◎専門調査レポート


ブロイラー生産の規模拡大と契約生産の変容  −岩手県の調査事例から−

京都産業大学経営学部 教授 駒井 亨

 

 


ブロイラー生産の規模拡大

 ブロイラーの生産者戸数は、昭和45(1970)年の19,672戸から、平成10(1998)
年の3,766戸へ30年足らずの間に5分の1以下に激減した(表1-1,表1-3)。

表1-1 ブロイラー生産者の出荷羽数規模別戸数の推移(全国)
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 資料:農林水産省「畜産統計」、「畜産物流通統計」、
   「食鳥処理場調査結果」、以下表1−4まで同じ

表1-2 ブロイラー生産者の出荷羽数規模別戸数の推移(岩手県)
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表1-3 ブロイラー生産者出荷羽数規模別出荷羽数の推移(全国)
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表1-4 ブロイラー生産者出荷羽数規模別出荷羽数の推移(岩手県)
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 特に年間出荷羽数5万羽未満の生産者戸数の減少が著しく、昭和45年の18,822
戸から平成10年には1,091戸へ17分の1にまで減少した。

 年間出荷羽数5万羽以上10万羽未満の生産者戸数は、昭和50年代には大幅に増
えたが、昭和60年代以降減少を続けている。

 年間出荷羽数10万羽以上30万羽未満の生産者戸数は、年間出荷羽数5万羽以上
10万羽未満の生産者と入れ替わって、昭和60年代以降増加したが、最近では漸減
している。

 年間出荷羽数30万羽以上の大規模生産者は、昭和50年の95戸から平成10年には
330戸に増加し、その年間出荷羽数シェアは全国出荷羽数の約38%にまで拡大し
ている。

 ブロイラーの年間え付け(生産)回数を5回とすると、年間出荷羽数30万羽は、
1回6万羽の生産で、その飼育延床面積は約1,100坪(3,637m2)で、標準的なサイ
ズのブロイラー育成舎5〜6棟を所有することになる。

 このような大規模な生産設備投資は、個人の資金力を超えるから、その大部分
は企業の直営農場であると見られる。

 実際、日本ホワイト・ファーム(日本ハム)、平成ファーム(丸紅)、ジャパ
ンファーム(三菱商事)、十文字チキンカンパニー(産地インテグレーター)、
伊地知種鶏場(産地インテグレーター)、第一ブロイラー(三井物産)など直営
農場方式の大手ブロイラー企業6社の年間ブロイラー出荷羽数を合計しただけで
も、ブロイラーの全国出荷羽数の約30%を占める。

 産地処理場(産地(ローカル)インテグレーター)とさまざまな形で契約生産
を行う独立の個人ブロイラー生産者も、中途半端な規模ではブロイラー生産で生
計を立てられないから、資金力のある者は年間20万羽前後出荷あるいはそれ以上
に生産規模を拡大しようとする。

 国内のブロイラー生産者は、卸売価格でほぼ半値あるいはそれ以下の輸入ブロ
イラー(正肉など)と競争しなければならないから、労働コストの大幅な引き下
げを要求される。

 今日、ブロイラー生産で生計を立てようとすれば、年間20万羽出荷またはそれ
以上の生産規模が必要となる。

 幸い、ブロイラー育成舎の換気、給餌、給水、投薬、温度管理などは、ほとん
ど自動化されているから、熟練した30歳〜50歳代の生産者であれば、夫婦2人だ
けで、15万羽またはそれ以上(年間出荷羽数80万羽以上)のブロイラーの日常管
理さえ可能となっている。


専門作業班による作業分担

 ブロイラーの生産は農場内の全部の育成舎に同時に入すうし、同時期に出荷す
る、いわゆるオールイン・オールアウト方式で行われるのが普通であり、入すう
準備、え付け、特殊な投薬、捕鳥、出荷、鶏ふん搬出、清掃、消毒など多大の労
力を要する作業は、それぞれ短期間(数日間)に集中する。上述のような大規模
生産の場合、これらの作業はとても夫婦2人では遂行できない。

