愛知県/森下 忠
愛知県半田市は、人口11万人に対し牛の飼養頭数が約1万頭(乳牛、肉牛各 5千頭ずつ)と、人口に対して牛の頭数がかなり多い都市である。そのため、ふ ん尿処理には以前から前向きに取り組んでいる。しかし、どのようにふん尿処理 に取り組んでも、畜舎や処理施設からは必ず臭気が発生しており、この対策が重 要課題となっている。 半田市酪農組合では、以前から組合役員を中心に環境巡回を行い、酪農家がお 互いの状況を確認しあって、環境対策に取り組んでいる。昨年8月からは、臭気 対策として光合成菌の培養を行っている。光合成菌の培養のために、飼料共同配 合所の敷地内にビニールハウスを建て、組織的に培養、供給、利用を行っている。 過去にも各種微生物資材や消臭剤が試されてきたが、ランニングコストがネッ クとなって定着しなかった。光合成菌の培養は比較的容易で、生産コストも安い。 そのため、酪農組合ではこれを培養して、集団で臭気対策に取り組んでいる。 菌の培養は水槽で行い、1週間培養したものを2リットルペットボトルに移し替 え、農家に配布している。酪農家には配合所の飼料とともに配達し、空のペット ボトルを回収してくるシステムとなっている。 組合では、ダンプ車1杯に対してペットボトル1本を投入するよう勧めている。 また、農家によっては10倍程度に希釈後、バーンクリーナー等へ散布している。 光合成菌の生産費は、2リットルに対して百数十円程度で、組合員には1本150円 で供給しており、90頭規模で18,000円/月程度のコストとなっている。 本事業に対しては、半田市もペットボトルの収集等に協力しており、酪農家と 行政が一体となって取り組んでいる。肝心の脱臭効果は、5段階の官能検査で1 ポイント程度の臭気軽減効果が確認されている。今回の取り組みについては、実 際の効果よりも、集団で臭気対策に取り組んでいることが重要である。個々の酪 農家で対応に差を付けず、みんなが一丸となって取り組むことで、半田市の酪農 家から畜産公害を出さない意気込みが感じられる。
【ハウス内での培養】 |
【ペットボトルでの転送】 |