◎地域便り


鹿児島県 ●種子島における飼料用さとうきびへの取り組み

鹿児島県/宮下 浩秋


 種子島は、亜熱帯性の温暖な気象条件から、さとうきび、甘しょ、畜産および
野菜を主幹とした複合経営が多い。畜産は肉用牛約14,000頭、乳用牛約3,500頭
が飼育されている。

 種子島では、平成10年度より九州沖縄農業研究センター作物機能開発部さとう
きび育種研究室(以下、「九州農研」という。)を中心に畜産関係機関で構成さ
れる西之表市畜産経営確立対策協議会(以下、「協議会」という。)が協力して、
飼料用さとうきびの開発を行っている。これは、やせ地への適応性、台風・旱ば
つへの抵抗力、旺盛な再生力など、さとうきびの持つ多様性を利用し、これまで
にない多収量かつ低コスト飼料生産を目的としている。

 この取り組みは、九州農研で作出された系統を協議会で増殖し、農家へ試験栽
培を依頼し、農家の評価、意見および要望を取り入れる形で研究を推進している。
協議会は、市営牧場での栽培管理、データ収集、農家で試験栽培する候補系統の
選抜、飼料成分分析、さとうきびを給与した牛乳の官能試験、サイレージ試験な
どの調査研究的役割や農家への試験栽培依頼、栽培状況把握、栽培指導などの現
場と試験を結びつける活動を行っている。

 飼料用さとうきびの収量は最高10アール当たり22トンで、ソルガムやグラス類
などの既存飼料作物およびさとうきびの2〜3倍となる系統が確認された。また、
糖度の指標であるブリックスは6〜14で高糖分ソルガムおよびさとうきびに比べ
やや低い値であった。飼料成分は、他の飼料作物と比較して、水分と繊維が多く、
可消化粗たんぱく質(DCP)は若干低いものの、可消化養分総量(TDN)はソルガ
ム、ケーントップ(さとうきび梢頭部)およびネピアグラスと同程度であった。

 牛のし好性はほとんどの供試系統で良好で、特に茎の太い系統がカッターで裁
断した場合、茎が割れ易くし好性が良いと農家から評価された。

 今後、実用に向けて、農家で試験栽培している系統を評価し系統を絞り込む必
要がある。その他、収穫時期や収穫適期など給与体系の検討、大規模経営に対応
するため貯蔵(サイレージ)の検討、牛乳の差別化を図るため酪農における周年
給与体系の検討を行う計画である。
【飼料用さとうきび
(人物は身長1m78cm)】
【現地研修会 植付後6カ月】

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