998年にハバード社と合併してハバード・イサ社となった。また民間育種
場にサッソ社(SASSO)などがある。

 採卵鶏は赤玉鶏で、イサブラウンが90%飼育されている。肉用鶏はイサ社の@
クラシック鶏種、Aミートイールド鶏種、Aセーバー鶏種、C有色・グルメ鶏種
(赤ラベル鶏を含む)等である。国産鶏維持、発展させることによって、養鶏産
業の自主性を守っており、EUをリードしている。


赤ラベル鶏の生産から流通までのシステム

 赤ラベル種鶏は60万羽、赤ラベル鶏は年間1億羽の飼育である。

 一般的に肉用鶏種の出荷は、@一般ブロイラーが42日齢、体重2kg、A赤ラベ
ル鶏が81日齢、体重2kg、A中間特殊鶏が56日齢、体重2kgである。

 赤ラベル鶏生産の規準は、@農場:4鶏舎以上保有してはいけない。鶏舎の床
面積 400m2を超えてはいけない。A鶏舎:床面積1m2当り11羽以内とする。A放
飼場:1羽当り最低2m2とし、上限はない。C鶏種:成長の遅いもの、81日以上飼
育する。D飼料は80%以上が穀物で、動物性飼料、薬(成長促進剤、抗酸化剤な
ど)は使わない。

 赤ラベル制度のシステムを図5に示す。最大の特長は、国、県、生産者、消費
者がバランスよく組織されていることである。クオリティ・フランス(赤ラベル
のコントロール機関)は、赤ラベル鶏肉が規準どおり生産されているかどうかを
チェックする。すなわち、@鶏種、鶏舎、放飼場、飼料など、Aロットごとに管
理ができているか、Aひなえ付けから出荷までの管理、C鶏肉の賞味期限、D鶏
肉がジューシーであるか、皮が堅くないかなど。これらの諸基準に合格したもの
に赤ラベル(LABEL ROUGE)が与えられるのである。クオリティ・フランスは、
赤ラベル鶏肉のチェックの立入検査を次のように行っている。@養鶏場へ年1回、
A孵卵場へ年2回、A飼料工場へ年2回、C処理工場へ2カ月に1回、D肉の品質検
査は1回当たり5検体、E最終製品の検査は1〜4回、F販売店での賞味期限チェッ
クは随時行う。また、赤ラベル鶏肉の冷凍品は認められていない。

 この他に各所で自主検査を行っている。クオリティ・フランスの下部組織に、
各県のクオリティ・(県名)があり、その業務内容はクオリティ・フランスと同
様である。
◇図5:赤ラベル制度のシステム◇

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品質とイメージを大切にする赤ラベル鶏

(1)なぜ赤ラベル鶏が誕生したのか

 赤ラベル制度の原点は、フランス農業の危機への対応であった。危機の第1は、
大量生産、大量流通で農産物価格が低迷し、農家経営が困難となり、国の農業の
将来が危なくなったことである。第2はブロイラー普及で、フランス料理の素材
としてのおいしい鶏肉の在来種が滅亡するという危機である。かくして赤ラベル
制度が、1975年に食鶏、1983年に鶏卵、1988年に豚肉とそれぞれ実施された。

(2)赤ラベル鶏を高値で販売する

 「赤ラベル鶏肉をブロイラー肉の倍以上の価格で販売する」、その価格で買っ
て頂けるよう努力する。それには、@生産から流通までの品質向上、A消費者へ
の商品イメージの向上を図ることが重要である。 

 @の品質向上は、赤ラベル鶏肉の諸規準を満たし、さらに消費者に喜ばれる品
質向上に努めることである。

 Aの商品イメージ向上は、商品価値の消費者へのイメージのアピールが大切で
あり、舌(おいしさ)と目(宣伝広告チラシも含む)で判断されるので、これら
の改善に努めることである。商標は地鶏名を使い、赤ラベルのロゴは品質保証を
示す。キャッチフレーズに「国産鶏」、「健康鶏」、「大自然の中で」、「森林
の中で」、「放飼い」、「無薬飼育」、「愛情で育てた」等を宣伝用チラシに記
してある。また商品ラベルには、鶏種、育成日齢、飼料、飼育養方法などが示さ
れている。赤ラベル鶏がブロイラーとの比較でどのように優れているか、品質と
イメージに区分して各要因の評価を表にした(赤ラベル養鶏生産組合長ルポッテ
ィエ氏による)。

