◎調査・報告


食肉処理機械の現状

有限会社 ミートテクノコンサルティング  代表取締役 中村 一次 

(元 財団法人 日本食肉生産技術開発センター)


 21世紀に入り、食肉業界を取り巻く環境は大きく変化しつつある。平成8
年の病原性大腸菌O157による食中毒問題は、わが国の食肉産業に食肉の安全
性確保と品質管理の重要性を改めて認識させる大きな契機となった筈であった
が、その後も口蹄疫、平成13年のBSE(牛海綿状脳症)、さらに偽装表示問題
等、相次ぐ問題に消費者の信頼は完全に失墜をもたらし、その後遺症は未だ消
えない状況にある。

 食肉業界の生産現場については、と畜場法施行規則の改正(8年12月)と同
法施行令によると畜場の構造設備基準改正(9年11月)に伴い、牛・馬と畜処
理ラインは12年3月迄に、豚と畜処理ラインについては14年3月末までに一定の
衛生管理基準をクリアすることが求められ、全国の食肉センターでは衛生関連
施設を中心とした改善・整備が進められてきた。

 ここ数年で国内の大部分の処理場が施設改善を実施しているが、従前と比較
し国内メーカー製の処理機器が増加しているのが目立ってきている。中でも国
が進める研究開発事業により製作された食肉処理機器が数多く導入されてきて
いるようだ。本稿では、国が進める研究開発事業について述べるとともに、食
肉処理施設整備に当たって導入された機器の概要についてごく簡単に紹介する。


わが国の研究開発の始まり

 わが国の食肉処理に関する研究開発は、牛肉の自由化を契機に国が財団法人
日本食肉生産技術開発センター(以下「JAMTI」という)を設立、国内での食
肉処理に関する研究開発事業をスタートさせた。

 事業の仕組みを簡単に述べると、本事業は、JAMTIが4年に農林水産省および
畜産振興事業団の指導、補助の下に食肉処理機器メーカー、エンジニアリング
関係企業、食肉処理関係企業・団体等を構成員とする「食肉生産技術研究組合」
を設立し、同組合が事業主体となり、開発事業を実施している。

 各組合員は、牛のと畜解体から部分肉加工、副生物処理に至る各工程、ある
いは全工程を通した食肉の衛生的、効率的処理に必要な設備機器・システム化
の開発について、各課題を分担し、計画期間内に体系的に研究開発する仕組み
となっている。研究開発の概要については、以下のとおりである。

開発すべき食肉処理システム

●微生物汚染を防止する衛生的な処理システムおよび品質向上の確保
●きつい危険作業の機械化、システム化による衛生的処理、作業効率の向上お
 よび労働条件の改善
●製品の生産、品質管理等に関する情報処理システムの構築
●水およびエネルギーの使用量を極力節減するシステム

 これらのシステムの開発、実用化に当たっては、導入による利便性と製作コ
ストとの関係から見て、経済合理性を有すると認められるものでなければなら
ないとしている。

研究開発実現のための条件整備

●技術分野ごとの機械開発者の組織化
●開発に不可欠なフィールドテストの実施を提供する利用者(食肉工場等)と
 開発者との共同開発体制の確立
●研究開発資金の助成

 研究開発の対象となる、食肉処理システムを構成する一連の各工程の機械処
理領域は極めて多岐に亘り、多額の資金を要することから、研究開発の実現を
図るためにこれらの条件が整備されている。


研究開発の必要性

国際競争力

 国産牛肉産業を巡る状況は、3年4月の牛肉輸入自由化、ガットウルグアイ
ラウンド合意に基づき段階的関税切り下げ、円高進行等から牛肉の輸入が一気
に増加し国内消費量の約60%を占めるに至り、今日に至っている。この間豪州
および米国は対日輸出を睨んで、日本市場のニーズに適合するように、@衛生
処理によるシェルフライフの長期化、チルド対応、A日本の需要に応じ、豪州
のグレインフェッド飼養、米国ではパーツ・チルド対応等品質面について、輸
出競争力を高めるための体制整備に積極的に取り組んでいる。自由化以前は国
産牛肉が主体であったテーブルミートの分野で輸入牛肉が浸透・定着化し、シ
ェアを増加させており、国産牛肉の国際競争力を保持・強化するために従来以
上に衛生的で高品質な食肉生産が必要となっている。


