◎調査・報告


生鮮食料品の原産地表示及び有機表示に関する意識調査について

農林漁業金融公庫 総務部調査情報課 井上 周一郎


 平成11年7月にJAS法の一部が改正され、食料品の表示制度の充実強化が図ら
れた。

 生鮮食料品については、これまでブロッコリー、たまねぎ等、9品目に限られ
ていた原産地表示が、一般消費者向けのすべての生鮮食料品に義務づけられるこ
とになった。併せて、有機食品についても、検査認証・表示制度が創設され、農
林水産大臣の登録を受けた認定機関が検査・認証したものに限り「有機」と表示
できることになった。

 そこで、このたび農林漁業金融公庫では、これら生鮮食料品の原産地表示や有
機表示に関する消費者の考え方等を把握するため、「生鮮食料品の原産地表示及
び有機表示に関する意識調査」を実施した。以下はその概要である。


調査の概要

1 調査時期:平成11年11月

2 調査地域:沖縄県を除く都道府県庁所在地(東京都は23区)

3 調査対象者:上記地域内2,300世帯

4 調査対象者の抽出方法:

 各都道府県の世帯数(平成7年度国勢調査における一般世帯数)の割合に応じ、
1都道府県当たりの調査対象者数を決め、都道府県庁所在地の電話帳から等間隔抽出

5 調査方法:調査票の配布、回収とも郵送

6 回答者数:600名(詳細は表1)

表1 回答者の内訳
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 注:20・30代のうち20代は14人(男10、女4)


調査結果の概要

1 原産地表示について

(1)原産地に注意をはらっているか

ア 全般的な特徴(図1)

 生鮮食料品を購入する際、原産地に「注意をはらっている」はどの品目でも5
割以上で、なかでも「精米」が76.5%と最も高く、以下、「牛肉」(74.7%)、
「豚肉」(70.0%)、「鶏肉」(67.7%)、「野菜」(64.5%)、「果物」
(60.4%)、「鮮魚」(57.3%)、「卵」(55.7%)の順であった。

◇図1:購入時、原産地に注意をはらっているか◇

イ 畜産物(表2)

 「牛肉」、「卵」は年齢が低いほど、「注意をはらっていない」の割合が高く
なっている。また、20・30代は、「注意をはらっていない」の割合がどの品目で
も他の年代に比べて高いのが特徴である。

表2 購入時、畜産物の原産地に注意をはらっているか(年齢別)
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(2)現在、どこの産地のものを購入しているか

 生鮮食料品を購入する際、原産地に「注意をはらっている」とした回答者に、
現在どこの産地のものを購入しているかを聞いた。

ア 全般的な特徴(図2)

◇図2:現在、どこの産地のものを購入しているか◇

 「精米」では「地場産・自県産を購入」(43.8%)と「有名産地のものを購入」
(41.0%)に分かれ、国産品のなかでもさらに産地にこだわりを持っている人が
多いようである。

 「野菜」、「卵」では「地場産・自県産を購入」(野菜:48.8%、卵:55.3%)
が最も高く、次いで「国産品なら産地にはこだわらない」(野菜:35.4%、卵:
36.8%)となっている。

 「果物」、「牛肉」、「豚肉」、「鶏肉」、「鮮魚」では、「国産品なら産地
にはこだわらない」(果物:45.1%、牛肉:56.9%、豚肉:58.8%、鶏肉:56.8%、
鮮魚:50.2%)が最も高く、国内の産地を意識する人はやや少ないようである。

 なお、「果物」では「有名産地のものを購入」が33.9%とやや高い。

イ 牛肉(図3)

◇図3:現在、どこの産地の「牛肉」を購入しているか◇

 「国産品なら産地にはこだわらない」は年齢が低いほど、「地場産・自県産の
もの」は年齢が高いほどその割合が高く、また、他の品目に比べて「国産品より
輸入品」の割合が高い。

ウ 豚肉(図4)

◇図4:現在、どこの産地の「豚肉」を購入しているか◇

 年齢が低いほど「国産品なら産地にはこだわらない」の割合が高く、また、60
代以上では他の年代に比べて「有名産地のもの」の割合が高い。

エ 鶏肉(図5)

◇図5:現在、どこの産地の「鶏肉」を購入しているか◇

 牛肉と同様に「国産品なら産地にはこだわらない」は年齢が低いほど、「地場
産・自県産のもの」は年齢が高いほどその割合が高い。

オ 卵(図6)

◇図6:現在、どこの産地の「卵」を購入しているか◇

 年齢が高いほど「地場産・自県産のもの」の割合が高い。

(3)今後、どこの産地のものを購入しようと思うか

 改正JAS法に基づき、すべての生鮮食料品に原産地の表示がされた場合、どこ
の産地のものを購入しようと思うかを聞いた。

ア 全体(図7)

◇図7:今後、どこの産地のものを購入しようと思うか(全体)◇

 「輸入品より国産品を購入する」(「国産品でも地場産・自県産を優先」と
「国産品でも有名産地のものを優先」と「国産品ならどこの産地でもよい」の合
計)がどの品目でも8割以上であった。

 「精米」では「国産品でも有名産地のものを優先」(44.0%)が最も高く、
「国産品でも地場産・自県産を優先」(36.0%)が続き、国内の産地にこだわる
人が多いようである。