 多くの産地インテグレーターは、自社または下請けの専門作業班を組織して上
記の集中的重労働作業を処理している。したがって、生産者は日常の飼育管理
(主として、温度管理、換気、給餌、給水の監視、異常の発見と対策)のみを担
当する。


岩手県のブロイラー生産

 岩手県のブロイラー生産は、昭和45年には、全国羽数の7%を占めるに過ぎな
かったが、昭和50年代の後半(1980年代)から急拡大し、平成10年には、その年
間ブロイラー出荷羽数は全国出荷羽数の15%を占めるに至っている(表1-4)。

 岩手県のブロイラー生産の特色は、大規模生産者が多いことで、年間出荷羽30
万羽以上の生産者戸数(全国)330戸中、100戸を占めている(表1-2)。

 またブロイラー生産者1戸当たり平均年間出荷羽数も、全国平均の151,800羽に
対して223,100羽と1.5倍の規模に達している。

 今回、調査を実施した、岩手県二戸市の(株)阿部繁孝商店(年間2,160万羽
出荷)と(株)十文字チキンカンパニー(グループ企業で年間3,600万羽出荷)は、
両者を合わせて、岩手県の年間ブロイラー出荷羽数の3分の2を占めるが、前者の
ブロイラー生産者88戸の平均年間出荷羽数は222,700羽、後者は64戸で1戸当たり
平均468,700羽に達している(後述の生産者調査結果参照)。

 岩手県の場合、年間50,000羽未満出荷の小規模生産者は、全国戸数1,091戸のう
ち57戸(5%)を数えるにすぎない。


ブロイラーの契約生産とその変遷

 今日、全世界のブロイラー生産羽数(推定330億羽)のほぼ4分の1近くを占め
るアメリカの巨大なブロイラー産業(アメリカ国内最大の食肉産業)は契約生産
方式(contract farming)とインテグレーション方式(vertical integration)
の成功によって発展し、この方式は今や他の家畜や農作物にも拡大、援用されて
いるが、日本の場合もまた、昭和30年代後半(1960年代)から、さまざまな形の
ブロイラーの契約生産が行われてきた。

 ブロイラーの契約生産は、価格契約と賃料契約に大別される。価格契約は、年
間一定の価格または最低価格保証によってブロイラー(生体)を生産者から買い
取る方式で、この場合その見返りとして生産者はインテグレーターから配合飼料
および初生びなを購入しなければならない。この方式では生産者は価格変動リス
ク(価格低落による損害)は回避できるが、生産上のリスク(疾病、事故などに
よる損害)は負担しなければならない。

 賃料契約は委託契約とも呼ばれ、生産者は生産手段(土地、設備、労力)を提
供して、インテグレーターの持ち込む初生びな、配合飼料でブロイラーを生産し、
出荷時のブロイラーの品質、飼育成績に応じて一定の賃料を受け取る。

 賃料契約の場合、生産者は価格変動リスクも負担しないし、生産上のリスクも
負担しなくて済む。

 賃料(委託生産)契約の場合、生産者の技術水準が安定して高く、生産者とイ
ンテグレーターの間に強固な信頼関係がなければならない。

 しかし、それでもなお、インテグレーターは、価格変動リスクと生産上のリス
ク、つまりオールリスクを負担することになるから、生産者に対する賃料支払金
額が、直営生産における労働コストおよび土地、設備コストを上回る場合は(い
ずれにしてもオールリスク生産を行うことになるのだから)、直営生産に移行す
ることになる。

 日本の場合、ブロイラーの契約生産は当初は価格契約から出発し、現在でもこ
の方式を採るインテグレーターもあるが、大部分は賃料(委託生産)契約方式を
採っている。

 しかし、最近では、ブロイラーの飼育規模の大規模化や鶏舎設備の機械化、自
動化によって、設備投資金額が生産者(個人)の資金調達力をはるかに上回る巨
額に上ることから、ブロイラーの契約生産が大きく変容しつつある。


