◎地域便り


水害を越えて       

栃木県/杉本 宏之


 平成10年8月末に栃木県北部と福島県南部を襲った集中豪雨による畜産関係の
被害の概要は、この紙面(11年1、3月号)をお借りして既に紹介させていただい
た。今年も九州、中国地方を中心として、台風による大きな被害が発生したとの
知らせを受け、被害を受けた畜産経営者はもちろん、関係者に対してお見舞い申
し上げる。

 さて、本県の畜産関係被害対策については、その後の農林水産省をはじめ、関
係団体のご配慮により、順調に施設の復旧や設備・機械の導入等が進められ、9
月末には一部を除いてはほぼ竣工した。今後、順次家畜の導入がなされ、年内に
は被災前の経営規模に復帰する予定である。再建計画を作成するに当たっては、
償還計画など十分検討した上で投資額を決定はしたが、既存の負債償還に加え新
たに建設した施設、導入機械、家畜等の償還額も相当な金額に上るため、今後は
経営指導に重点を移していく予定である。

 昨年の水害は、県にも大きな教訓を与えた。その水害を契機に地域防災計画に
新たに「風水害等対策編」を加えることで検討を進めている。この中で、特に畜
産関連で新たに記載予定のものは次のとおりである。

1「防疫・保健衛生計画」に「家畜伝染性疾病予防対策」を追加

(内容)畜舎が冠水等した場合の家畜伝染性疾病の予防実施体制と応急対策に関
する事項を新たに追加し、応急対策については、基本的には市町村が実施するこ
ととして明確化した。

(理由)今回の水害では、家畜防疫上必要があるとして、冠水した畜舎の消毒を
県(家畜保健衛生所)が主体となって行ったが、風水害事の家畜防疫対策につい
ては、応急対策上必要がありながらもこれまで地域防災計画に記載されていなか
ったため。

2「廃棄物処理計画」の「死亡獣畜等の処理」に広域的な処理をする場合の取扱
 いを追記

(内容)被災市町村、死亡獣畜等が漂着した市町村を問わず、市町村が獣畜の保
護回収等適切な措置を行うことを明確化するとともに、その措置が複数市町村あ
るいは他県にまたがる場合の県の関与を明確化した。

(理由)従来は、「死亡獣畜等の処理は被災市町村が行う」とされていたが、被
災地外の市町村・県へ漂着した家畜の処理を巡り、その取り扱いが不明確であっ
たため。

 災害に対してどう対応するかは、残念ながら実際に災害が発生しないと分から
ない部分があまりにも多い。参考にしていただければ幸いである。
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【再建されたフリーストール牛舎】

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