★ 農林水産省から


家畜伝染病予防法の一部を改正する法律等について

生産局畜産部衛生課 安達 巧




背景

 平成12年3月、わが国では92年ぶりに口蹄疫の発生が確認された。本病は、
牛疫、アフリカ豚コレラ等とともに特に重大な影響を及ぼすおそれのある家畜伝
染病であり、現行家畜伝染病予防法(以下、「法」という。)の制定以来、初め
てその発生に伴うまん延防止措置が実施された。今回の発生は、病原体の伝染力
が幸いにして弱いものであったことに加え、関係機関、関係者の迅速かつ適切な
対応によって、小規模な発生のうちに終息をみることができた。しかしながら、
近年、東アジア周辺諸国で口蹄疫が継発している状況を考えれば、今回のまん延
防止措置の実施過程で明らかとなった口蹄疫発生農家における家畜のと殺処分、
通行遮断措置等の改善、発生原因としてその可能性が高いとされた輸入粗飼料に
ついての輸入検査措置の強化や国内防疫措置の強化が急務となった。以上のよう
なことから、国内防疫措置の改善、穀物のわらおよび飼料用の乾草に係る輸入検
疫措置の強化を内容とする家畜伝染病予防法の一部を改正する法律が国会審議を
経て、12年11月22日に公布され12月1日に施行された。同法の改正に伴い改正さ
れた同法施行令(政令)および同法施行規則と併せて紹介する。


概要

国内の防疫体制の整備について

1 検査のための隔離期間延長
 (法第14条第3項関係)

 患畜となるおそれがある家畜(疑似患畜を除く。)については、従来、家畜伝
染病のまん延を防止するため必要があるときは、10日を超えない範囲内において
期間を限り、当該家畜を一定の区域外へ移動させてはならない旨指示できること
とされていた。しかしながら、今般発生した口蹄疫のように臨床症状による診断
が困難で抗体上昇の有無により確認せざるを得ないような事態に対応するため、
指示できる期間の上限が21日まで延長された。

2 通行の制限または遮断について
 (法第15条、政令第2条、施行規則第26条関係)

 家畜伝染病の中でも伝染力が強く、かつ、その被害が甚大な牛疫、牛肺疫、口
蹄疫およびアフリカ豚コレラについては、発生時に都道府県知事または市町村長
は、家畜伝染病のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、48時間を超え
ない範囲内において期間を定め、患畜等の所在の場所と他の場所との通行を遮断
することができることとされていた。 

 しかしながら、近年の畜産の飼養規模の大型化により、病原体の散逸防止のた
めのと殺、焼埋却等の初動防疫の措置だけでも48時間以内に完了させることが困
難な事態が発生する可能性が想定されることから、通行の遮断の期間の上限が72
時間に延長された。

 また、人や車両を介した病原体の拡散を防ぐために行われる通行遮断措置につ
いては、消毒等を条件として通行を可能とする等の遮断に至らない通行制限によ
っても、十分な防疫措置を執ることが可能な場合も想定されることから、通行制
限について法律上明示的に規定されたところである。なお、通行の制限または遮
断を行う際は、その旨および理由に加え、通行の遮断にあってはその期間および
遮断を行う場所を、通行の制限にあってはその期間、制限の内容および制限を行
う場所を掲示しなければならないこととされた。

3 患畜等のと殺および死体の焼埋却の家畜防疫員自らの実施
 (法第16条第3項、第21条第4項関係)

 口蹄疫、牛疫等の悪性伝染病が発生した場合、その感染源を断ち、まん延を防
止するため、法第16条に基づき患畜等のと殺の義務が患畜等の所有者に、また法
第21条の規定に基づき患畜等の死体の焼埋却の義務が死体の所有者に課せられて
いる。

 しかしながら、近年の畜産の飼養規模の大型化等により、大規模なと殺、焼埋
却を家畜の所有者が限られた時間内に適切に実施することが困難となる事態も想
定されることから、家畜所有者の実施を原則としつつも、緊急の必要がある場合
には、法第23条第3項に基づく家畜防疫員による汚染物品の消毒または焼埋却お
よび法第25条第3項に基づく家畜防疫員による施設の消毒と同様に、法第16条第
1項に基づくと殺および第21条第1項に基づく患畜等の死体の焼埋却についても家
畜防疫員がこれを行うことができることとされた。

