◎専門調査レポート


農協によるコントラクター事業の取り組みと課題 北海道・JA鹿追町の事例

北海道大学大学院農学研究科 助教授 志賀 永一




はじめに

 北海道の農業は規模が大きい。これは昭和35年当時の農家戸数が1/3弱に減少
したことが大きい。こうしてヨーロッパ並みと呼ばれるようになった北海道の農
家の規模ではあるが、反面では労働過重に陥っている側面もある。

 一般的に農作業を請け負うなどの支援組織が必要とされる理由として、農家構
成員の高齢化による労働力不足、規模拡大に伴う労働力不足を挙げることができ
る。もっとも労働力不足であれば雇用労働力を調達すれば事足りるのであるが、
被雇用者も高齢化し、不足しているのが農村である。また、農作業は季節性、繁
閑があり、必要なときに必要なだけ調達するということができかねるという農業
の特色も忘れることができない。

 高齢化要因によるコントラクター事業が北海道において必要ないわけではない。
北海道でも水田地帯を中心に高齢化は進展しているし、事例でとりあげる鹿追町
も例外ではない。しかし、こと酪農といった形態を取り上げるならば、高齢農家
は離農・脱農し、現存農家の規模拡大が進んだのであり、支援を必要としている
のは拡大を遂げた専業農家なのである。

 酪農経営は毎日の搾乳作業の必要性が休日の確保を困難にすることから、休日
確保を目的とした(最初は冠婚葬祭の互助を行っていたし、いまでもこうした利
用が多いが)ヘルパー組織が設立された。ところが、酪農経営は休暇だけでなく、
飼料作作業を受託するコントラクター事業までも必要とするに至ったのである。
当初、コントラクター事業の先進地であるイギリスなどの事例が紹介されたとき
には、自給飼料生産費を低減させるといった効果も強調されていたようであるが、
現在ではもっぱら作業代替効果といっても良いのが実状であろう。

 前置きが長くなったが、コントラクター事業をその担い手である組織から見る
と、作業適期の存在が、組織の年間稼働を妨げ、その専門組織の成立は困難であ
り、すでに事業を行う会社などがその事業閑期を利用することによって成立して
いる事例は散見される。しかし、農協が直接事業に取り組んだ事例は極めて少な
い。それは組合員に要求があるといっても、赤字事業をやるわけにはいかないか
らである。そこで、本稿では鹿追町を事例に、なぜ農協がコントラクター事業に
取り組むに至ったのか、その実態はどうなっているのか、利用している農家の評
価も加えて紹介することにしたい。


鹿追町の概要

 鹿追町は北海道十勝平野の北西に位置し、大雪山国立公園に接する自然豊かな
町である。町の面積は398.5平方キロメートル、人口は6,209人である(平成8年)。
15歳以上就業者数3,449人中、農業就業者数が1,228人と2位のサービス業801人を
上回ることに端的に示されるように農業を基幹産業としている(7年)。

 鹿追町農業協同組合(以下、JA鹿追町)資料によれば、農業経営体数は317
(法人13を含む)であり、その経営形態は畑作専業148、酪農専業124、畜産専業
7、畑酪混同・酪畑混同各6、その他混同4、その他22であり、畑作経営と酪農を
中心とする畜産経営が相半ばする状況となっている。しかも、畑作と酪農は地域
的に混在しており、畑作経営と酪農経営の間で一定期間農地を交換する「交換耕
作」の先駆的取り組みを行っている町である。
 交換耕作によって、畑作経営は充分なたい肥の投入がされ、しかも畑作物作付
けが少ない、土壌病害虫の少ない土地を利用でき、酪農経営は牧草とデントコー
ンという飼料作の輪作が容易になるメリットを享受しあうことになる。

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 JA鹿追町の土地利用をみると、経営耕地面積は11,424ヘクタール(公共育成牧
場705ヘクタールを含む)であり、飼料作物は6,028ヘクタール(同前)、畑作物
等が5,396ヘクタールとなっている。飼料作の内訳は牧草4,618ヘクタール、デン
トコーン1,410ヘクタールであり、畑作物等は小麦1,361ヘクタール、豆類693ヘ
クタール、馬鈴しょ1,131ヘクタール、てん菜1,400ヘクタールなどとなっている。
また、乳牛飼養頭数は16,617頭であり、農業粗生産額は131億円強(畜産84.2億円、
農産47.5億円)となっている。以上の数値から単純に平均値を求めれば、1戸当た
り経営耕地は36ヘクタール、乳牛頭数122頭(飼養農家平均)、農業粗生産額
4,100万円という大規模な経営像が浮かび上がる(10年)。


