◎地域便り


市街化地域にあってもいい牧場

佐賀県/企画情報部


 佐賀市鍋島町、JR佐賀駅から北へ佐賀医大を目指していく途中にしゃれたレス
トランが目に入ってくる。(有)ヨコオ牧場のミルクハウス「ミルン」で、その
後方には赤い屋根の牛舎が1棟。「思い切り目立つデザインにした」とちょっと
照れくさそうなのは代表取締役の横尾文三さん(52)だ。

 中にはヌレ子に近い子牛が5頭ほど。幼稚園、学校帰りの近所の子供たちは毎
日のようにのぞいていくし、休日ともなるとミルンに食事や買い物にきた家族連
れでミニ動物園のようなにぎわいとなる。

 「目立つ」というよりも牛舎は一般に想像されている酪農のイメージを体現し
たという方が適切かもしれない。ヨーロッパの山岳地帯、あるいは北海道の草原
を思い浮かべるあのイメージである。

 最も多い時で搾乳牛30頭を含む50頭を飼養し、しかも自然流下式、バキューム
カー吸引、散布でふん尿処理していたものだから、周辺住民からものすごい苦情
が出た。しかし横尾さんと牧場は先住者。学園都市構想に乗ってあとから転入し
てきた住民に文句を言われるのは筋違いとも思ったが、ハタと考えた。

 住民とあつれきを生じながらうちの牛乳、乳製品は売れるのだろうか?平成7
年、G社の原乳コンクールで最優秀賞に選ばれた横尾さんはちょうどその頃、良
質乳の自家ボトリングと乳製品加工への展開を考えている時だった。そこで思い
ついたのが市街化地域にあってもよいと誰からも思われる牧場である。

 現在、牧場の主力は隣の神埼郡脊振村に移されており、搾乳牛30頭、育成牛10
頭を飼養。ジャージーとホルスタインの割合は1対2。1頭当たりの年間乳量7,200
キログラムは「うちで使うに見合うだけの生産量」である。加工施設も同村に設
置し、アイスクリーム、ソフトクリームヨーグルト、チーズ等を製造している。

 ちなみにジャージーを入れているのはホルスタインだけでは面白くないからで
牧場、そして乳製品のオリジナリティーを発揮したかったからだ。牛乳は30分の
低温殺菌処理で、ここにもこだわりが十分感じられる。

 経営者としての啓発はお客さんとの交流から得られるという横尾さんにとって
目立つ牛舎は経営方針そのものなのかもしれない。
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【佐賀市の「目立つ牛舎」を
背にして】

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【アイスクリームのカップ詰め
作業の模様(脊振村)】

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