沖縄県/泉 強
沖縄県畜産試験場では、平成9年度から農林水産省の指定試験事業を受け、暖 地型牧草の新品種開発を進めている。 暖地型牧草は、亜熱帯性気候のもとで高い生産性を示し、年に6回以上も収穫 が可能である。沖縄県では、高い収量が確保できるこの暖地型牧草を自給飼料と して利用した大家畜生産が行われており、特に、肉用牛の飼養頭数は連続11年増 加し、現在約7万9千頭までになっている。 暖地型牧草のなかでも、着実に栽培面積を伸ばしているギニアグラスについて は、南西諸島向きの永年利用型の品種「ナツユタカ」が九州農業試験場で昭和63 年に育成された。多収で永年利用が可能なことから、農家からの要望が高いが、 採種が困難なことから十分に普及が進んでいない状況にある。 暖地型牧草と呼ばれる熱帯・亜熱帯に適した牧草は、一般に種子が採れにくい ため、新品種が育成されても農家への普及に時間がかかったり、種子価格が高い などの問題があり、種子の十分採れる品種の開発が強く望まれている。 また、これまで利用されてきた牧草の品種は、海外から導入されたものが主体 で、本県に一層適した新品種開発が必要となっている。 そこで牧草の採種性や発芽率、単為生殖性を一貫して評価し選抜する施設の整 備を行った。 3月15日に完成した牧草採種実験室は、鉄筋コンクリート構造、地上1階、延べ 床面積240m2で、種子精選室、種子乾燥室、生殖様式発芽培養試験室、データ解 析室等からなっており、種子精選のための風選機、単為生殖判定のための微分干 渉顕微鏡装置およびドラフト等が設置されている。 当施設で一貫して評価することで、採種性の高い品種を選抜することが可能と なることから、これらの特性を有する新品種の利用により、大家畜経営のさらな る低コスト生産と生産拡大が期待されている。
【完成した牧草採種実験室】 |