コントラクターの概要と設立の契機

コントラクターの概要

 JA鹿追町が行っているコントラクター事業の概要を、まず受託している作業か
ら見ていこう。受託作業は牧草ならびにデントコーンのサイレージ収穫調製作業、
たい肥散布、たい肥切り返し、たい肥運搬、耕起、整地、牧草施肥(追肥)、デ
ントコーン播種・施肥、石灰散布、鎮圧、牧草播種、心土破砕、液肥散布、除草
剤散布などである。これら受託作業の内容から、JA鹿追町が受託している作業は
酪農経営を主眼にした作業となっているといえる。

 JA鹿追町の直営事業であるため、現在は営農部にコントラ課を新設(平成11年
3月、それ以前までは開発室振興課で担当。以下コントラ課とする。)し、作業
受託事業として行っている。その職員体制は、繁忙期に25名(事務職員を含む)
に上る。ここでいう繁忙期とは、主に1番牧草の収穫期を指している。職員の内
訳は、JA鹿追町職員は9名であり、この他長期のパート職員6名、事務パート職員
2名、繁忙期のパート職員8名となっている。JA鹿追町職員9名中、7名はコントラ
クター事業実施に伴い新たに雇用した職員であり、繁忙期パート職員8名中、2
名はJA鹿追町の協同会社からの臨時調達、さらに2名は傭車(ダンプ付きでの雇
用)形態による調達となっている。
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【井関コントラ課長(右)と筆者】
 このような要員で牧草収穫3,075ヘクタール(1番草1,244ヘクタール、2番草
1,148ヘクタールなど)、デントコーン収穫458ヘクタールを受託している。先に
述べた作付面積から、牧草作業受託率は育成牧場を除く3,913ヘクタールの32%
(1番草)、デントコーンも32%であり、農家の飼料畑の1/3を受託する実績を
上げている(職員数、実績は11年)。


設立の契機

 こうしたJA鹿追町の受託作業はいつから、どのような契機で始まったのであ
ろうか。JA鹿追町でコントラクター事業が始まったのは平成5年4月である。
しかし、事業実施の検討は2年にさかのぼる。JA鹿追町では5年ごとに中期計画
を策定しているが、JA鹿追町では職員自らが計画を策定することが恒例であり、
コントラクター事業は、「第5次農業振興計画」樹立のプロジェクトチームの検
討からスタートした。この検討の過程で問題となったのは、酪農経営の振興方策
である。酪農経営は飼養頭数拡大の方向が目指されたが、当時の実態では経産牛
1頭当たり飼養管理時間は118時間、飼料作物の栽培管理時間が15〜17.5時間、1
戸当たりで7,000時間にも達していた。これでは振興計画で拡大の方向を打ち出
すことはできず、そこで示されたのがコントラクター事業であった。

 振興計画は4年4月のJA鹿追町総会において承認されるが、同年8月に行った地
区別懇談会では「組合員は本当にやるのかと冷ややかに見ている状況だった」と
いう。懇談会後、組合長に「本当にやるのか」という確認の声が寄せられ、よう
やく組合員に認知されることになるのである。このように農協主導、それも酪農
振興の方向を実現するためにコントラクター事業が必要であるというJA鹿追町
職員の意思に支えられて事業は出発した。こうして同年10月に理事会で機械導入
決定、翌5年4月受託作業開始の運びとなる。


コントラクター事業の利用実態と経営収支

利用実態

 コントラクター事業がスタートしたとはいえ、初年目の利用は少なく、機械償
却費を償えない状況であったという。しかし、利用者の増加とともに、国の畜産
再編総合対策事業などの補助事業による機械導入などによって、先に述べたJA
鹿追町管内1/3をカバーする利用状況となるのである。そこで年次別の利用動向
を表1に示した。利用は急速に増大し、平成8年に5,900ヘクタール弱となり、11
年にさらに増加し6,500ヘクタールとなっている。ようやく計画時に目標として
いた6,200ヘクタールを上回ったことになる。

 こうした利用急増の要因を考えてみよう。農家側の要因については後に触れる
が、機械更新や利用組合への出役問題などを契機として利用が進展している。ま
た、JA鹿追町サイドの要因としては、コントラ課職員の技能アップ、平等化の
努力、最後にJA鹿追町の全面的バックアップなどを挙げることができよう。