表 赤ラベル鶏の品質とイメージ:ブロイラーとの比較
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原種鶏育成場・種鶏場・育成場

(1)イサ社原種鶏育成場

 ウインドレス平飼い育成舎が6棟あり、1棟8,000羽収容、鶏舎の長さ50m、陽
圧換気システム、人・物の管理の流れは入気側から始まり排気側で終わる。舎内
敷物は麦わら、17週齢まで飼育する。入舎の際、シャワー室で更衣し、防疫衛生
に徹している。

(2)種鶏場

@ペロ孵卵場委託種鶏場

 赤ラベル鶏の種鶏場で、ウインドレス平飼い舎が2棟、1棟に雄780羽、雌8,230
羽を収容、1m2当たり8羽収容。飼料は、1日1羽当たりで雌種鶏用115g、カキガラ
2gを夕方に給与。68週齢までの飼育で、50%産卵が23週齢、産卵ピーク94%、種
卵数193個、受精率92〜93%、孵化率86%であった。防疫衛生が行き届き、毎日
の管理数値が記入されており、夫婦2人で各1棟を管理している。

 委託条件は、孵卵場から種鶏、飼料、ワクチンサービスを受け、土地、鶏舎、
敷物、水、電気代は自己負担である。
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【ペロ孵卵場の委託種鶏場の種鶏舎】
Aエヴァン種鶏場

 赤ラベル種鶏場で、ウインドレス平飼い舎2棟、1棟5,300羽収容。産卵ピークは
92.5%。飼料給与量は産卵ピーク時が1日1羽当たり132g、37週齢が125gであった。
 種卵は卵形・卵殻質とも良く、集卵後に舎内ボックスでフォルマリンガス消毒
をする。
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【赤ラベル鶏種鶏群と頸部裸性雄鳥】
(3)赤ラベル鶏飼育場

@モラン農場

 放飼場つき平飼い舎3棟。1棟 400m2、1m2当たり11羽の収容。6週齢までは舎内
飼育、以降放飼いしている。12週齢(84日齢)の出荷体重は2.1kgである。赤ラベ
ル鶏種は黒色羽鶏(S86N)と赤色羽鶏(I657)。ワクチン接種は初生時にMDと3
週齢にIBD、抗生物質投与は10週齢まで許されるが以降は禁止。舎内入口の戸に
管理用紙が貼ってあり、毎日の死亡、淘汰羽数と残存羽数、飼料給与量、週齢ご
との平均体重、特記事項が記入されていた。夫人が管理責任者である。
hiragai.gif (42863 バイト) 【放飼場つき平飼い鶏舎】
Aブリュゴロ農場

 赤ラベル鶏育成と酪農経営を行っている。夫人が養鶏管理者である。2棟の平
飼い舎あり。頸部裸性の黒色羽鶏(S86N)と赤色羽鶏(I657)を各々4,000羽飼育
する。放飼場に鶏が広がっている姿は、消費者へのイメージが抜群である。鶏は
健康、発育もそろい、おとなしく、つつきの悪癖も見られなかった。
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【赤ラベル鶏の頸部裸性黒色羽鶏群】
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【広い放飼場で健康的に育成される赤ラベル鶏】

赤ラベル鶏肉の食鶏工場

 LDC社のブルターニュ工場を見学した。ここでの週当たりの食鶏処理羽数は 7
15万羽、うち赤ラベル鶏が1万5,000〜2万羽である。安全安心の鶏肉処理のためH
ACCPを実施している。従業員は130 〜140名、勤務時間は6時〜15時、集鳥作業は
夜中の0時〜4時。ブロイラーは集鳥車で、赤ラベル鶏は手で集める。従業員の衣
服交換は午前と午後の2回、処理工程ごとに室内温度調整を実施している。

 と体ラインで処理された赤ラベル鶏には翼帯がついている。体重、体形、皮膚
色、皮膚の状態など良好であった。赤ラベル鶏にはウォーターチラーは使用禁止
である。商品には、パック日付けと賞味期限日(9日間)を表示していた。第2次
加工場では、種鶏雌のむね肉を圧力釜で加熱し、チキンスープ原料を製造してい
た。種鶏雄は内臓抜きし、丸と体でワインづけして料理するとおいしいとの説明
があった。食鶏工場には県の検査員(獣医師)が常駐し、と体と肉質の検査を行
っている。検査料は食鶏会社が処理羽数に応じて支払っている。