労働力不足

 従業員の高齢化と新規従業員確保の困難さはわが国食肉処理場における共通
の大きな問題である。刃物使用による危険作業、騒音・湿気・無空調の劣悪な
労働環境、人間工学を無視した作業現場などがその大きな要因となっている。
 この問題には、福祉対策の処遇を向上させることはもちろんだが、と畜解体
および部分肉製造分野における諸工程の自動化または機械化により省力化を図
るほか、人手作業の軽労働化と人間工学的配慮が必要である。


衛生処理および品質問題

 8年にO157が発生後、と畜場法施行規則の一部改正され、衛生管理の徹底が
求められ、ハード(施設)の整備は進んだ。一方、ソフトについては、HACCP
方式の管理手法の導入等による衛生管理の徹底および従業員の教育等を更に充
実する必要がある。また、施設改善で新しいと畜解体システムを導入したもの
の、新施設のオペレーションがうまく行かず、PSE豚やスポットの発生等が報
告されており、品質に及ぼす影響が新たな問題として出てきており、これらに
対する取り組み強化が望まれている。


海外における自動化、機械化の進展

 オ−ストラリア、ニュ−ジ−ランド、オランダ、デンマ−ク等海外食肉先進
国においては、公的研究機関と機械メ−カ−とが共同で機械・システムの研究
に当たっており、1時間当たり500〜600頭のと畜解体処理を22〜26人程度の作
業員で行えるほど省力化を実現している。それだけではなく照明・空調等快適
な労働環境を実現しながら人件費は大幅に削減されており、食肉販売の競争力
を生み出している。

 特にオーストラリアでは、96年7月の米国での食肉衛生検査制度の抜本的改
正を受け、HACCPの導入を義務付け、米国と同等の衛生管理を実施している。
輸出工場では米国やEUの輸出基準に適合する施設・設備を装備し、オンレール
方式で構成され、全工程に自動搬送システムを採用し、微生物汚染を抑制する
衛生的な処理を行うとともに処理効率の向上(時間当たり60〜100頭)を図っ
ている。

 一方、米国でも処理工場の統廃合・再編が進み、1工場当たりの処理規模は
大幅に拡大している。処理能力も全工程にわたり、オンレール方式で構成され、
自動搬送システムが導入されるとともに、と畜解体部門では、人間工学面から
作業の標準化、専門化を進め、時間当たり牛の処理能力は250頭を超えている。
2シフト稼働が一般的であり、固定コスト低減を徹底的に追及している。また、
原料肉牛の調達からと畜解体、部分肉処理、製品の出荷・販売に至る一連の業
務が一貫した運営の下で行われ、生産コストや流通コストを徹底的に押さえる
努力をしている。わが国においても、これらの水準に到達し、更に高度な機械
・システムを開発していくことが望まれる。


他産業分野における自動化、機械化

 わが国の工業製品製造業は、ロボット・FA(Factory Automation)技術を中
心に世界最高水準にあるにもかかわらず、と畜解体・部分肉処理の分野におい
ては極めて労働集約的であり、労働生産性が低く労働コストが高くついている。
他産業分野の先進的技術を積極的に取り入れて効率化を図り、生産性の向上を
目指す必要性がある。


食肉工場の処理規模の拡大

 わが国のと畜場は、年間豚約16百万頭、牛1.4百万頭の処理頭数に対して約2
50カ所もあり、その大部分は零細なものとなっている。今後も機械化・自動化
を進め、効率化を図るには処理場の大規模化を促進し、操業率の向上、処理コ
ストの低減化等により、投資資金の回収と経営の安定化を図る必要がある。


研究開発の目標

 9年度からの事業実施に際しては、食肉処理を巡るわが国の現状にかんがみ、
研究開発課題の選定および事業推進に当たっては以下の考え方により進めてら
れている。

食肉処理を巡る環境と研究開発の目標

◇ 衛生処理の強化を求める政省令改正への速やかな対応
◇ 食品(食肉)の安全性を確保した研究開発
◇ 食肉処理システムに関するソフト・ハード面についての研究開発
◇ ユーザー本位の研究開発(実用性、経済性、新規性、新技術)
◇ 主要機器・システムの海外依存から国内生産化の促進

