◎地域便り


牛の電気牧柵に期待されるもの

島根県/恒松 秀治


 那賀郡弥栄村は島根県内でも肉用牛飼養農家の高齢化が進んでいる地域である。
この弥栄村において平成12年8月8日、弥栄村畜産振興会(会長佐々木和則氏(51
歳))は肉用牛管理の省力化と遊休地の有効利用を図るため、村内の休耕田(30
アール)で電気牧柵を用いた牛の放牧を始めた。

 この電気牧柵は、長さ1メートル程度のプラスチック製の棒にテープ状の電線
を張り、これに乾電池4個からの電気を流すだけの簡単なもの。イノシシよけ電
気柵と同じ仕組みだが、これだけで牛の脱柵は無い。また、極めて軽量のため、
設置も、移動も簡易で、経費は従来の牧柵より安いという利点を持っている。

 休耕田で電気牧柵の効用を納得した同村内の佐々木利枝さん(53歳)は、さっ
そく自宅裏の遊休地を電気牧柵で囲み、牛の運動場に利用した。「線1本で自由
に牛を誘導できるし、脱柵もないのでとても楽です」と話している。

 一方、金城町ではイノシシ被害が年々深刻となっており、11年の被害面積は17
.9ヘクタールとなった。そこで役場ではイノシシ防除対策に電気牧柵を用いた牛
の放牧飼育を活用しようと、原野や遊休地などに隣接した田畑の獣害苦情を畜産
農家に結びつけ、放牧利用させる仕組みを検討中である。

 今、「草刈りの手間がない」、「遊休地が害獣や害虫の住み家となっている」、
「イノシシ被害が年々増大している」等の諸問題を抱えながら有効な手段の見つ
からない地域の現状で中で、どこへでも簡単に移動できる電気牧柵の出現は個人
の生産活動としての肉用牛飼育を、地域全体の農地保全活動として肉用牛飼育に
転換しつつある。

 高齢化や過疎化が進行している中山間地域の農業の再興に向け、電気牧柵を媒
介として、牛の放牧飼育が農地保全の要として認知され、地元農業としっかり繋
がって、なくてはならない存在へと育ってほしいものである。
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【手軽で簡単、電気牧柵】

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【休耕田も遊休地も僕達の草地】

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