★ 農林水産省から


平成11年度下期の食肉の需給・価格の見通し

農林水産大臣官房調査課 杉山 喜実




はじめに

 11年度下期(10月〜3月)の見通しについては、平成11年度農業観測(6月11日
公表)を補完するため、10月7日に畜産物等需給動向検討会を開催し、「牛肉、
豚肉、鶏肉、牛乳・乳製品、鶏卵及び飼料」を10月13日に公表したところであり
ます。今回、これらのうち食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)について、その内容を簡単
にご紹介します。

 なお、本文中の増減・騰落幅については、前年度、前年同期、前年同月に対す
るものであり、下記の用語で記述しています。

[変動の幅を表す用語]
  
 わずか      ±2%台以内
 や や      ±3〜5%台
 かなり      ±6〜15%台
  かなりの程度  ±6〜10%台
  かなり大きく  ±11〜15%台
 大 幅      ±16%以 上


食肉全体の消費動向

 近年の食肉の消費量の動向を1人1年当たり供給純食料でみると、豚肉が11.5kg
でほぼ横ばいとなっており、他の品目は、伸び悩みないし減少傾向となっている
(図1)。

◇図1:食肉の1人1年当たり消費量◇

(消費形態別の動向)

 食肉(牛肉+豚肉+鶏肉)の1人1年当たり消費について、消費形態別(注)に
最近の動向をみると、7年度までは、6割強を占める「加工・外食等消費」の高い
伸びに支えられ、全体の消費量は増加傾向にあったが、8年度、9年度と家計消費、
加工・外食等消費ともに前年度をわずかに下回ったことから、全体の消費量もわ
ずかに減少した(図2)。

◇図2:食肉の1人当たり消費量◇

(注)消費形態の区別は、「家計消費」と「加工・ 外食等消費」とした。「家
計消費」は、生鮮肉(または卵)を購入し家庭で調理して消費する量であり、
「加工・外食等消費」は、ハム・ソーセージ等の加工品、そう菜等の調理食品
(一部調理を要する半調理品を含む。)及び外食等として消費する量である。

 10年度は、家計消費が0.2%減の11.6kgとなり、加工・外食等消費が1.4%増の
19.0kgとなったことから、全体では0.8%増の30.6kgとなった。このうち家計消費
については、消費者の低価格志向、少量・小口買い志向により、食肉の消費支出
を抑制する傾向にあり、年度前半を中心に前年度を下回ったが、年度後半は前年
同月を上回った。一方、加工・外食等消費については、夏場に業務用需要が弱ま
り前年同月を下回る月もみられたものの、調理食品等の需要が堅調であったこと
等から、年度後半は減少率が縮小ないし前年同月を上回った。また、上期・下期
別にみると、上期は、家計消費が1.0%減の5.6kgとなり、加工・外食等消費が1.7
%増の9.7kgとなったことから、全体では0.7%増の15.2kgとなり、下期は、家計
消費が0.5%増の6.0kgとなり、加工・外食等消費が1.2%増の9.4kgとなったことか
ら、全体では0.9%増の15.4kgとなった。

 11年度(4〜8月)は、家計消費が1.4%の増加となり、加工・外食等消費が0.2
%の減少となっていることから、全体では0.4%の増加となっている。このうち、
家計消費については、相対的に価格の高い牛肉の消費支出を抑制し、価格の安い
豚肉や鶏肉の消費支出が増加する傾向にあり、また、食肉全体の購入単価が低下
していること等から安い価格帯の食肉へ需要がシフトしているものとみられる。
一方、加工・外食等消費は、11年度に入り一転して減少しており、食肉全体の加
工品仕向け肉量(4〜7月)が前年同期を1.2%上回っていること等からみて、業
務・外食等向け需要が減退しているとみられる。

(家計消費の動向)

 次に、家計消費における1世帯当たりの「購入数量」と「支出金額」について、
食肉の品目別割合をみると、7年度までは、「購入数量」は、牛肉消費の増加等
により牛肉の割合が上昇し、豚肉、鶏肉の割合が低下する傾向にあり、「支出金
額」は、牛肉の価格低下等により品目別の割合はほぼ一定となってきた(図3)。

