宮崎県/片桐 紀生
社団法人国際農業者交流協会・宮崎県国際農友会主催の「畜産経営環境向上国 際シンポジュウムin宮崎」はテーマを“地球にやさしい循環型農業を目指して” と題して、昨年11月8日、宮崎市のサンホテルフェニックスで開催された。また、 副題は〜宮崎で学ぶデンマークの知恵〜講師のデンマーク関係者や全国から行政、 研究機関や畜産関係者が地元の農業関係者も多数参加して盛大に開催されたであ った。 翌日は国内外からの参加者は、県内のモデル的な循環型の環境対策施設をバス 2台で視察した。U酒造会社の視察研修では焼酎粕をリサイクルしTMR飼料と して製造加工して、従来は産業産廃物であった焼酎粕を有効利用すると共に畜産 農家へ高品質で低コストの飼料を供給し、地元の地域活性化を果たしている企業 に参加者は感心していた。なお、同社は昨年10月に中小企業長官奨励賞を受賞し ている。当日は飼料事業部長から焼酎粕の飼料化事業への取り組みや経過、完全 混合飼料の製造、給与試験、飼料プラントの建設、開発飼料、製造から流通等に ついて詳細な説明を受けた。また、各種の製造過程のサンプルや現物飼料、説明 板が展示されており、一般の消費者にもわかりやすく配慮されていた。 同部長によれば、九州には300社の焼酎メーカーが存在し、年間40万トンの焼 酎粕が発生しており、その大半はトン当たり1万2,000千円の経費を要して海洋投 棄を行っている。 ロンドン条約により2001年末で海洋投棄が規制されたが、同社は以前より海洋 投棄に代わる処分方法として、平成9年に緊急的に1日当たり100トン規模の焼 酎粕の焼却施設を建設した。その間に同社としては焼酎粕の肥料化、飼料化をさ まざまな角度から試験研究を重ねてきたが生産コスト、流通等の課題が残ってい た。 焼酎粕を飼料化するに当たって 1)飼料原料として販売、供給するのではな く、あくまでも畜産農家へ直接に商品として完全混合飼料を供給する。2)価格 競争に左右されないオリジナルの銘柄飼料とする。3)確実に生産性向上と経営 安定が図れる飼料であること 等を目標として開発した。焼酎粕はそのままでは極めて保存性が悪く、直接給 与では乳汁への異臭、高蛋白質による繁殖障害等も発生しやすいので、固液分離 し液部分を濃縮して穀類、牧乾草、ビタミン、ミネラルと混合してウエットタイ プTMRを製造している。また分離した固形分は乾燥機で乾燥後、ペレット化し てドライタイプ混合飼料の原料としている。なお、各タイプの飼料製造方法につ いては特許を取得している。 安全性の確認や流通に当たっては農協系統組織を活用しており、採食性、泌乳 量、乳成分、増体性、飼料の保存性も良好で高齢農家で直接給与できることから 飼料調整作業が省力化されたと感謝されている。乳牛用、肉牛肥育、肉牛育成、 繁殖用、交雑種用と多様な銘柄飼料が生産され、九州各地に広域流通している。 飼料プラントの建設経費は約5億円で平成11年10月から本格稼動。製造目標は年 間21,000トンである。
【TMR飼料の梱包現場から】 |
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【焼酎粕でのTMR飼料製造の説明を聞く】 |