★ 農林水産省から


平成13年度食品ロス統計調査結果の概要

統計情報部 流通消費統計課 藤嵜 久生




はじめに

 農林水産省では、健全な食生活に向けて食料・農業・農村基本計画や食生活指
針に基づき、食生活の改善を国民に呼びかけている。その一環として現在の食料
消費についての課題である食品の食べ残しや廃棄の削減に向けた取り組みや食品
循環資源の再生利用等の推進に当たっての現状把握を行うため、前年に引き続き
食品ロス統計調査を実施し平成14年3月12日に公表した。
同調査は、平成12年度(13年3月公表)に続き、今回は、世帯のみ(1,000世帯)
を対象として13年10月から11月までの約2カ月間のうちの連続した1週間を調査期
間として実施した。以下、調査結果の概要を紹介する。


調査結果の概要

世帯における食品ロス率

 世帯における食品ロス率は、世帯全体で6.0%となり、その内訳は廃棄(消
費期限切れなどにより廃棄されたものや不可食部分を除去する際に可食部分も除
去してしまう過剰除去)によるものが3.7%、食べ残しによるものが2.3%となり、
食品ロスの約6割が廃棄されたものという結果となった。(表1)

表1 世帯における世帯員区分別の食品ロス率

 
 前回調査の食品ロス率と比較すると1.7ポイント低下したことになるが、この
要因としては、前回調査は12年8月から9月までの約2カ月間のうちの連続した1週
間で実施しており、保存が難しい時期で廃棄が多かったのに対し、今回は食品を
廃棄せずに保存または使用することができるという気温や湿度といった保存環境
の違い、食べ物の無駄を無くそうとする消費者意識の高まり等が考えられる。
また、世帯員構成別にロス率を見ると単身世帯が6.3%、2人世帯が6.5%で世帯
全体の6.0%をやや上回っているが、3人以上世帯については5.8%で下回ってお
り、前回と比べると各世帯ともロス率は下回っている。(図1)

◇図1:世帯構成別に見た食品ロス率◇


食品類別食品ロス率

 主な食品類別にロス率を見ると、高いのは果実類の13.0%、魚介類の10.5%、
野菜類の10.2%で、低いのは、穀類の1.9%、牛乳・乳製品の1.2%となっている。
(図2)

◇図2:食品類別食品ロス率◇

 これを前回と比較すると、魚介類、肉類およびきのこ類でロス率が高くなり、
他の食品類別は低く、特に野菜類、調理加工食品、果実類、油脂類で低くなって
いる。

 ロス率が高くなったものを見ると、魚介類については廃棄率が高くなっている
が、使用量が増えており、過剰除去が多かったものと考える。肉類については、
使用量が減り廃棄が増えている。

 ロス率が低くなったものを見ると、各類とも調査時期の違いによる影響が大き
いと考えられる。特に、調理加工食品については、前回は夏場であったことから、
廃棄が多かったのに対し、今回は廃棄が少なかった。また、油脂類については、
前回は揚げ油の廃棄(夏場は酸化しやすい)が多かったのに対し今回は廃棄がほ
とんど出なかったため大幅に低下している。(表2)

表2 世帯における食品類別に見た食品ロス率


 また、全体のロス率への影響割合を食品類別に見ると、野菜類が最も高く30.
7%、以下、調理加工食品の18.2%、果実類の18.0%、魚介類の8.4
%、穀類の5.1%となっており、これら5品目で8割を占めている。(図3)

◇図3:食品類別食品ロス寄与率◇
 
 
地域別食品ロス率

 地域別にロス率を見ると、北陸、東海、近畿でそれぞれ、5.0%、5.1%、5.3
%と低くなっているが、東北では穀類の食べ残し、野菜類の廃棄および果実類の
廃棄・食べ残し等が多く7.6%と高くなっている。

 また、都市階級別に見ると、大都市と中都市が共に5.9%、小都市が5.7%でほ
ぼ同じであったが、町村部で穀類の食べ残し、果実類や調理加工食品などの廃棄
が多く、6.5%となっている。(表3)