◇図3:家計消費における食肉の品目別割合◇

 しかしながら、8年度は、牛肉消費が減退したことから「購入数量」、「支出
金額」ともに牛肉の割合が低下し、豚肉や鶏肉の割合が高まった。9年度は、牛
肉消費の回復から牛肉の割合が高まったが、10年度以降は相対的に価格の安い品
目の割合が高まる傾向にある。

 これらの家計消費の動向について、食肉の平均購入単価でみると、7年度まで
は、円高等を背景とした小売価格の低下や輸入食肉を中心とした特売実施率の上
昇等から前年度を下回ったが、その後、8年度から9年度にかけては前年度を上回
った(図4)。これは、国産食肉への需要の高まりや地鶏等の銘柄志向の高まり
から比較的単価の高い国産品の購入割合が高まったとみられること、7年度後半
から円安傾向に転じたことを背景として小売価格の引下げや特売の実施が抑制さ
れたこと等による。

◇図4:家計消費における食肉の平均購入単価◇

 10年度以降は一転し各品目とも前年度(同期)を下回っている。10年度は、各
品目ともおおむね前年同月を下回り、消費者の低価格志向等により価格の高い食
肉から価格の安い食肉へ需要がシフトしているとみられ、下期については食肉全
体の低下率が最も大きくなった。11年度(4〜8月)は、鶏肉が前年同月を上回る
月もみられる等上昇のきざしもみられたものの、その後は低下しており、他の品
目は、引き続き前年同期を下回っている。

<食肉消費量の見通し>

 最近の食肉の家計消費は、消費者の低価格志向等により相対的に安い価格帯の
食肉へ需要がシフトしているとみられ、食肉の平均購入単価が低下し、購入数量
が増加する傾向にあること等の動向からみて、11年度下期における食肉の家計消
費は、わずかに増加すると見込まれる。一方、加工・外食等消費は、最近の食肉
加工品仕向け量が前年同期を上回っていること等加工品需要は安定しているもの
の、調理食品の需要が鈍化傾向にあること、業務・外食等向けが依然として低迷
していること等からみて、11年度下期の食肉の加工・外食等消費は、わずかに減
少すると見込まれる。

 この結果、11年度下期の全体の食肉の消費量は、わずかに減少すると見込まれ
る。


牛 肉

●消費

 牛肉の1人1年当たり消費量は、狂牛病問題や腸管出血性大腸菌O157による集
団食中毒の影響等により、8年度にはかなりの程度の減少となったが、9年度は、
家計消費、加工・外食等消費ともに増加に転じたことから、全体では3.8%増の
8.0kgとなった(図5)。

◇図5:牛肉の1人当たり消費量◇

 10年度は、家計消費が景気後退感の強まりから3.1%減の3.2kgとなったが、加
工・外食等消費が調理食品等の堅調な需要に支えられ5.2%増の5.0kgとなったこ
とから、全体では1.7%増の8.1kgとなった。このうち、10年度下期についてみる
と、家計消費が3.9%減の1.6kgとなったが、加工・外食等消費が4.6%増の2.4kgと
なったことから、全体では1.0%増の4.0kgとなった。

 11年度(4〜8月)は、家計消費が回復基調にあり1.5%の減少にとどまっている
ものの、比較的高い伸びを示してきた加工・外食等消費が前年同期を下回り2.6%
の減少となっていることことから、全体では2.1%の減少となっている。家計消費
については、牛肉の購入単価が引き続き前年同月を下回っていること、食肉のな
かでは相対的に価格の高い牛肉への消費支出を抑制する傾向にあること等から、
牛肉の支出金額は4.0%の減少となっている。また、加工・外食等消費については、
これまで主要な増加要因であった調理食品等の増加幅が縮小しているとみられる
こと等から、一転して前年同期を下回っている。

 牛肉の家計消費は、購入単価が低下傾向にあるなかで、最近では購入数量の減
少幅が縮小していること等の動向からみて、11年度下期は、ほぼ前年同期並みに
なると見込まれる。一方、加工・外食等消費は、これまで堅調な需要により高い
伸びで支えてきた調理食品等の伸びが鈍化しているとみられること等の最近の動
向からみて、11年度下期は、ほぼ前年同期並みになると見込まれる。

