◎地域便り


さとうきびではぐくむ元気な黒毛和牛

企画情報部


 喜界町は奄美大島の東に位置し、鹿児島市から南へ380キロメートルの孤島。
島の中央を東経130度線が貫き、プロペラ双発機に名瀬または鹿児島空港で乗り
継げば、東京から4時間余りでたどり着ける。

 島の周囲はおよそ50キロメートルで、人口は9,200人強。島の産業、すなわち
農業生産の主体を担うのはさとうきびと黒毛和牛の繁殖経営で、それらに小菊類
を中心とする花き栽培が続く。

 最高時には120戸におよんだ黒毛和牛の繁殖農家も現在では70戸に減った。し
かし1戸当たりの飼養規模は増大しており、近隣の沖永良部、与論、徳之島等か
らの参加も得て2カ月ごとに開催されるセリ市には、本土からたくさんの肥育経
営者が買い付けにやってくる。

 島南部荒木地区で黒毛和牛繁殖に携わる相良高利さん(59歳)の経営規模は母
牛29頭に、育成牛が2頭。かつては自宅敷地内で数頭を飼養し、さとうきび栽培
が主体の経営だった。2ヘクタールを作付け、200トンの年間収量を上げるまでの
規模だったが、2年前集落共有地に畜舎を新設し、繁殖経営中心に転じた。

 現在でもさとうきびを出荷しているが、規模は往時の半分程度。それでも止め
ないのは子牛にさとうきびのトップ、葉の部分を食べさせるためでもある。もち
ろん糖分の集中する茎は製糖に回されるが、葉も十分甘く、子牛にとっては何よ
りのごちそうという訳だ。

 通常与える飼料はネピア、トウモロコシ、ソルゴー、アルファルファなど。し
かし年間を通じて温暖な喜界島といえども12〜3月には他の飼料作物が得られず、
さとうきびが牛たちの貴重な栄養補給源になっている。

 相良さんが上場する子牛の月齢は7カ月が平均。島全体でも昔は9カ月だったの
が、現在では8カ月と短くなっている。これは喜界島の子牛がどれも元気で食い
込みが良いということなのだが、その大きな要因の1つがさとうきびの給与にあ
ることは間違いないだろう。

 こうして育てた子牛の評判は上々で、相良さんの場合、毎回のセリ市で「40万
円に数千円届かない」レベルで落札されており、引っぱりだこの人気だ。

 一緒に牛の世話をする妻サエさんが案内してくれたパドックでは、15分ほど前
に生まれたばかりの子牛がもう立とうとしている。めすだったのが少し残念では
あるが、母子ともに元気でほっと一息。

 この母牛に限らず、1年1産を切るペースで順調に出産が続くのは自給飼料、中
でも他に例を見ないさとうきびのお陰というのが相良さん夫妻の信じるところで
ある。
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【黒毛和牛繁殖を営む相良高利、
サエさん夫妻】

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