 コントラ課では作業ごとに、実働時間、点検作業、移動作業、修理整備、打ち
合せ、その他作業、その他に区分して稼動時間を分析している。それによれば、
9年から11年の3カ年に総時間に占める実働時間、点検時間の割合は増加している
が、修理整備やその他作業は減少している。コントラクターの料金体系は面積割
と時間割りを併用し、その比率は50対50となっていることから、実労働時間割合
の向上は低料金化を目指した稼動が行われていることを示していよう。このよう
に効率作業のための職員の技能アップが確認できる。

表1 農作業委託事業の年次稼動実績
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 注:たい肥運搬の平成11年は見込み。

 次に、平等化への取り組みである。農作業を委託する農家にとって気がかりな
点は適期作業が可能か否か、料金体系が明瞭かということであろう。作業順に関
しては、次のような対応が行われている。申込方法は、@年間作業委託申込(1
〜2月)、A秋作業申込(9月)、B随時である。飼料作といえども適期作業は重
要であり、作業時期によって飼料成分に大きな差異が出る。農家が特に重視する
のは牧草の1番草である。1番草の収穫調製作業に関しては、地区代表による「運
営推進委員会」の委員によって地区内の作業順序が決定され、コントラ課担当者
が全体調整を行った上で、この案が全体の会議に諮られ、作業順の決定が行われ
る。これだけであれば当たり前ともいえる対応であるが、コントラ課では担当者
が農家を訪問し作業順の確認とともに、それに対する不満などを聞き、より平等
な対応を図るとともに、牧草の早刈り奨励など、営農指導的対応も行う。こうし
た一見過剰とも思える対応によって、コントラクター作業への信頼を築き上げて
いる。
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【井関課長とコントラ課の皆さん】
 料金体系にも工夫が見られる。面積・時間半々の体系であるが、委託方式に@
全面委託、Aセット委託、B単独委託があり、それぞれの料金が定められている。
@は飼料作の播種、収穫調製、たい肥散布などすべての作業を委託するものであ
り、Aはたとえば牧草収穫セット(1番草+2番草(+3番草)の収穫作業のセッ
ト)のようにメニュー方式で作業受託を行い、Bは前二者に含まれない作業受託
である。この作業セットによる受託方式は作業量を確定させ、刈り取りから運搬
に関わる一連の作業機械を効率的に利用することを可能にし、その効果分だけ低
料金となっている。これが保有機械の稼働率向上につながるとともに、委託先で
ある農家にとっては分かりやすい料金提示を可能にしている。
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【作業委託事業機械】
 このようなコントラ課の対応に加えてJA鹿追町の全面的バックアップが行わ
れている。5年の作業受託開始時は機械償却費を償えないほどの実績であった。
こうしたコントラクター事業の赤字は補助事業による圧縮記帳でも8年までに1
億円ほどに達したという。これをJA鹿追町単独で負担したのであり、組合員も許
容してきた。これらの諸対応は受託面積の拡大につながったが、やはり問題は事
業内容であり、とりわけ収支問題であった。コントラ課は9年からこの検討に入
り、作業受委託事業検討委員会を発足させ、利用者による受託事業の管理、運営
問題を検討するのである。検討の結果、機械の追加導入や料金改定が行われる。
この委員会発足前にも、関係機関による検討委員会がもたれているが、利用農家
による検討委員会は先に述べた作業順序の調整など事業利用の平等化にもつなが
っていく。

 この改定によって9年の1,500万円ほどの事業赤字を260万円ほどに縮減する。
表2に9、10両年の経営収支を示したが、料金値上げによる作業受託収入増によっ
て赤字額が縮減していることが分かる。もっとも10年は赤字額を大きく上回る特
別償却を実施しているため、実際は黒字状況となっている。

表2 コントラクター事業の収支
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 資料:JA鹿追町コントラ課


円滑な運営の背景

 JA鹿追町のコントラクター事業が円滑に運営されている背景として、平等化を
図る入念な日程調整、セットメニュー化による利用の掘り起こし、JA鹿追町の全
面的バックアップなどを指摘できる。この他の要因として、補助事業を利用した
機械の導入、それによる低料金化も挙げることができるが、雇用対策として労務
費の節約という点も見逃すことはできない。表2でも分かるように、労務費は最
大の支出費目であり、平成10年には全費用の1/3を占めている。