 この結果、11年度下期の全体の牛肉の消費量は、ほぼ前年同期並みになると見
込まれる。


●国内生産

 成牛全体の枝肉生産量は、9年度まで減少傾向にあったが、10年度以降は増加
に転じており、10年度は、上期が0.2%増の25万5,800トンとなり、下期が0.4%増
の27万3,800トンとなったことから、年度全体では0.3%増の52万9,600トンとなっ
た。11年度(4〜8月)は、2.1%の増加となっている(図6)。

◇図6:牛肉の生産量等◇

 肉用種の枝肉生産量は、7年度、8年度と減少したが、9年度は、6年度下期以降
の子牛価格の上昇等によりと畜頭数が増加に転じたことから、2.2%増の25万400
トンとなった。10年度は、上期が0.1%の増加となったものの、下期が0.9%の減
少となったことから、年度全体では0.4%減の24万9,300トンとなった。11年度
(4〜8月)は、前年度下期の減少傾向が継続しており、0.4%の減少となってい
る。

 一方、乳用種の枝肉生産量は、6〜7年度の猛暑の影響により分娩頭数が減少し
たことや増産型の計画生産が設定されたこと等から減少し、9年度は7.8%減の27
万7,800トンとなった。10年度は、と畜頭数は引き続き減少傾向にあり、上期が
1.9%、下期が0.1%減少し、年度全体では1.0%の減少となったものの、1頭当た
り枝肉重量の増加等により、枝肉生産量は、上期が0.3%、下期が1.6%増加し、
年度全体では0.9%増の28万400トンとなった。11年度(4〜8月)は、交雑種生産
の増加等からと畜頭数が2.0%の増加となっていること、1頭当たり枝肉重量も増
加していること等から、枝肉生産量は4.4%の増加となっている。

 11年度下期の成牛と畜頭数は、肉用種が子牛の生産動向(出荷時月齢の約30カ
月前)等からみてわずかに減少すると見込まれ、乳用種が子牛の生産動向(出荷
時月齢の約22か月前)や最近の飼養動向等からみてわずかに増加すると見込まれ
る。この結果、全体の成牛と畜頭数は、ほぼ前年同期並みになると見込まれる。

 また、成牛枝肉生産量は、こうした成牛と畜頭数の動向等からみて、ほぼ前年
同期並みになると見込まれる。


●輸入

 牛肉の輸入量は、8年度はかなりの程度の減少となったが、9年度は、冷蔵品が
5.2%の増加、冷凍品が10.7%の増加となり、全体では7.8%増の65万9,000トンと
なった(図7)。

◇図7:牛肉の輸入量◇

 10年度は、景気後退による家計消費の減退等もあり冷蔵品が2.2%の減少となる
一方、冷凍品は調理食品等の需要が引き続き堅調であること等から9.2%の増加と
なり、全体では3.5%増の68万1,800トンとなった。このうち、10年度下期をみる
と、冷蔵品が3.0%の減少となり、冷凍品が8.1%の増加となったことから、全体
では2.3%増の30万9,600トンとなった。

 11年度(4〜8月)に入り、牛肉の輸入量は一転して減少傾向となっている。家
計消費、加工・外食等消費ともに前年同期を下回っていること等から、全体では
6.0%の減少となっており、冷蔵品が2.1%の増加となっているものの、冷凍品は
12.3%の減少となっている。

 11年度下期の牛肉の輸入量は、消費量がほぼ前年同期並みになると見込まれる
なか、国内生産量がほぼ前年同期並みになると見込まれること等から、ほぼ前年
同期並みになると見込まれる。また、冷蔵品、冷凍品別には、いずれもほぼ前年
同期並みになると見込まれる。


●価格

 最近の枝肉卸売価格(中央市場)を規格別にみると、国産品需要がおおむね堅
調であったこと等から、9年度前半まで去勢和牛、乳用肥育去勢牛ともに上昇傾
向にあったが、9年9月以降、低・中位規格を中心に弱含みで推移している(図8)。