ブロイラー契約生産の変容

 ブロイラー生産の大規模化と生産設備の近代化に伴う設備投資金額の増大が、
ブロイラーの契約生産をどのように変化させているかの事例を今回調査した岩手
県二戸市の大手産地インテグレーターである(株)阿部繁孝商店と(株)十文字
チキンカンパニーについて探ってみよう。

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(株)阿部繁孝商店の概要
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【契約生産農家の鶏舎の前で
(株)阿部繁孝商店  阿部孝雄
取締役業務部長(写真右)、
筆者(写真左)】
 (株)阿部繁孝商店は、もともと雑穀商であったことから配合飼料の販売に入
り、昭和42年からはブロイラーの生産、処理加工、販売を開始した。現在、五戸、
田子、九戸の3カ所に食鶏処理加工場を操業し、月間180万羽のブロイラー(約3
%は銘柄鶏)を処理加工して、製品(生鮮解体品)のほぼ全量をニチレイ、ノー
サンフーズ等の荷受会社(東京)に出荷している。ブロイラー用初生びなは全量
をふ化業者から、また配合飼料も全量を配合飼料会社から購入して、契約生産者
(115戸)に販売している。

 ブロイラーの生産者からの買取価格(平成10年)は生体1kg当たり160円で、生
産者は、飼料代、ひな代、薬品代、燃料代、捕鳥・出荷費(1羽当たり下請専門
業者(専門作業班)委託費用17円)を差し引いて、1羽(平均生体重2.8kg)当た
り90円の粗利益を得る。ここから敷料代、電気代、鶏ふん処理費、金利、償却、
諸経費を差し引いて、生産者は、出荷されたブロイラー1羽当たり30円〜60円の
所得を得ている。

 配合飼料は、八戸の穀物コンビナートから直送されるので、生産農場までの運
賃は安く(トン当たり1,200円)極めて有利である。

 鶏舎は開放鶏舎で、3.3m2当たり55羽(夏季47羽)を収容し、年間4.8回転する
(空舎期間100日)。

 ブロイラー(生体)の買取価格は毎年4月に生産者と協議の上決定し、一方、
製品の販売については、荷受会社と6カ月ごとに数量契約を行う。製品(生鮮解
体品)の運賃は、東京まで1kg当たり12円である。

 調査時点(11年8月)での、(株)阿部繁孝商店の契約生産者(115戸中ブロイ
ラー生産者回答88戸)の概要は表2のとおりである。

 生産者の年齢は、35〜54歳が中心で、比較的若く、65歳以上は17%である。

 事業開始は1980年代(昭和55年)以降が55%を占めている。

 鶏舎は全部木造で、11〜20年を経過したものが多く、したがって、使用可能で
はあるが、老朽化の進んだ鶏舎が全体の約半数を占めると推定される。

 生産者のブロイラー出荷羽数規模別では10万羽以上30万羽未満が中心となって
いる。

 年間出荷羽数30万羽以上の大規模生産者が23戸あるが、これらはすべて(株)
阿部繁孝商店が建設、所有する鶏舎を利用している生産者である。

表2 (株)阿部繁孝商店の生産者調査結果
1)生産者の年齢
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2)事業開始の年代
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3)鶏舎の構造
 全生産者が「木造」と回答

4)鶏舎の経過年数
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5)ブロイラー年間出荷羽数規模別
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ブロイラー生産の委託契約

 ブロイラー生産者が土地を所有し、生産設備を新、増設する意欲があっても、
前述したように鶏舎の建設費用が余りにも巨額で、生産者自身で調達できない場
合どうするか。

 (株)阿部繁孝商店(年商200億円)では、会社の信用で融資を受けて、希望
する生産者の土地に鶏舎を建設し、この鶏舎での生産を当該生産者に委託してい
る。

 現在建設中の鶏舎は、アメリカから直輸入した鶏舎資材で建設し、1棟200〜25
0坪(間口6.5間(11.8m))で内部設備および基礎工事費を含めて坪(3.3m2)
当たり約12万円の建築費である。契約期間は16年間である。また、土地は生産者
が用意し、建物修繕費、内部設備の維持、更新費用は生産者負担である。