システム開発の基本コンセプト

◇ 動物愛護 : 家畜の人道的処理
◇ 労働環境 : 労働安全衛生、職場環境改善
◇ 品質向上 : 処理方法、処理ライン・工程に起因する異常肉等の排除
◇ 衛生処理 : 枝肉・可食内臓の一般生菌数低減、病原微生物対策
◇ 作業効率 : 作業平準化・単純化、省力化・省人化
◇ 経営効率 : 生産性向上、歩留向上
◇ 経費削減 : コストパフォーマンス、省エネルギー
◇ 環境衛生 : ユーティリティ、洗浄システム、衛生的残滓物処理
◇ 対象施設 : 処理規模・処理形態への対応
◇ 処理能力 : 実需対応の優先
◇ 開発機器 : 経済合理性、実用性重視、処理エリア別システム開発
◇ 情報管理 : 販売&仕入、生産性、在庫、エネルギー、HACCP対応

事業推進の基本的考え方

◇ ユーザー優先      : ユーザーとの連携&共同開発
◇ 高品質・衛生的 : 品質向上、衛生水準の高度化
◇ 実需機開発   : マーケットニーズの高いもの
◇ 開発対象    : 処理エリア単位のシステム開発
◇ 技術の統合化     : プラントメーカーのジョイント&研究開発
◇ 基礎技術開発     : 先端技術の応用・実用化
◇ 高度開発    : 開発機器の高度化、自動化


研究開発事業の経過と内容

開発経過

 JAMTIが取り組んできた開発事業は現在第3期事業(食肉処理効率化技術開発
事業)に入っている。ちなみに、第1期は「食肉処理自動化システム開発事業
−豚関係」、第2期は「牛肉処理高度自動化システム開発事業(牛関係)」で
ある。

 研究開発の主たる目標は、第1期事業では食肉処理場の実状にかんがみ人手
作業による処理を機械化することに主眼を置き、機器・装置についても半自動
化・全自動化システムの導入に向けた開発を主とした。

 第2期事業では、8年のいわゆるO157問題から、食肉の衛生処理・確保が最
大の研究開発テーマと位置付け、衛生処理関係の課題を優先させた。また、研
究開発に当たっては、開発の迅速化・効率化を図るため、共同開発を促した。

 現在進めている第3期事業では、それまでと畜・解体処理工程における機器
の開発が主体であったことから、副生物処理、部分肉処理、廃水処理関係の研
究開発に主眼を置いている。

 開発当初、わが国の主要装置・機器等はそのほとんどが外国製であったため、
先ず各メーカーによる単体機械・機器等の開発を優先させ、次に前後の工程処
理を含めた装置・システムの開発、さらには共同開発を勧め、各エリア全体を
1つのユニットと捉えたシステム開発および装置・機器の自動化開発を進めて
いる。


課題選定と進め方

 第1期では組合員との協議で研究開発課題を協議・決定する方法を採用し、
第2期事業からは「開発計画書」を参考としながら、広く組合員からの提案方
式を採用した。提案された全課題について開発センターと開発担当希望組合員
および共同開発を行う場合は当該組合員を含めてヒヤリングを実施し、内容を
精査し選定した。組合員に広く提案を求める方法を採ったことで、提案される
課題の質が大幅に向上した。

 研究開発の進め方については、可能な限り組合員間の共同開発を奨め、技術
の統合、研究開発期間の短縮、ユーザーニーズの高いものの開発等をその目的
とした。その結果、延べ42課題について共同開発を見ている。また、13年度以
降ユーザー組合員の研究開発への参加が急速に増え、延べ35社が共同研究を実
施している。なお、年次別の提案件数と採用数の推移は次表のとおりである。

【年次別提案課題数と採用課題数】

注:採用課題数は合計126。複数年に亘り開発を実施している課題が多い。


取組課題の内容

 設備工程別の開発課題は、下表のとおり第1期は合計40課題中、と畜解体
処理16課題(40.0%)および 部分肉加工処理11課題(27.5%)に関する課題
で全体の77.5%を占め、主要機器の国産化を進めた経緯が見て取れる。その他
は、副生物処理2課題(5.0%)、と畜・加工関連機器(12.5%)、管理運用関
係6課題(15%)であった。