◇図8:牛枝肉の取引規格別の卸売価格(中央市場)◇

 10年度は、家計消費の減退から大衆牛肉の需要が弱まっているとみられ、低・
中位規格を中心に前年度を下回って推移した。去勢和牛は高位規格は前年度並み
となったが、A−3規格が2.4%安、A−2規格が8.7%安となった。一方、乳用肥育
去勢牛は、家計消費の減退に加え、乳用肥育おす牛の枝肉生産量が増加したこと
から、交雑種、乳用種ともに前年度をかなり下回り、交雑種去勢牛ではB−3規格
が8.1%安、B−2規格が13.5%安となり、乳用種去勢牛ではB−3規格が9.9%安、
B−2規格が14.5%安となった。

 11年度(4〜8月)は、家計消費が引き続き前年同期を下回っていること等から、
下落傾向にあり、低・中位規格を中心に前年同期を下回っている。去勢和牛は、
A−5規格がほぼ前年同期並みの0.3%安となっているものの、A−4規格が2.6%安、
A−3規格が5.9%安、A−2規格が10.3%安となっている。乳用肥育去勢牛につい
ても引き続き前年同期をかなり下回っており、交雑種去勢牛ではB−3規格が10.6
%安、B−2が10.3%安となり、乳用種去勢牛ではB−3規格が15.1%安、B−2規格
が8.7%安となっている。

 省令規格の枝肉卸売価格(去勢牛B−3、B−2規格の東京、大阪市場の加重平均)
についてみると、9年度は、年度前半は牛肉需要の回復から前年度を大きく上回
ったが、その後は、ほぼ前年度並みとなり、年度全体では3.8%高の1,194円/kg
となった(図9)。10年度は、家計需要の減退から前年度を下回って推移し、年
度全体では8.7%安の1,090円/kgとなった。このうち、10年度下期については、
10.2%安の1,060円/kgとなった。

◇図9:牛枝肉の卸売価格(省令規格)◇

 11年度(4〜8月)は、牛肉の消費が前年同期を下回っていること、国内生産量
が増加に転じていること等から引き続き前年同期を下回り、9.4%安となってい
る。

 11年度下期の牛枝肉卸売価格(省令規格)は、消費量がほぼ前年同期並みにな
ると見込まれるなか、国内生産量が乳用種を中心に増加すると見込まれること等
から、前年同期をわずかに下回ると見込まれる。


豚 肉

●消費

 近年の豚肉の1人1年当たり消費量は、家計消費、加工・外食等消費ともに年に
よりわずかな増減を繰り返しており、全体としてはほぼ横ばいの11.5kg前後とな
っている(図10)。9年度は、家計消費、加工・外食等消費ともに減少したこと
から、全体では2.6%減の11.3kgとなった。 

◇図10:豚肉の1人当たり消費量◇ 

 10年度は、牛肉の家計消費が弱まるなかで、相対的に価格の安い豚肉の家計消
費は2.9%増の4.9kgとなり、加工・外食等消費は1.6%増の6.7kgとなった。この結
果、全体としては2.1%増の11.6kgとなった。このうち、10年度下期についてみる
と、家計消費が3.0%増の2.5kgとなり、加工・外食等消費が2.4%増の3.4kgとなっ
たことから、全体としては2.7%増の5.9kgとなった。

 11年度(4〜8月)は、家計消費が3.3%の増加となり、加工・外食等消費が2.5
%の増加となっていることから、全体では2.8%の増加となっている。家計消費に
ついては、牛肉の消費支出を抑制するなかで豚肉の支出金額はほぼ前年同期並み
となり、豚肉の購入単価が低下していることから、消費者の低価格志向等により
安い価格帯の豚肉へ需要がシフトしているものとみられる。また、加工・外食等
消費については、加工品需要が安定していること等から、豚肉の加工品仕向け量
(4〜7月)は前年同期を3.4%上回っている。