 現在建設中の委託生産者の場合、ブロイラー育成舎11棟を新設するが、自己所
有の生産設備も別の場所に所有していて、子息(2人)と共同して、合計年間100
万羽のブロイラーを生産する。

 (株)阿部繁孝商店では、すでに23カ所(23戸)にこのような鶏舎(1カ所当
たり収容羽数5万〜17万羽)を建設済みであり、今後も毎年10〜11棟ずつ建設し
てゆく方針であるという。

 このような新築鶏舎も、生産者にとって相当な負担となるが、償却済みの自己
所有設備との併用によって、規模拡大のメリットを追求できるという。

 表2の5)に見られるように、(株)阿部繁孝商店の契約生産者の中には、老齢
で老朽化した小規模生産者もかなり含まれており、これら小規模生産者の廃業に
よる出荷羽数の減少分を上記のような新築鶏舎によって、補充することにより、
現在の処理加工羽数を維持したい計画であるという。
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【岩手県二戸市の産地インテグレーター、
(株)阿部繁孝商店は、生産者が所有し、
造した土地に1万羽収容のブロイラー育成
舎11棟を建設し、生産者に委託する。1家
族で1年間にブロイラー約50万羽を生産す
る。鶏舎側面は断熱構造の捲上式カーテ
ン。】

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【(株)阿部繁孝商店の新築鶏舎は、ア
メリカから直輸入した木材および亜鉛鉄
板を用い、数十年間の使用に耐えるとい
う。建築費は内部設備とも坪(3.3m2)
当たり約12万円。】

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【環境問題などから、広い土地の確保が
難しくなっている。山の斜面を切り開き、
段々に鶏舎を建設。】

(株)十文字チキンカンパニーの概要
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【(株)十文字チキンカンパニーの直営農
場で右から、清水隆治生産部生産課統轄課
長、筆者、新屋敷幸一常務取締役】
 (株)十文字チキンカンパニーは創業者である現社長十文字健助氏が昭和35年、
採卵養鶏からスタートし、39年ブロイラーの飼育を開始、41年からブロイラーの
処理加工を開始、また45年から直営の飼育農場を各地に建設してきた。

 現在、種鶏(21農場、34万羽)、ふ卵場(1日129,000羽ふ化)、直営飼育農場
(101農場合計853棟、延べ飼育床面積152,931坪)、処理加工場(二戸、久慈、
県北、県央の4工場で合計月間300万羽処理加工)、鶏ふん肥料工場等を運営し、
関連9社を経営している。(株)十文字チキンカンパニーの年商は約300億円であ
る。
 ブロイラー用初生びなは大部分を自家生産し、飼料は岩手県経済連ほか飼料会
社から購入している(飼料工場は八戸穀物コンビナート)。

 銘柄鶏は、植物性飼料で飼育した「菜彩鶏」を月間約60万羽生産、ほかに赤羽
色ブロイラーを月間約10万羽生産している。

 ブロイラーは、雄、雌別々に飼育し、雄は50日齢、雌は58日齢で出荷している。
平均出荷生体重は2.75kgである。

 ブロイラーの生産農場の分布は、岩手県90%、宮城県6%、青森県4%である
(飼育羽数構成比)。

 ブロイラー育成舎は、平均して年間5.3回転、坪(3.3m2)当たり53羽を収容。
標準的な生産者は1家族(夫婦)で8万羽を年5.3回、合計年間約42万羽を出荷す
る。

 入すう、清掃、捕鳥、出荷等の作業は専門作業班が行うが、その費用は出荷さ
れたブロイラー1羽当たり8〜9円である。

 標準的なブロイラー育成舎は、間口5間(9.1m)、奥行30間(54.6m)の1棟
150坪(495m2)、開放鶏舎で、換気その他の操作は自動化されており、建設コ
ストは坪(3.3m2)当たり10〜11万円である。最も大きな生産団地では、上記サ
イズ17棟を1家族で管理(年間約70万羽を出荷)している。