 第2期では、8年にO157が発生、衛生処理機器の開発に取り組んだことから、
と畜解体処理22課題(43.2%)およびと畜・加工関連機器10課題(19.6%)で
全体の60%強を占めた。また、副生物処理関係の増加を見た。

 第3期では、と畜・解体処理工程の課題は主要機器の開発が第2期まででおお
むね終了したことから減少し、昨年発生したBSE(牛海綿状脳症)関連機器の
開発が14年度に入ってきたことで、関連機器の増加を見たが、副生物処理およ
び部分肉加工工程の開発にウェイトが高まってきている。



 設備工程別開発課題を予算ベースで見ると右表のとおり、第1期では、と畜・
解体工程(31%)および部分肉加工処理工程(37%)で全体の70%弱を占め、
副生物処理工程は僅か1%であった。工程管理・運用関係(コンピュータ制御、
搬送システム等)も19%と大きなウェイトを占めた。

 第2期では、主要機器の国産化および衛生処理を目的とした研究開発を進め
ていると畜・解体処理工程関係が半数の55%を占めた。次いで、衛生処理を
求められている副生物処理工程関係およびと畜・加工処理関連機器で24%を
占め、これらで研究開発の大部分を占めた。

 なお、部分肉加工処理工程は13%となっているが、第1期から継続した課題
がその中の56%を占めている。

 第3期では、副生物処理機器および部分肉処理機器の開発予算が増加、廃棄
物処理として廃水処理機器の開発が大きなウェイトを占めている。

 採用課題を概括的に言えば、第1期・第2期では、主要装置・機器の国産化
と衛生処理をテーマにした開発物件が90%を超え、衛生処理を強化するための
政省令改正に連動した形で開発に取り組んきた。また、第3期では、諸外国と
はマーケットの違いから処理機器が見られない、副生物処理機器および部分肉
加工処理機器の開発に取り組んでおり、この分野の開発は多くのユーザーが求
めている課題でもある。




成果物の評価について

 ユーザーに利用可能な機器・システムの開発という視点から、研究開発の成
果を見ると、第1期事業の終了時点(9年3月)で、全40課題のうち、実績評価
の「A」(5課題、12.5%)および「B」(13課題、32.5%)が合わせて45.0
%に到達した。

 第2期事業については、13年4月現在の推定で研究開発の成果を取りまとめる
と、全51課題のうち、実績評価の「A」(16課題、31.4%)および「B」(19
課題、37.2%)、計35課題、68.6%に到達した。残りの16課題(31.6%)につ
いてはすべて「C」段階まで到達しており、研究開発の成果として評価できな
い「D」および「E」は一件もなく、極めて順調な研究開発の成果を上げてい
る。第1期事業と比較すると、AおよびBにランクされる課題が飛躍的に増加、
組合員間の共同開発の促進およびユーザーの開発事業への積極的参加が極めて
大きな成果を収めている。


(注)実績評価内容は以下のとおり、
 A=実用機到達課題 B=実証機到達課題
 C=プロトタイプ機到達課題 
 D=実験機到達課題 E=開発断念課題

 なお、第3期事業については現在進行中であり、未だ客観的評価はしていな
いものの、既に実用機レベルに至った課題もあり、第2期事業を上回る評価が
見込まれている。


研究開発がもたらしたもの

研究開発事業の波及効果

 研究開発事業は研究開発期間のみではない。開発期間終了後も企業努力によ
って実用機器の継続開発が試みられている。成果についてみてみると、第1期
事業終了時の評価が「A」および「B」のものは、前述のとおり9年4月時点で
合計45.0%であったが、12年4月時に同一課題を再調査した結果下表のとおり、
AおよびBの合計で62.5%となっている。このことは、開発期間終了後、開発
担当組合員自らの継続努力の成果によるもののほか、開発機器と同一ではない
ものの開発機器をベースとした数多くの機器が改良工夫されたものも見られ、
研究開発の成果が他の組合員およびメーカーに波及効果を及ぼしているものと
思われる。

【第1期成果物の評価】

注:同一物件を12年度で再評価、上段は課題数


研究開発事業の成果

 特筆すべきは、多くの開発物件を取り入れた新工場(秋田県鹿角市、(株)
ミートランド)の設置が果たした役割が大きいと考えられる。同工場は8年か
ら稼働を開始、これまで数多くの見学者が訪れている。14年3月までに施設改
善を実施した国内の食肉センターも同工場を参考にしたところは少なくない。