 豚肉の家計消費は、牛肉の消費支出を抑制するなかで豚肉の支出金額はほぼ前
年同期並みとなっていること、豚肉の購入単価は消費者の低価格志向等により前
年同期を下回っていること等の最近の動向からみて、11年度下期は、わずかに増
加すると見込まれる。一方、加工・外食等消費は、豚肉の加工品仕向け量が前年
同期を上回っており加工品需要が安定していること等からみて、11年度下期は、
前年同期並みないしわずかに増加すると見込まれる。

 この結果、11年度下期の全体の豚肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれ
る。


●国内生産

 肉豚と畜頭数は、畜産環境問題や後継者問題による飼養戸数の減少に伴う子取
り用めす豚頭数の減少等から、2年度以降減少傾向にあったが、9年度は、2.0%
の増加となった(図11)。これは、7年度以降の堅調な卸売価格等を背景に、主
産地において子取り用めす豚頭数の減少率が縮小したことに加え、前年度に集団
発生したPED(豚流行性下痢)が9年はみられなかったこと等による。

◇図11:豚肉生産量と肉豚と畜頭数等◇

 10年度は、主産地において子取り用めす豚頭数の減少に歯止めがかかったこと
を背景に、肉豚と畜頭数はほぼ前年度並みとなり0.1%減の1,709万6,000頭となっ
た。このうち、10年度下期についてみると、0.7%減の886万6,000頭となった。

 11年度(4〜8月)は、子取り用めす豚頭数が前年を上回る地域がみられたもの
の、全国的にはわずかに減少していること、昨夏の猛暑により西日本地域では育
成率が低下しているとみられ、出荷頭数が減少に転じていること等から、肉豚と
畜頭数は0.8%の減少となっている。

 また、豚枝肉生産量は、こうした肉豚と畜頭数の動向をほぼ反映しており、9
年度は2.0%増の128万8,000トンとなり、10年度は、上期が0.6%の増加、下期が
前年同期並みとなったことから、年度全体では0.3%増の129万2,000トンとなった。
11年度(4〜8月)は、0.2%の減少となっている。

 肉豚と畜頭数は、子取り用めす豚の飼養頭数が全国的にはわずかに減少してい
ること等から11年度上期は前年同期をわずかに下回っているものの、東日本や北
日本では今夏の猛暑による出荷遅延等から、今後は出荷頭数の増加要因もあるこ
と等から、11年度下期は、前年同期並みないしわずかに減少すると見込まれる。

 また、豚枝肉生産量は、このような肉豚と畜頭数の動向から、前年同期並みな
いしわずかに減少すると見込まれる。


●輸入

 豚肉の輸入量は、消費量がほぼ一定水準で推移するなかで、国内生産が減少傾
向にあったことから、増加傾向となってきたが、9年度は、口蹄疫の発生に伴う
台湾産豚肉の輸入禁止等から22.0%の減少となった(図12)。

◇図12:豚肉の輸入量◇

 10年度は、需要動向等を反映して5.5%増の54万5,800トンとなった。このうち、
冷蔵品は、家計消費の増加や輸出国側の生産能力の向上から16.1%増の14万9,500
トンとなり、冷凍品は、年度当初の在庫量がやや高い水準にあったため在庫調整
が行われたことから年度上期は前年度を下回ったものの、年度下期は加工・外食
等需要が前年度を上回ったこと等から、年度全体では1.9%増の39万6,200トンと
なった。なお、10年度下期についてみると、冷蔵品が15.6%増の7万3,200トンと
なり、冷凍品が69.6%増の20万3,400トンとなったことから、全体では51.0%増の
27万6,600トンとなった。

 11年度(4〜8月)は、年度当初の在庫量が比較的低水準にあったことから増加
しており、在庫調整が行われ輸入量が比較的少なかった前年同期と比較すると24
.3%の増加となっている。このうち、冷蔵品は、家計消費が前年同期を上回って
いること等から16.0%の増加となっている。冷凍品は、在庫復元に伴い月間平均
4万2千トンの輸入がなされており、月間平均3万3千トンであった前年同期と比較
すると27.5%の増加となっている。