 コントラ課の職員は25名で、うち繁忙期パート職員が8名、その内訳はJA鹿追
町の協同会社から2名、傭車雇用2名であると述べた。適期作業を可能にする人員
配置と低料金化はトレードオフの関係にある。そこで、一般的には冬季間の機械
整備を可能にする最低限の正職員を雇用し、繁忙期に臨時雇用を行う対応が取ら
れる。しかし、臨時雇用形態での採用は人材確保が不安定で、しかも職員の技能
アップにつながらないという問題が生ずる。そこで運転のプロを車込みで雇用し、
JA事業であることから協同会社から臨時に人員を回してもらうという手法が考え
られた。これによって臨時形態ではありながらも、安定的な労力と技能の確保が
図られている。


利用酪農家の声

 コントラクター事業を利用している酪農家はどのような契機で利用を始め、ど
のような評価をしているのであろうか。SさんとUさんに話を聞いた。


ゆとりと笑顔のSさん

 Sさんは経産牛118頭、出荷乳量875トン、飼料作43ヘクタールを経営主48歳。
ご自身と妻48歳の2名を基幹労働力に父77歳が補助する形で経営を行っている。
実はSさんは10年前に腕を切断するという事故に見舞われ、この時の大量の輸血
で肝臓疾患の後遺症がある。Sさんの居住する地区では飼料作の共同作業を行う
利用組合が設立されており、事故の当時もこの利用組合が収穫作業を行ってくれ
たおかげで離農せずにすんでいる。持ち前の気丈夫で経営を行っていたSさんで
はあるが、体調がすぐれないこともあって利用組合のメンバーに迷惑をかけると
の気遣いから、コントラクター設立と同時に利用を始めている。

 Sさんのコントラクター利用は牧草、デントコーンともに全面委託方式であり、
Sさんの作業は追肥と除草剤散布である。年間のコントラクター利用料金は500
万円程に達するが、機械更新や修理費、さらに労力面から評価は高いものとなっ
ている。またSさんの場合は、コントラクター利用開始の前年、平成4年の飼養
頭数が経産牛66頭、出荷乳量493トンであったから、コントラクター利用ととも
にJA鹿追町の振興計画で目指された規模拡大を進め、ほぼ倍の規模になった。
こうした拡大にもかかわらず、コントラクター利用の効果としてゆとりができた
ことを挙げている。そばにいた奥さんが「以前は精神的に忙しくカリカリしてい
た」と笑顔で話してくれたが、料金だけでは語れない生活の改善にコントラクタ
ーが機能しているのである。


拡大と低料金利用のUさん

 Uさんは44歳。妻39歳と2人で経産牛86頭、出荷乳量733トンの酪農経営を行っ
ている。飼料作面積は45ヘクタールである。Uさんも飼料作は牧草とデントコー
ンであり、デントコーンは昭和47年から6戸の利用組合で、牧草は平成3年から3
戸の利用組合で収穫調製作業を行っていた。コントラクター利用は5年からで、
その契機は牧草収穫利用組合の機械修理費の増加であった。加えて3戸の利用組
合への経営主の出役は、それぞれの妻をはじめ家族の労働負担を強化しており、
コントラクター事業が開始された5年に利用組合の3戸ともに利用を始めたのであ
る。Uさん、Sさんともに利用組合の出役問題に端を発してコントラクター利用
を開始している。

 Uさんはコントラクター利用を契機に増頭を進めるが、そのための施設整備を
自力で行っている。簡易パーラー、フリーストール形式の牛舎と育成舎などを友
人の協力を得たとはいえ、建設した。これに伴う投資額は業者に依頼した場合の
6割で済み、コントラクター利用の経費を賄ったと評価している。4年には経産牛
57頭、出荷乳量400トンであったから、ここでもJA鹿追町が目標としたコントラ
クター利用による規模拡大が行われている。

 ところでUさんのコントラクター利用は牧草・デントコーンの収穫セット利用
とたい肥の切返し、運搬、散布であるが、圃場が施設地に接したほぼ1団地であ
るため極めて低料金となっている。11年の1番草の平均収穫セット料金は32,820
円/ヘクタールであったが、Uさんは20%ほど低料金で、デントコーンも平均
49,591円/ヘクタールに対して10%強低い料金で済んでいる。コントラクター利
用を契機にした規模拡大、平均以下の低料金利用、さらに牧草、デントコーンと
もに1日で収穫調製が可能で利用組合当時よりもサイレージの品質が向上したこ
とで、コントラクター利用を高く評価している。もちろん、Sさんと同様に作業
に余裕ができ、妻と共に喜んでいるという。