 また、前述したようにメーカー組合員間の共同開発の推進や技術の統合、実
験場所やニーズの提供等ユーザーの協力が開発の起爆剤となったこと。衛生処
理関連機器および自動システムの開発より主要機器の開発を優先させるなど、
開発テーマを絞り込む等、研究開発事業の進め方が適切だったことも研究開発
を大きく前進させた。加えて、衛生処理を求める政省令改正の施行により、施
設設備の改善を実施する過程で多くのユーザーの関心が高まってきたことも大
きな要因と考える。


おわりに

 ここ数年来、食品生産現場においては衛生管理、品質管理の徹底が叫ばれて
おり、さらには労働環境の改善をも見据えた改革が進められている。生産工場
としての食肉センタ−はいまや特殊な施設ではなく、はっきりと食品生産工場
としての体裁と中身を要求されている。従ってコストに見合った生産規模の達
成、市場から要求される品質・衛生管理の徹底、社会的要請である省エネルギ
−と環境対策、更には動物愛護と危険作業からの作業員の開放等達成されなけ
ればならない時代的要請は多方面に及んでいる。

 研究開発事業は4年度からスタートしたが、当然ながら事業開始時と今日で
は社会情勢や消費者動向など畜産を取り巻く環境は大きく変化している。従っ
て開発当初の課題・問題点がそのまま今日のそれとは一致するとは限らない。

 流動する社会情勢の中で問題解決を図るには何を課題とし目標設定を行うの
か。どのような視点で研究課題を設定し開発事業を進めて行くべきか。そして
その結果解決された課題とそうでなかったものは何か。また、取り組むべき課
題でありながら落としてしまったものは無いのか。常に今日的視点での見直し
検討を行いながら開発事業を進めていく必要があると思われる。

 21世紀に入って、資源問題、環境問題といったグロ−バルな問題が大きくク
ロ−ズアップされ、事業開始時期とは比べ物にならないほど緊急性を帯びたも
のとなってきている。HACCPは夢のような話であった第1期の事業開始当時から
見ると、現在ではHACCPを内包するISO9000シリ−ズを取得する食肉センタ−が
現出する時代となっているからである。

 牛肉自由化を契機に始まった国内の開発事業は、今年で10年を迎えた。次の
10年はどのように進めるのか。JAMTIが食肉生産技術研究組合のユーザーおよ
びプラントメーカーを中心に、食肉処理の基幹工程における機械化システム化
の更なる確立を目指し、国際的な基準を視野に置きながらも日本人の研ぎ澄ま
された感性と技術を生かし、わが国の実態に適合した独自の技術開発を進めら
れるよう期待したい。また、品質(肉質)向上等、ソフト面の開発についての
研究開発も極めて重要な位置を示していることを痛感しており、併せて一層の
取り組みを強化されるよう期待したい。

<参考資料>

【第1期事業の開発課題】

( 1.と畜・解体処理工程)


( 2.副生物処理工程)


( 3.部分肉加工処理工程)


( 4.と畜・加工関連機器関係)


( 5.廃棄物・残滓物処理関係)
 該当なし

( 6.工程管理・運用関係)


【第2期事業の開発課題】

( 1.と畜・解体処理工程)


( 2.副生物処理工程)


( 3.部分肉加工処理工程)


( 4.と畜・加工関連機器関係)


( 5.廃棄物・残滓物処理関係)


( 6.工程管理・運用関係)


【第3期事業の開発課題】

( 1.と畜・解体処理工程)


( 2.副生物処理工程)


( 3.部分肉加工処理工程)


( 4.と畜・加工関連機器関係)


( 5.廃棄物・残滓物処理関係)


( 6.工程管理・運用関係)


研究開発した主な機器

 研究開発した機器のうち、国産の機器を中心に現在食肉センターで稼働して
いる主な機器を紹介する。

と畜解体処理工程−豚

◇11-01 豚自動スタニング装置

【装置概要】

連続式豚電撃装置。「腹乗せ式」コンベアの自動搬送部分と自動電撃部分で構
成。詳細な電撃仕様デ−タに基づいて電圧優先、電流優先の切り替えが可能。
一頭毎の電撃結果のプリントアウトのみならず、パソコンによる全処理デ−タ
の一覧表作成機能を有す。