 「野菜」では「国産品でも地場産・自県産を優先」(42.1%)が最も高く、次
いで「国内産ならどこの産地でもよい」(37.7%)となっている。

 「果物」、「牛肉」、「豚肉」、「鶏肉」、「卵」、「鮮魚」では「国内産な
らどこの産地でもよい」(果物:37.5%、牛肉:45.3%、豚肉:54.0%、鶏肉:
55.6%、卵:47.6%、鮮魚:44.5%)が最も高く、特に豚肉、鶏肉では5割以上に
なっている。なお、「果物」では「国産品でも有名産地のものを優先」が28.2%
とやや高い。

イ 現在、購入時に原産地に注意をはらっている人(表3)

表3 今後、どこの産地のものを購入しようと思うか
  (原産地に注意をはらっている人)
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 「輸入品より国産品を購入する」がどの品目でも9割以上であった。

 現在の購入状況と比べると、「精米」、「牛肉」については、国産品でも「有
名産地のもの」を購入する意向がやや強まるようである。
ウ 現在、購入時に原産地に注意をはらっていない人(表4)

表4 今後、どこの産地のものを購入しようと思うか
  (原産地に注意をはらっていない人)
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 「精米」、「野菜」については、「輸入品より国産品を購入する」が8割以上
であった。

 「牛肉」については、「国産品・輸入品どちらでもよい」が5割に達しており、
国産品にこだわる人が他の品目に比べて少ないようである。

(4)原産地表示以外にさらに表示項目を充実させた方がよいと思うか(図8)

◇図8:原産地表示以外に更に表示項目を充実をさせた方がよいと思うか◇

 今回のJAS法の改正により義務化された品名と原産地名以外に、表示する項目
をさらに充実させた方がよいかとの設問には、「価格がアップしない程度で表示
できるものを表示してもらいたい」がどの品目でも最も高く約6割であった。

 「多少価格がアップしても自分が知りたいことをさらに表示してもらいたい」
という積極的な意見はどの品目も2割に達していないが、品目別に見ると、肉類
が他の品目に比べてやや高くなっている。

(5)表示項目を充実するため価格が高くてもよいと思う割合

 表示する項目について「価格が多少アップしても自分が知りたいことをさらに
表示してもらいたい」とした回答者に、どのくらい価格が高くなってもよいと思
うかと聞いたところ、現状より「1〜5%高まで」がどの品目でも6〜7割で最も高
く、以下、「6〜10%高まで」、「11〜20%高まで」の順であった。

(6)表示してもらいたい項目(表5)
表5 表示してもらいたい項目ベスト5(複数回答:2つまで選択可)
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 注:「価格が多少アップしてもさらに表示」または
   「価格がアップしない程度で表示」と回答した人に質問
 表示項目について「価格が多少アップしても自分が知りたいことをさらに表示
してもらいたい」または「価格がアップしない程度で表示できるものを表示して
もらいたい」とした回答者に、どのような項目を表示してもらいたいか聞いたと
ころ以下のとおりであった。

ア 肉類(牛肉・豚肉・鶏肉)

 「使用した飼料名・肥料名」(牛肉:38.4%、豚肉:38.9%、鶏肉:39.2%)
と「農薬・抗生物質等の使用量・使用回数」(牛肉:37.7%、豚肉:38.2%、鶏
肉:37.7%)に分かれ、安全性に対する関心が高いようである。

 なお、「牛肉」では第5位に「部位」があげられているのが特徴である。

イ 卵

 「消費期限」(37.6%)と「出荷日・収穫日」(36.6%)に分かれ、鮮度に関
する関心が高いようである。

ウ 精米

 「農薬・抗生物質等の使用量・使用回数」(48.2%)が最も高く、以下、「出
荷日・収穫日」(38.5%)、「品種・銘柄」(38.2%)の順であった。

エ 青果物(野菜・果物)

 「農薬・抗生物質等の使用量・使用回数」(野菜:63.0%、果物:60.9%)が
最も高く、以下、「出荷日・収穫日」(野菜:52.3%、果物:46.5%)、「生産
者の住所・氏名」(野菜:17.5%、果物:20.7%)となっている。

 なお、「野菜」では「栽培・生産方法」が第5位に、「果物」では「品種・銘
柄」が第4位に挙げられているのが特徴である。

オ 鮮魚

 「出荷日・収穫日」(40.0%)が最も高く、以下、「消費期限」(30.2%)と
「用途」(29.7%)が続いている。

2 有機表示について

(1)「有機」と表示された農産物の購入状況

 過去1年間に「有機」と表示された農産物(畜産物を除く)を「購入したこと
がある」は79.4%で、「購入したことがない」は20.6%であった。

(2)購入した有機農産物にされていた表示

 購入した有機農産物に、どのような有機表示がされていたのかについては、
「生産者(流通業者、販売業者)の自主的な基準に基づく表示」(29.2%)が最
も高く、以下、「生産者組合、出荷組合等が作成した独自の表示基準に基づく表
示」(25.5%)、「農林水産省が作成した有機農産物に係る表示ガイドラインに
よる表示」(10.8%)、「地方公共団体が作成したローカルな表示基準に基づく
表示」(6.7%)の順であった。

(3)改正JAS法に基づき「有機」と表示された農産物の購入意向(表6)

表6 改正JAS法に基づき「有機」と表示された農産物の購入意向
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 改正JAS法に基づき農林水産大臣の登録を受けた認定機関が検査・認証した
「有機」農産物を購入したいと思うかについては、通常の農産物より「1〜10%
高までなら購入する」(59.0%)が最も高く、以下、「11〜20%高までなら購入
する」(15.1%)、「価格にかかわらず購入したい」(10.3%)の順であった。

 年齢別にみると、年齢が低いほど「11〜20%高までなら購入する」の割合が高
くなっている。

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