 (株)十文字チキンカンパニーのブロイラー生産農場(調査対象99戸、うち銘
柄鶏専養35戸を除きブロイラー生産農場64カ所)の現状は表3のとおりである。

 (株)十文字チキンカンパニーのブロイラー生産農場は大部分が直営(土地、
設備とも会社所有)であるが、ブロイラー生産は雇用労働でなく、後述する請負
生産方式を採っている。

 生産者の年齢は、55歳以上が62%と、やや高齢化しているが、その理由は、昭
和54(1979)年以前に創業した生産者が多い(53%)ためと考えられる。しかし、
それだけ熟練生産者が多く、また、それぞれに後継者も育成されているという。

 鶏舎は全部木造で、築後10年以内の新しい鶏舎が30%を占める(農場数構成比)。

 生産農場の規模は年間30万羽以上生産の大規模農場が3分の2以上を占め、その
うち50万羽以上100万羽未満が24戸、100万羽以上が4戸(農場)ある。

 (株)十文字チキンカンパニーの特色は、その生産農場の大部分が大規模であ
ることで、したがって、1農場当たり平均年間出荷羽数は468,700羽にも達してい
る。

表3 (株)十文字チキン・カンパニーの生産者調査結果
1)生産者の年齢
sen-t3-1.gif (2061 バイト)

2)事業開始の年代
sen-t2-2.gif (2494 バイト)

3)鶏舎の構造
 全生産者が「木造」と回答

4)鶏舎の経過年数
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5)ブロイラー年間出荷羽数規模別
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【今では、めずらしくなった2階建て鶏舎。
生産者自身の自己設備。】

ブロイラーの請負生産
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【岩手県二戸市の産地インテグレーター、
(株)十文字チキンカンパニーの直営ブ
ロイラー生産農場(青森県所在)。1棟
150坪(約500m2)のブロイラー育成舎
17棟(各8,000羽収容)を1ブロックとし
て生産者1家族で請負生産管理する(現
場住込)。1ブロックで年間ブロイラー
約70万羽を生産する。】
 (株)十文字チキンカンパニーの志向する平均年間出荷羽数50万羽近い大規模
生産施設は、個人生産者ではとても建設できるものではない。

 この場合、会社は、初生びな、飼料等の生産資材の一切を負担し、またブロイ
ラー育成舎の修繕、更新も会社が負担する。

 生産者は請負生産報酬(労働報酬)として、出荷した生体1kg当たりの基本給
を受け取るほか、能力給(成績による加給)を受け取る。生産者の請負生産報酬
は、通常、能力給が基本給を上回るから、1回8万羽生産、年間5回転、平均出荷
生体重2.75kgで、年間の労働報酬は、1,000万円前後に達する。
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【(株)十文字チキンカンパニーのブロ
イラー育成舎(1棟8,000羽収容)の内部。
外側のラインは自動給餌器、内側のライ
ンは自動給水器、また中央吊り下げはプ
ロパンガス育すう器(給温ブルーダー)。
新築鶏舎は内部設備とも坪当たり約10万
円を要する。】

 

終わりに

 以上に見てきたように、低価格の輸入鶏肉と競争し、しかも生産者にブロイラ
ー生産を継続、継承する意欲を持たせるのに充分な水準の所得を保障するために
は、合理的で、できるだけ大規模な生産設備が必要であるが、このような設備の
建設資金は、生産者個人ではとうてい捻出できないから、産地インテグレーター
の資金力で生産施設を建設することになる。

 従来の生産手段(土地、設備、労働)のすべてを生産者自身が所有する契約生
産方式は、大規模生産に取り組まざるを得ないブロイラー産業の現状では、すで
に限界に達したと言わざるを得ないのではないだろうか。

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