採卵養鶏場−赤ラベル卵の生産

(1)コンフィヤンス農場

 コンフィヤンス農場の卵GPセンター、鶏舎、鶏ふんペレット工場を見学した。
コンフィヤンスは信頼の意味で、信頼される卵の生産販売が経営方針である。5
カ所の農場に赤玉鶏イサブラウン10万5,000羽を飼育する。従業員は15名である。

 本場にウインドレス舎2棟あり、ケージは3段と4段、鶏は健康状態良好。18週
齢で収容し、52〜54週間採卵してオールアウト。強制換羽はしない。防疫で最も
重要視しているのがサルモネラ・エンテリティディス(SE)である。

 鶏ふんペレット工場が鶏舎に隣接してあり、1997年に設置(120万フラン、3,0
00万円)し、製品は15kg袋入りで637円で販売する。ブルターニュ県は畜産地帯
で、ふん尿によるリン・窒素過多の公害防止のため大養鶏場では鶏ふんペレット
化が義務付けられている。また飼料に有効菌、フィターゼ、セルラーゼなどを添
加し、ふんのリン、窒素の低減化を進めている。

 卵GPセンターでは、12個、10個、6個入りの美しいデザインのモールドパック
で出荷し、また18個、20個、30個入りトレイに美しい写真のチラシを入れたラッ
プ包装のものもあった。この農場では植物性飼料給与の放飼鶏(1万2,000羽飼育)
の卵をエコロジー卵・バイオファーム卵(ABマーク)とし、また赤ラベル卵の
認可も受けている。
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【ブルターニュ県プレスタンの採卵農場
ウインドレス鶏舎で赤玉鶏を飼育】
(2)赤ラベル卵の生産

 赤ラベル卵の採卵鶏羽数は250万羽で、農場での飼育羽数平均は8,000〜1万羽
である。大びな(18週齢)は800〜900円/羽、飼料は1.15フラン/kg(2万8,000
円/トン)であった。

 赤ラベル鶏に準ずる飼育条件で卵を生産している。動物愛護、福祉についての
消費者の支持もあって、今後も生産、消費量は伸びるという。


ショッピングセンターの鶏卵、鶏肉

 カルフールショッピングセンターでの鶏卵、鶏肉の価格は次のとおりであった
(1フラン=25円)。

(1)鶏卵:@レギュラー卵(パック入り)6個6.50フラン(163円)、12個11.95
フラン(299円)、Aバイオ卵(パック入り)6個11.8フラン(295円)、Aトレイ
売り卵20個17.95フラン(449円)、本日特売20個15.95フラン(399円)、30個17.
8フラン(445円)。産卵日は9月18日、賞味期限日は10月15日の表示があった。
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【ショッピングセンターに並ぶ鶏卵
(6個入りモウルドパック)】
(2)鶏肉(1kg当たり価格):@丸と体ブロイラー(1.642kg)12.9フラン(323
円)、頭・内臓無し赤ラベル鶏A(1.66kg)27.9フラン(698円)、赤ラベル鶏B
(1.216kg)29.4フラン(735円)、ブロイラーむね肉(0.8kg)51.2フラン(1,280
円、もも肉(1.466kg)19フラン(475円)であった。
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【商品に赤ラベルがはられている】

 

日本の養鶏の重要課題と今後のあり方

国産鶏と養鶏産業の自主性を守ろう

 残念ながら国産鶏の普及率は低い。これを高めることによってわが国の養鶏産
業の自主性を守ることができる。それにはフランスの養鶏から学ぶところが大き
い。

 最近の国産卵用鶏の能力は高くなっている。千葉県養鶏試験場の経済検定で、
産卵性、飼料要求率、卵サイズバランスなど、優れた成績を示した。複数の公立
機関でも同様な報告がある。さらに経済能力と斉一性を改良すれば、国産鶏の普
及、増加は確実である。これには農林水産省家畜改良センター岡崎牧場を中心に、
都道府県機関と民間機関の相互協力が重要である。

