福井県/前田 淳一
「これからは、土づくりが大切。良いたい肥を作りたい。」と語るのは、福井 市で酪農を経営している森国善幸さん(49)。現在、乳用牛85頭を飼い、ほかに 飼料作物を7ha栽培している。飼料畑は河川敷を草地として利用し、荒廃を防ぎ 周辺の美化に努めて、低コスト飼料生産を図っている。 森国さんは、6〜7年、民間企業で働いた後、昭和51年、23頭の牛を父親から引 き継いで酪農を始めた。環境に配慮しながら地域に調和した畜産経営を念頭にお いて、平成8年にフリーストール牛舎(放し飼い式牛舎)やミルキングパーラー (搾乳室)等の省力化搾乳施設やたい肥舎を整備した。 福井市は稲作が中心であるが、最近では都市型農業の利点を利用してハウス野 菜の生産も盛んである。そのため「土づくり」が必要不可欠となっている。 森国さんはたい肥を利用した「土づくり」のため、稲作からでる不要なモミガ ラを粉砕し活用している。たい肥舎(スクープ式)で約45日かけてたい肥に仕上 げ、生産したたい肥は、一部袋売りしているが、ほとんどは近隣の野菜農家に販 売し、地域循環型農業を推進している。「良い野菜ができる」と、野菜農家から の信頼度も抜群である。たい肥生産量は年間約700トンである。現在では、年間 を通じて、トマト、ダイコン、イチゴ、ホウレンソウ、コマツナなどの幅広い作 物に利用されている。 また、畜舎周辺に木や花を植えて、畜産のイメージアップを図っている。市が 実施している小学生親子を対象とした「あぜ道テーリング」事業(搾乳や稲刈り を体験し、地元の農業に対して理解を深める)にも協力し、搾乳施設の見学、体 験搾乳や子牛とのふれあいの場を提供している。さらに、県認定指導農業士とし て、農業後継者の指導にも当たっている。 森国さんは、「施設を整備してからは、牛の管理時間は以前の1/3になった。 その分余裕をもって良いたい肥づくりができる。毎日が楽しく充実している。園 芸農家に喜んでもらえるたい肥を作りたい。」と話す。ゆくゆくは、牛を250頭 くらいに増やしたいと意欲を燃やす熱血酪農家である。