神奈川県/川西 隆智
和牛繁殖雌牛共進会が、いまだ残暑厳しい9月3日に神奈川県家畜集合センター で開催された。今年で9回目となるこの共進会は神奈川県肉用牛協会が主催し、 生産者の繁殖技術と改良意欲の向上、生産者と指導者相互の連携強化等を目的と して行われている。 神奈川県では和牛繁殖経営の歴史は浅く、昭和56年度から平成5年度までの13 年間に行われた肉用繁殖牛導入事業により、その生産基盤が築かれた。しかし、 元来が肥育県であり、繁殖基礎牛となる牛もおらず、育種改良技術そのものにも 知識が不足していたことで、繁殖素牛の導入先は17道県に及び、その系統も多種 多様で交配計画策定においても煩雑を極めていた。 昭和63年度に肉用牛協会が設立され、登録業務全般が移譲されたのをきっかけ に、年に1度、生産者が自慢の牛を持ち寄り、お互いの牛を比較し合いながら、 繁殖飼養技術や改良情報等を話し合える機会を作りたいとの担当者の熱意が高ま っていった。そして、平成3年度に第1回共進会が開催された。当時は飼養技術が あまり良くなく、また交配種雄牛の選定も、単に有名牛を交配対象にしている生 産者が多かったため、全体に発育の悪さが目立ち、乳量は少ない繁殖雌牛も多か った。その後この共進会の効果は素晴らしく、回を重ねるごとに発育の良い、資 質にも富んだ牛が目立ち始め、今では先進県にも決して引けを取らない牛も多数 出品されている。 今回の出品牛は、42頭、1〜4部まで月齢に応じて分類され、厳正な審査により、 各部5頭ずつ20頭の入賞牛が選出された。また、各部優秀賞の中から厚木市の久 保田静氏所有の未経産牛が最優秀賞に選ばれ、栄えある神奈川県知事賞を獲得し た。 最後に米倉審査員(全国和牛登録協会総務部長)から全体講評があり「生後18 カ月齢までの育成・交配期では、発育も良好だし、そんなに肥っている牛もいな いので良く管理されていると思うが、これからお産を迎える牛や経産牛には、か なり肥り過ぎも見受けられるので注意してほしい」とのコメントがあった。生産 者も審査員のポイントをとらえた説明に牛に対する暖かな眼差しに、きっと来年 こそはと思ったに違いない。この共進会は、和牛繁殖牛生産現場における技術研 鑽の場として、生産者ばかりでなく、指導機関においても期待されており、今後 とも末永く継続されることを願っている。
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【講評では、肥り過ぎには注意。】 |