 11年度下期の豚肉の輸入量は、消費量がわずかに増加すると見込まれ、国内生
産量が前年同期並みないしわずかに減少すると見込まれること等からみて、やや
増加すると見込まれる。このうち、冷蔵品は、家計消費の増加により増加傾向が
継続すると見込まれるものの増加幅は縮小するとみられること等から、かなりの
程度の増加にとどまると見込まれ、冷凍品は、安定した加工品需要を反映しわず
かに増加すると見込まれる。


●価格

 豚枝肉卸売価格(省令規格(極上、上規格の東京、大阪市場の加重平均))は、
9年度は、台湾産の輸入禁止に伴う冷蔵品輸入の大幅な減少により夏期に高騰し
たものの、牛肉消費の回復、国内生産量の増加等から、期間全体では0.8%安の
485円/kgとなった(図13)。

◇図13:豚枝肉の卸売価格(省令規格)◇

 10年度は、年度前半まで国内生産量が前年度を上回ったこと、米国産を中心と
した冷蔵品の生産能力の向上もありテーブルミートの供給量が増加したことに加
え、米国やEUにおける生産過剰に伴う原産地価格の低下もあって6.2%安の455円
/kgとなった。このうち、10年度下期についてみると、4.7%安の408円/kgとな
った。

 11年度(4〜8月)は、家計消費は前年同期を上回っているものの、原産地価格
の低下や円高を背景として安価な輸入品が出回っていること等から7月までおお
むね前年同月を下回り、8月は前年同月をかなり大きく上回ったことから、4〜8
月平均では1.0%安にとどまっている。

 11年度下期の豚枝肉卸売価格(省令規格)は、消費量がわずかに増加すると見
込まれ、国内生産量が前年同期並みないしわずかに減少すると見込まれるものの、
冷蔵品の輸入量が増加すると見込まれること等から、ほぼ前年同期並みになると
見込まれる。


鶏 肉

●消費

 鶏肉の1人1年当たり消費量は、食料消費の外部化・サービス化の進展等により
約7割を占める加工・外食等消費が増加傾向にあったことから、全体として増加
傾向となってきた(図14)。しかしながら、最近では、景気の低迷等から家計消
費、加工・外食等消費ともに低迷している。9年度は、家計消費、加工・外食等
消費ともに減少に転じたことから、全体では1.3%減少し11.0kgとなった。

◇図14:鶏肉の1人当たり消費量◇

 10年度は、家計消費が1.5%減の3.5kgとなり、加工・外食等消費が1.2%減の
7.3kgとなったことから、全体では1.3%減の10.9kgとなった。このうち、家計消
費については、消費者の低価格志向、少量・小口買い志向により、年度前半を中
心に購入単価、購入数量とも前年同月を下回ったが、年度後半は、消費支出が前
年同月を上回る月もある等回復のきざしがみられ、減少率の縮小ないし前年同月
を上回って推移した。一方、加工・外食等消費については、年度当初は前年同月
を上回ったが、夏以降業務用を中心に需要が弱まったとみられ、前年同月を下回
った。また、10年度下期についてみると、家計消費が1.0%増の1.9kgとなり、加
工・外食等消費が2.1%減の3.6kgとなったことから、全体では1.0%減の5.5kgとな
った。

 11年度(4〜8月)は、家計消費が1.8%の増加となり、加工・外食等消費が1.2
%の減少となっていることから、全体では0.3%の減少となっている。家計消費
については、消費者の低価格志向が継続するなか、鶏肉の購入単価は前年同期を
下回っているものの、鶏肉の支出金額は前年同月を上回っており、相対的に価格
の高い牛肉への消費支出を抑制するなかで価格の安い鶏肉への支出金額が増加す
る傾向にある。一方、加工・外食等消費については、業務用需要の低迷に加え、
一般外食や宴会等における需要も弱まっているとみられること等から減少幅は拡
大し2.8%の減少となっている。

 鶏肉の家計消費は、低水準の消費から回復し前年同期を上回っていたものの、
最近では再び前年同月を下回る等変動している。11年度下期については、前年同
期が回復傾向にあったこと等からみて、わずかに減少すると見込まれる。一方、
加工・外食等消費は、業務用需要等の減少傾向が継続するとみられること等から、
わずかに減少すると見込まれる。