 国産種鶏による肉用鶏は、日本種鶏孵卵協会の「国産種鶏利用促進事業報告書」
によれば38銘柄が普及している。特に家畜改良センター兵庫牧場の育種系統が多
く利用され、都道府県の在来種(地鶏)の活用も多い。地鶏の特定JAS規格に適
合する銘柄が多くいることから、さらなる改良努力によって普及拡大が可能であ
る。これには家畜改良センター兵庫牧場を中心に国、都道府県、民間の連携を強
化し、努力すれば必ず実現できる。

地鶏肉の特定JASを成功させよう

 農林水産省は、本年6月21日、地鶏の生産方法、地鶏肉の登録格付機関の登録
基準、地鶏肉の生産行程についての検査法など定めた地鶏肉の日本農林規格(特
定JAS)を告示した。完全実施までには時間と努力を要するが、これは将来の日
本養鶏・食鳥産業の振興にとって画期的なことであり、是非とも成功させねばな
らない。それにはフランス赤ラベル鶏の成功から多くを学ぶべきである。

 地鶏肉の生産方法は、@素びなは在来種由来血液が50%以上のもので、出生証
明ができるもの、A80日間以上飼育したもの、A28日齢から平飼いで飼育したも
の、C飼育方法は28日齢以降1m2当たり10羽以下で飼育したものとなっている。
表示は品名、種鶏の組み合わせ、飼育期間、飼育方法、内容量、消費期限又は賞
味期限(品質保持期限)、保存方法、生産業者の氏名又は名称及び住所、加工包
装業者の氏名又は名称及び住所を記す。

 日本食鳥協会は、「平成10年度銘柄鶏肉需要拡大事業」の一環として、地鶏の
特定JAS規格についての調査を行った。特定JAS地鶏の認定を受ける意志が「あ
る」が54件あり、月当たり生産羽数の報告は61万羽であった。この調査結果から、
地鶏の生産羽数は、いまだ少ないが、地鶏肉の生産・処理・流通に、多くの事業
者が参加する意欲があることは誠に喜ばしい。どこまでも消費者に安全・安心で
おいしい地鶏肉を提供することを目的とし、特定JASの諸規準を完全実施して、
正直で正しい商品を生産供給すれば、消費量は確実に伸びる。同時に、日本の食
文化で必須の食材として、地鶏肉の利用度を高める料理法などの開発を行い、こ
れの指導普及を強力に進めることである。フランスのように品質向上とともに消
費者への商品イメージ向上の研究と実践は重要である。特定JAS地鶏の普及拡大
には、産、官、学、消一体の協力が必要で、消費者に満足と信頼を得られるよう、
継続的に努力を重ねれば必ず成功すると確信している。


環境保全型養鶏をめざそう

 養鶏場では、ハエ、悪臭など公害を出さない鶏舎環境が求められ、また地域お
よび地球への環境保全型養鶏が義務付けられるようになってきた。これら課題の
対応についてもフランス養鶏から学ぶことができる。

 農林水産省畜産試験場は、都道府県の養鶏試験場と協同研究し、鶏に酵素フィ
ターゼを給与することで、リンの利用率を高め、有効リンの飼料添加量を減らし、
ふんのリン低減化に成功した。また繊維分解酵素セルラーゼを給与することで、
繊維質が分解消化吸収され、粗蛋白質の吸収率が良くなり、ME(Metabolizable 
Energy:代謝エネルギー)の利用率も改善される。これらから、粗蛋白質、MEの
レベルの低減、ふんの窒素量減少、ふん排泄量の減量が可能となっている。さら
に有効微生物の併用で、鶏の健康、生産性の向上、卵質および肉質の改善、鶏ふ
ん臭の低減や軟便防止の改善がみられるようになった。これらの実施によって環
境保全型養鶏の道が開けてきたが、今後も鶏ふんの栄養分削減と排泄量減量のた
めの研究と技術普及を強力に推進せねばならない。

 わが国では鶏ふんの乾燥、発酵処理を各所で行っているが、ふんペレット化の
普及も良策と考える。これにはフランスでの実践例が参考となる。また鶏ふんの
利用法として、肥料および肥料以外にも活用できる研究開発と技術普及を行うこ
とが大切である。

ごとう えつお

岐阜大学農学部獣医学科卒、米国アイオワ州立大学大学院修士課程卒。農学博士。
(株)後藤孵卵場専務取締役、(株)ゴトウテクニカル代表取締役。
平成9年から国産鶏普及協議会会長を務める

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