4 汚染物品が保管された倉庫等の消毒
 (法第26条、第46条、第46条の2、政令第5条関係)

 施設の消毒については、従来は、法第25条において患畜もしくは疑似患畜また
はこれらの死体の所在した畜舎、船車その他これに準ずる施設の所有者に実施の
義務を課していたところであるが、飼料等汚染物品の所在した施設を介した家畜
伝染病のまん延を防止するために、都道府県知事は、必要があるときは、家畜伝
染病の病原体により汚染し、または汚染したおそれがある物品の所在した倉庫、
船舶、車両その他これに準ずる施設の所有者に対して期限を定めて当該施設を消
毒すべき旨を命じることができることとされた。

 また、輸入検疫中に法第26条に基づく措置を講じる必要が生じた場合には、都
道府県知事に代わって動物検疫所長が命令を行い、家畜防疫員に代わって動物検
疫所の家畜防疫官が消毒の指示を行うこととし、当該命令および指示の通知につ
いては、電子情報処理組織を使用して行うことができることとされた。


輸入検疫の強化等について

 わらおよび乾草の指定検疫物等への指定
 (法第37条、施行規則43条、第45条関係) 

 穀物のわら(畳床、麦わら帽子等飼料用以外の用途に供するために加工し、ま
たは調整したものを除く。)および飼料用の乾草(以下「わらおよび乾草」とい
う。)を介して海外からの家畜の監視伝染病のわが国への侵入防止に万全を期す
ため、わらおよび乾草については、新たに指定検疫物または輸入禁止品の対象に
できることとされ、今後は、施行規則第43条の表の地域(口蹄疫等の非清浄地域)
から輸入されるわらおよび乾草については、原則輸入を禁止することとされ、農
林水産大臣が指定する施設において農林水産大臣の定める基準に従って消毒した
ものである旨を記載した輸出国の政府機関または農林水産大臣が指定する者の発
行する証明書を添付してあるものであって、当該地域以外の地域を経由しないで
輸入されるものについては、輸入禁止品から除外し、指定検疫物として、輸出国
政府機関発行の検査証明書の添付の義務、輸入港の制限および輸入検査申請の義
務等が課せられることとなった。なお、施行規則第43条の表の地域以外の地域
(口蹄疫等の清浄地域)から輸入されるわらおよび乾草については動物検疫の対
象から除かれる。

 また、わらおよび乾草の範囲については、以下のとおりとなっており、飼料用
の乾草とは、家畜の飼料用に供することを目的として輸入される乾草(キューブ
状のものを含む。)とし、園芸用等の家畜の飼料用以外の用途に供するものあっ
ても、家畜の飼料用に転用が可能なものは対象となる。

(1)穀物のわら

 稲、麦等のわら(キューブ状のものを含む。)

(2)飼料用の乾草

 飼料用の乾草(アルファルファ、オーツヘイ、バミューダグラス、フェスク類、
スーダングラス、ケイントップ、湖草、羊草等であってキューブ状のものを含む。)
 なお、これら指定検疫物とされたわらおよび乾草が輸入できる港としては、苫
小牧港、八戸港、塩釜港、秋田港、鹿島港、京浜港、新潟港、金沢港、三河港、
名古屋港、舞鶴港、大阪港、神戸港、境港、水島港、徳島小松港、今治港、高知
港、関門港、博多港、伊万里港、熊本港、八代港、細島港、志布志港、那覇港等
の34海港の他、31の空港が指定されている。


おわりに

 今回の家畜伝染病予防法の一部改正により、今回の口蹄疫の発生とこれに伴う
防疫経験を踏まえた国内防疫措置の改善、強化や輸入粗飼料に関連する輸入検疫
措置等の強化が制度面で図られた。今後、国では、口蹄疫等悪性伝染病発生時の
まん延防止措置における関係者の役割分担や連携のあり方等を示す家畜防疫を総
合的に推進するための指針を作成、提示することとしている。12年度から実施し
ている家畜衛生対策事業による各都道府県での危機管理体制の強化、ワクチン等
防疫資材の備蓄、発生時の経営損失を補てんするための互助制度の創設等の関連
対策の実施と合わせ、この指針に沿った伝染病発生時の防疫体制の充実を図って
いきたいと考えており、関係者のご理解、ご協力をお願いしたい。

◇家畜伝染病予防法の改正の概要◇
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