奈良県/企画情報部
五條市の農業生産法人・有限会社ヒグチファームは全国に22ある検疫場の1つ。 農林水産省動物検疫所の承認の下、採卵鶏をはじめとする食用鳥類の検疫業務を 代行している。 代表取締役・樋口一さん(54歳)は派米研修中のカリフォルニア州で養鶏の未 来は「分業化に向かう」と感じ、帰国後、採卵だけだった家業から独立する形で ヒナの供給に専念する。以降、順調に経営を拡大し、現在の育雛規模は25万羽。 これに加える形で約5,000羽が検疫の上限とされている。 空港内で一応の検疫を済ませたヒナは厳重無菌のトラックでヒグチファームに 運び込まれる。同じ市内ではあるが通常の育雛舎とは全く離れた場所に位置する 検疫場で、以後15日間にわたってチェックが行われる。 ポイントは言うまでもなくサルモネラ菌の有無。善玉、悪玉を問わず2,000種 に及ぶサルモネラ菌の1つでも発見されれば場内ですべてが焼却処分される。 「保税」になぞらえれば「保菌地域」と呼ぶべきだろうか、物々しい感さえ漂う。 検疫中、樋口さんは強健性等も観察するのだが、ヒナの中には国内未発表の種 もある。海外で改良・開発された新種には胸を躍らせるような優良種も含まれて おり、プロの眼には「3年先の市場動向が浮かんでくる」。 どこよりも早い情報把握こそが、業界のリーダーたる地位を築くのであり、ヒ ナの取引先はそうした樋口さんのビジネス・センスを評価する層に固定されよう としている。 10〜20円の値引きではなく、「とにかく良いヒナを…!」と求める顧客は「そ れだけのコストが要ることだろう」と理解を示す。「1羽当たりで年産20キログ ラム、330個を平均産卵する鶏になるようなヒナの供給」。プロがプロに応える のはこれしかなく、「同じ鶏でも違う、よく産むなあ」と言われるのが何よりの 喜びと生き甲斐だ。 現在、育雛飼養されているのはジュリアとボリス・ブラウンが半々。40〜120 日の範囲で契約納入日齢に合わせて出荷され、これらは3つの養鶏場に分散され ている。 近辺の養鶏家でも後継者難は例外でなく、こうした経営体に対して全面、ある いは部分的な形での受委託生産契約もヒグチファームの経営の中に取り込まなけ ればならない時代がきている。「地域の養鶏、農業が守り継がれれば…」と樋口 さんは支援を惜しまない。
【検疫場の前で】 |
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【育雛中のボリス・グラウン鶏】 |