茨城県/山本 敏弘
前川謹一さんは、茨城県笠間市で県内唯一のジャージー牧場を経営している。 笠間市は、県央地域の西部に位置し、総面積130.87平方キロメートル、人口約 3万人であり、周辺を標高400〜500メートルの小高い丘陵が連なり笠間盆地を形 成している。鎌倉時代から城下町として、また、笠間稲荷神社の門前町として栄 えてきた。東京からは80キロメートルの距離にあり、たくさんの窯元がある笠間 焼の町としても脚光を浴びている。ここを訪れる観光客は年間約300万人にも及 んでいる。 ジャージー牧場はゆるやかな丘の上にあり、近くには芸術の村や笠間日動美術 館、県営笠間芸術の森公園や笠間工芸の丘、陶芸美術館など芸術文化施設が散在 している。 前川さんは、昭和61年まではホルスタイン牛を飼っていたが、「放牧や粗飼料 を主体に牛本来の姿で飼いたい」、「草をふんだんに食べさせ、運動と日光浴に よって健康に管理された牛から搾ったおいしい牛乳を消費者に飲んでもらいたい」 との思いがつのり、これに適した牛として、62年にジャージー牛を導入し、現在 では成牛40頭、育成牛20頭、合計60頭を飼養している。放牧地面積は7ヘクター ル、飼料畑面積は5ヘクタールで放牧は草の芽吹く4月10日頃から始め10月初旬ま で放牧している。1牧区当たりの面積は約60アールとし、12牧区を設けて毎日牧 区を変える輪換放牧を行っている。放牧地は、オーチャードグラス、ペレニアル ライグラス、トールフェスク、バヒアグラス、シロクローバーの混播牧草地であ る。また、飼料畑はライ麦とソルゴーを作付けしている。11月から4月上旬まで は、ライ麦とソルゴーサイレージを主体に飼料を給与している。放牧や粗飼料が 主体であるため、乳量は少ないが、乳質は優れている。搾った牛乳は、スーパー L資金を活用して牧場内に設置したミルクプラントで処理している。生乳中に含 まれる大切な成分や風味が損なわれないように62〜65℃で30分間加熱する低温殺 菌牛乳「かさまのジャージー牛乳」として県内のホテル、レストラン、百貨店、 製菓業者、食品店等で販売し、顧客も定着している。 生産面で力点を置いていることや苦労していることについて聞いたところ「牛 を飼育した上、市乳の製造販売まで行うのは労力的には過酷ではあるが、健康に こだわり究極の牛乳を消費者に提供して会社に貢献することが牛飼い人生のよろ こびでもある」と自信に満ちていた。
【ジャージー牛の放牧】 |
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【低温殺菌牛乳「かさまのジャージー牛乳」】 |