 以上のように、コントラクター利用農家は作業にゆとりができ、コントラクタ
ー利用の効果を高く評価しているとともに、JA鹿追町振興計画で目指された規
模拡大にも取り組んでいる。ここでコントラクター利用による規模拡大の効果を
JA鹿追町の資料で確認しておこう。表3によれば、飼料作のほとんどをコントラ
クター利用している全面委託農家は一般農家よりも規模が大きかったが、コント
ラクター利用以前の4年と現況の11年を比較すると、飼料畑の面積、経産牛当た
り乳量の伸びは変わらないが、頭数、それも経産牛頭数を大きく増加させ、結果
として出荷乳量の増加を図っていることが見て取れる。事例2戸の拡大傾向は、
JA鹿追町全体で確認できることなのである。

表3 コントラクター利用の効果
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 資料:JA鹿追町コントラ課
  注:全面委託は牧草・コーンの収穫調製作業のほとんどを
    委託している農家で、一般はそれ以外で経産牛頭数20
    頭以上の農家。全面委託は30戸、一般は55戸の平均。


コントラクター事業の課題

 JA鹿追町のコントラクター事業は、JA鹿追町の全面的支援のもとに着実な定
着をみせており、利用農家の評価も極めて良好なものとなっている。こうした前
進を可能とさせた要因にJA鹿追町の振興計画があり、酪農経営の将来像を描いた
コントラクター事業の開始があったという点を強調しておきたい。

 このような利用実態からすればコントラクター事業に課題は残されていないよ
うにみえる。しかし、コントラ課によれば現在のJA鹿追町管内1/3の利用は
まだ拡大するとみており、それに伴う機械装備の充実、人員確保という課題はま
だ継続中であるという。このことはコントラクター事業はどのような状況になろ
うとも今後は中止できないという問題とも絡んで、機械更新問題という課題につ
ながってくる。JA鹿追町のコントラクター利用農家は数戸の利用組合から移行
した農家が多い。このため個々の農家は作業機を保有していないのであり、今後
利用増加が見込まれる背景にも、利用組合の機械更新問題があるからである。こ
のため農協事業として、しかも振興計画の一環として行われていることが、たと
え赤字であっても事業の継続を要請するのである。そこで問題となるのがコント
ラクター事業での機械更新問題である。現在の機械、施設の多くは補助事業が活
用され、料金算定も圧縮記帳をもとにしている。これは低料金を可能とするが、
機械更新費用を捻出できないという、これまでの機械共同利用組合に共通した課
題を残したままなのである。この機械、施設更新への助成制度は多くの地域で望
まれており、対策が講じられることを望みたい。その際、農協が事業主体である
ということは有利になると考えられる。

 コントラクター事業は酪農経営のゆとり創造という面で高い評価が見られた。
そこでもう1つの課題である低コスト生産にどのような効果があるのかについて
検討し、その効果を確認することは大きな課題であろう。コントラクター事業利
用により規模の拡大が進行し、事例農家でも農業所得の増加に寄与していた。し
かし、生乳の低コスト生産は酪農全体の課題であり、コスト削減の一部が消費者
に還元できるとすれば、機械更新への助成を求める有効な主張ともなり得るので
ある。事例では圃場の位置や形状などによって農家間の利用料金が異なる可能性
を見た。鹿追町では交換耕作をはじめ、交換分合による地域的・団地的土地利用
が行われている。農業委員会によれば、同一地区でほぼ10年に一度は交換分合事
業が実施されているという。農家ごとに利用料金を検討し、低料金利用を可能と
する圃場の整備や交換分合の検討が課題となろう。

 さらに、農協が行うコントラクター事業であるがゆえに飼料作だけでなく、半
数を占める畑作農家に対するサービスも模索されなくてはならない。この点も課
題であるとコントラ課は考えており、新たな事業創設に期待したい。

 最後に、本調査に際してはJA鹿追町、とりわけ営農部コントラ課 井関一課長
はじめコントラ課の皆さんにお世話になった。また、鹿追町農業委員会、事例と
して紹介させていただいたSさん、Uさんにはご多忙の中大変お世話になった。
記して感謝申し上げたい。

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