鹿児島県/宮下 浩秋
種子島は、亜熱帯性の温暖な気象条件から、さとうきび、甘しょ、畜産および 野菜を主幹とした複合経営が多い。畜産は肉用牛約14,000頭、乳用牛約3,500頭 が飼育されている。 種子島では、平成10年度より九州沖縄農業研究センター作物機能開発部さとう きび育種研究室(以下、「九州農研」という。)を中心に畜産関係機関で構成さ れる西之表市畜産経営確立対策協議会(以下、「協議会」という。)が協力して、 飼料用さとうきびの開発を行っている。これは、やせ地への適応性、台風・旱ば つへの抵抗力、旺盛な再生力など、さとうきびの持つ多様性を利用し、これまで にない多収量かつ低コスト飼料生産を目的としている。 この取り組みは、九州農研で作出された系統を協議会で増殖し、農家へ試験栽 培を依頼し、農家の評価、意見および要望を取り入れる形で研究を推進している。 協議会は、市営牧場での栽培管理、データ収集、農家で試験栽培する候補系統の 選抜、飼料成分分析、さとうきびを給与した牛乳の官能試験、サイレージ試験な どの調査研究的役割や農家への試験栽培依頼、栽培状況把握、栽培指導などの現 場と試験を結びつける活動を行っている。 飼料用さとうきびの収量は最高10アール当たり22トンで、ソルガムやグラス類 などの既存飼料作物およびさとうきびの2〜3倍となる系統が確認された。また、 糖度の指標であるブリックスは6〜14で高糖分ソルガムおよびさとうきびに比べ やや低い値であった。飼料成分は、他の飼料作物と比較して、水分と繊維が多く、 可消化粗たんぱく質(DCP)は若干低いものの、可消化養分総量(TDN)はソルガ ム、ケーントップ(さとうきび梢頭部)およびネピアグラスと同程度であった。 牛のし好性はほとんどの供試系統で良好で、特に茎の太い系統がカッターで裁 断した場合、茎が割れ易くし好性が良いと農家から評価された。 今後、実用に向けて、農家で試験栽培している系統を評価し系統を絞り込む必 要がある。その他、収穫時期や収穫適期など給与体系の検討、大規模経営に対応 するため貯蔵(サイレージ)の検討、牛乳の差別化を図るため酪農における周年 給与体系の検討を行う計画である。
【飼料用さとうきび (人物は身長1m78cm)】 |
|
【現地研修会 植付後6カ月】 |