表3 地域別および都市階級別に見た食品ロス率



生ゴミ等の食品廃棄物等の発生抑制、再生利用の取組状況(アンケート結果)

 本調査では、数量的なロス率の算出の他に、生ゴミ等の食品廃棄物等の発生抑
制や再生利用などに関するアンケートを実施した。

(1)食品廃棄の発生理由(複数回答)としては、「鮮度の低下、腐敗・カビのた
 め」との答えが61.4%で最も多く、次いで「消費期限・賞味期限切れのため」
 の46.2%であった。理由の上位2つは調理前の廃棄ということになる。「食卓
 に出した料理を食べきれず食べ残した」の40.5%がこれに続いた。一方、「食
 品の廃棄はほとんど発生しない」と回答した世帯も26.2%あった。(図4)

◇図4:食品廃棄の発生理由(複数回答)◇

  地域別に見ても、これら3つの理由が上位を占めている。

  また、「食品の廃棄はほとんど発生しない」と回答した世帯の割合が高い東
 海(37.2%)では食品ロス率5.1%、逆に低い東北(18.7%)では7.6%であっ
 た。

(2)次に、食品廃棄物等の発生抑制への取り組みを聞いたところ(複数回答)、
 「買いすぎないように心掛ける」「消費期限・賞味期限に気をつけて購入」が
 それぞれ76.6%、73.9%と7割を超えている。次いで「作り過ぎないよう適量
 を心掛ける」の60.6%と続いており、いずれも発生した理由と対応した回答と
 なった。一方、「発生抑制は特にしていない」と回答した世帯は5.1%であっ
 た。(図5)

◇図5:食品廃棄物等の発生抑制について(全国)(複数回答)◇

(3)食品廃棄物等の再生利用の状況を聞いたところ(複数回答)、「個人で食品
 廃棄物等の再生利用を行っている」が30.1%、「地域等で共同して食品廃棄物
 等の再生利用に取り組んでいる」が3.1%で、3割強が実践しているとの回答だ
 った。

  これを都市階級別に見ると、町村で43.7%と最も高く、以下、小都市、中都
 市、大都市の順になっている。この結果から見ると、大都市の取り組みが一番
 低いが、見方を変えれば、大都市においても4分の1近くが再生利用に取り組ん
 でおり、住宅環境等の不利な条件を考慮すれば、生ゴミ問題などに対する関心
 の高さがうかがえる。

  また、地域別に見ると、北海道、東海、中国四国での取り組みがそれぞれ、
 46.7%、39.5%、37.8%、で高く、一方、近畿、九州、沖縄ではそれぞれ22.6
 %、22.7%、15.0%と低くなっている。(図6)

◇図6:食品廃棄物等の再生利用の状況(複数回答)◇

(4)食品廃棄物等の再生利用製品の活用状況を聞いたところ(複数回答)、「自
 家で食品廃棄物等の再生利用を行って得られた飼料、肥料等の再生利用製品を
 利用している」が29.3%、「食品廃棄物等の再生利用により得られた飼料、肥
 料等の再生利用製品を購入して利用している」が6.6%だった。

(注)

 本調査での食品ロス率とは、可食食料(消費者が手にする食料のうち、りんご
の皮、魚の骨等の食べられない部分を除去したもの)、すなわち消費者が最終的
に摂取できる食料のうち、食べ残したり、消費期限が過ぎたりして廃棄した量の
割合を率で示したものが「食品ロス率」である。(図7)

 また、「食べ残し」とは、提供された食品を食べ残して捨てたものをいい、
「廃棄」とは、消費期限切れ等で廃棄したもの、不可食部分を除去する際に可食
部分も除去してしまう過剰除去等とした。

 過剰除去とは、一般的に除去されるとみなされる廃棄部分以上に除去すること
をいい、例えば、大根の皮の厚むき、食肉の可食部分と判断される脂身の除去な
どをいう。本調査では基準として、文部科学省の「5訂日本食品標準成分表」の
廃棄率を用いている。

 なお、油脂類のロス率の算出に当たっては、食料需給表の廃棄部分に相当する
量を控除して求めた。

◇図7:食品廃棄の発生理由(複数回答)◇

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