 この結果、全体の鶏肉の消費量は、わずかに減少すると見込まれる。


●国内生産

 鶏肉の生産量は、飼養規模の拡大を上回るペースで小・中規模飼養者層を中心
として飼養戸数が減少していること等から、63年度以降おおむね前年度を下回っ
ている(図15)。9年度は、年度上期は前年度の堅調な卸売価格を背景に、おお
むね前年同期を上回ったものの、年度下期は夏以降の卸売価格の下落により生産
意欲が減退したとみられ、ひな導入が減少したこと等から前年同期を下回り、年
度全体では0.2%減少し123万4,000トンとなった。

◇図15:鶏肉生産量とブロイラー飼養動向◇

 10年度は、上期が1.5%減の60万1,000トンとなり、下期が2.3%減の60万9,000ト
ンとなったことから、年度全体では1.9%減の121万トンとなった。これは、10年
7月以降の卸売価格が前年度を上回り生産意欲は上昇したとみられるものの、種
鶏の産卵率の低下等を背景としたひな供給の減少等による。

 11年度(4〜8月)は、ひなの供給体制は回復しているとみられるものの、飼養
戸数の減少により飼養羽数が減少したこと、今夏の天候要因により九州地域では
1羽当たり出荷生体重量の増加がみられる一方で、東日本や北日本では猛暑の影
響によるへい死等の熱波被害もあって、減少幅は拡大し3.3%の減少となってい
る。

 また、ブロイラーの飼養羽数を地域別にみると、主要生産地域である東北や九
州では8年以降わずかな範囲で増減していたが、11年は、東北地域を中心に主要
生産県において小・中規模飼養者層の飼養中止や飼養規模の縮小等から大幅な減
少となる等、鶏肉生産の減少要因となっている。

 11年度下期の鶏肉の生産量は、主要生産地域における飼養羽数の減少や需要の
減退等を背景にひな導入が減少傾向にあること等からみて、わずかないしやや減
少すると見込まれる。


●輸入

 鶏肉(調製品を除く。以下同じ。)の輸入量は、中国、ブラジル等から現地の
豊富で低廉な労働力を背景に、安価で実需者のニーズに合った規格の鶏肉が、主
に加工・外食等消費用として増加傾向となってきたが、9年度は前年度を下回っ
た(図16)。これは、円相場が円安傾向で推移するなか、在庫量が高水準であっ
たこと、需要が低迷したこと、国産品の卸売価格が大きく下落したこと等から、
4〜11月は14.4%の減少となったものの、12月以降は、タイバーツ相場の急落の影
響によりタイ産の輸入が増加したこと等から前年同期を上回ったことから、年度
全体では9.7%の減少にとどまり、輸入量は49万7,900トンとなった。

◇図16:鶏肉の輸入量◇

 10年度は、引き続きバーツ安等からタイ産が大幅な増加となったこと、年度上
期は為替相場の動向により減少傾向となっていた主要輸入先国においても、10月
以降は円高傾向となったこと等からおおむね増加に転じており、全体では2.4%
増の50万9,900トンとなった。これを上期・下期別にみると、上期は2.2%減の25
万3,000トンとなり、下期は7.4%増の25万6,900トンとなった。

 11年度(4〜8月)は、需要が低迷しているものの、国内生産が減少傾向にある
こと、円相場が前年同期に比べ円高となっていること等から7.2%の増加となっ
ている。

 鶏肉調製品(焼き鳥、チキンナゲット、唐揚げ等)の輸入量は、調理食品・外
食等向けとして、安価な労働力を背景にタイ、中国等から高い伸びで増加してい
る。9年度は18.4%増加し8万600トン(製品重量ベース。以下同じ。)となり、
10年度は、上期、下期ともに20.6%の増加となり、年度全体の輸入量は9万7,200
トンとなった。11年度(4〜8月)も引き続き増加傾向にあり、23.6%の増加とな
っている。なお、鶏肉全体の輸入量に占める鶏肉調製品の割合は、8年度が9.9%、
9年度が12.6%、10年度が14.5%と上昇し、11年度(4〜8月)も15.8%(前年同期
14.0%)と上昇している。

 これらの結果、調製品を含む鶏肉全体の輸入量は、8年度は5.8%増の62万6,000
トン、9年度は6.8%減の58万3,000トンとなり、10年度は、上期が0.6%増の30万
1,000トンとなり、下期が9.0%増の31万トンとなったことから、年度全体では4.7
%増の61万1,000トンとなった。11年度(4〜8月)は、9.5%の増加となっている。

 11年度下期の鶏肉(調製品を含む。)の輸入量は、消費量がわずかに減少する
と見込まれ、約7割を占める国内生産量がわずかないしやや減少すると見込まれ
ることから、やや増加すると見込まれる。

 なお、主要な輸入先国別にみると、中国産が冷蔵品を中心に増加すると見込ま
れ、ブラジル産が通貨レアルの切り下げ等から増加すると見込まれるものの、タ
イ産、米国産は他国向け輸出の拡大等から減少すると見込まれる。


●価格

 ブロイラーの正肉卸売価格(東京)を部位別にみると、9年度は、牛肉需要の
回復等の影響から国産ブロイラー需要が弱まるなかで、年度前半の在庫量が高水
準であったこと、中国産冷蔵品の輸入が増加したこと等から5月以降下落し、年
度を通じては「もも肉」は8.1%安の566円/kg、「むね肉」は12.9%安の277円/
kgとなった(図17)。

◇図17:ブロイラーの正肉卸売価格(東京)◇

 10年度は、引き続き需要が低迷しているものの、「もも肉」は、国内生産の減
少幅が拡大したこと等から、上期が10.5%高の567円/kg、下期が6.8%高の662円
/kgとなり、年度全体では8.5%高の614円/kgとなった。一方、「むね肉」は引
き続き需要の低迷や輸入品との競合等から低水準で推移し、上期が14.4%安の
254円/kgとなり、下期は5.9%高の272円/kgとなったものの、年度全体では5.0
%安の263円/kgとなった。

 11年度(4〜8月)は、国内生産の減少幅が拡大するなかで、「もも肉」は、
比較的堅調な最近の家計消費の動向を反映して、おおむね前年同月を上回って推
移していることから、前年同期に比べ4.4%高となっているものの、「むね肉」
は、加工・外食等消費が低迷していることに加え輸入品との競合等により、6月
以降は再び前年同月を下回って推移していることから、前年同期に比べ4.3%安
となっている。

 また、「もも肉」と「むね肉」の生産重量の割合は、ほぼ同程度であるとみら
れるものの、「もも肉」と「むね肉」の需要に格差があり、主として加工・業務
等に仕向けられる「むね肉」については、輸入品との競合等から卸売価格は低下
傾向となっていることから、4年度以降価格差は拡大傾向にある。また最近では、
主として家計消費に仕向けられる「もも肉」について、季節的需要を反映し卸売
価格が大きく変動するようになってきたことから、季節的格差が拡大傾向となっ
ている。

 11年度下期のブロイラーの正肉卸売価格は、主として家計消費に仕向けられる
「もも肉」については、家計消費がわずかに減少すると見込まれ、国内生産量が
わずかないしやや減少すると見込まれるなか、安価な輸入品の出回りが見込まれ
ること等にから、わずかないしやや下回ると見込まれる。一方、主として加工・
外食等消費に仕向けられる「むね肉」は、輸入品との競合等から、かなり下回る
と見込まれる。


おわりに

 今回は、「平成11年度下期の畜産物等の需給・価格の見通し」のうち、食肉
(牛肉、豚肉、鶏肉)についてその概要を紹介しましたが、このほか、牛乳・乳
製品、鶏卵、飼料についても公表しており、これらを含めた全文については、月
刊誌「農業観測と情報」10月号((財)農林統計協会発行)の誌上及び農林水産
省ホームページに掲載・公表しているのでご参照いただきたい。

(http://www.kanbou.maff.go.jp/www/chousa/kansoku/kansokuhp.html)

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