◇05-03 豚自動剥皮機−縦型

【装置概要】

縦型の剥皮装置。外国製を国内仕様に改良。剥皮面と機器の非接触を確立、衛
生処理(枝肉汚染防止)機能を高めた。


◇05-03 豚自動剥皮機−横型スキンナー

【装置概要】

横型スキンナ−を衛生処理機器に改良。剥皮する豚の回転に合わせベルトコン
ベアが駆動、縦型と同機能を有する構造。その他、と体接触部分を全て温湯に
より殺菌。従来の横型の改良機と新機種の2タイプがある。


◇09-18 豚全自動剥皮装置

【装置概要】

オンレール上のと体を自動搬送、表皮の自動把持、表皮の剥き下げ、表皮の巻
き取りとリリースの連続一体型機器。剥皮後の表皮は装置下部から皮搬送コン
ベア・エアーシューター等で、専用室へ搬送。無人化機器


◇04-16豚と体自動搬送装置

【装置概要】

と畜解体ラインから枝肉冷却保管、部分肉処理までの一貫したと体・枝肉等の
自動搬送システム。応用として連続移送、間欠移送が可能。


◇07-01 豚と体自動洗浄装置(剥皮後)◇

【装置概要】

腹腔内を含めたと体全体の自動洗浄機。洗浄水の飛散防止機能。内臓摘出時の
腸管破損の速やかな洗浄、と体の冷却効率の向上。



と畜解体処理工程−牛

◇09-02 牛自動スタニング・放血装置

【装置概要】

生体のスタニングボックスへの誘導、保定、スタニング(エアーガン)、ステ
ッキング(刺殺)、血液の真空採血、可動式受け台へと体を搬出する工程を全
て連続・自動運転。オプションでと体の不動体化装置の設置。
スタニング工程と放血工程を分離仕様も可能。


◇09-05 牛剥皮コンベア装置−仰臥型

【装置概要】

前処理作業及び剥皮作業を移動コンベア上で処理。重量物を吊り下げる構造物
が不要な床置き型。剥皮した表皮がと体に接触せず衛生的処理。表皮を引っ張
らないので、表層脂肪間に気泡が発生せず細菌増殖の抑制及び洗浄水の混入防
止が可能。


◇09-05 牛自動剥皮装置−縦型

【装置概要】

剥き下げ方式による剥皮機。剥皮面の汚染の防止、平均張力剥皮による商品性
の向上。電気刺激を使用し肉の引き剥がれを防止。
剥皮の後の表皮はシューター等で専用室へ。


◇12-04 牛簡易吊り下げ式前処理装置

【装置概要】

放血後のと体を狸吊り(四肢を吊り下げ)し、前処理・剥皮処理。剥皮作業の
省力化、作業スペースの縮小、設備投資の節約。少数処理、事故畜棟での使用
向き。枝肉、皮など商品品質の改善。


◇12-07 牛食道結紮機(真空型)

【装置概要】

喉部の切開不要。口の中からロッドを挿入し食道内壁をクリップする食道結紮
装置。
胃及び食道内の内容物の逆流が無く、頭部やタン(舌)を汚染させない。


◇09-11 牛枝肉パルスライト殺菌装置

【装置概要】

光を用いた殺菌装置。非加熱殺菌方法であり、肉表面殺菌に適応。剥皮直後や
枝肉洗浄後の設置可能。高い減菌効果が期待。


◇09-12 枝肉温湯殺菌装置

【装置概要】

付属コンベアにより装置内に導入された枝肉に対し、上から下へ温湯、次に水
がかけられ、最後に圧力エアーの水切りを行い自動搬出される。
自動温度制御される温湯タンク二個と装置排気のファンを付属している。
出入り口は自動扉、隔壁は自動開閉扉によって各室独立に保護されている


副生物処理工程−牛・豚

◇09-06 豚内臓洗浄・殺菌装置

【装置概要】

一次処理後の内臓洗浄と滅菌処理装置、腸管内容物の完全除去。バブリング
(気泡)で洗浄効果向上。電解水との併用で殺菌効果向上


◇05-06 豚白物内臓搬送コンベア

【装置概要】

シンクロコンベアによる個体別の搬送。搬送の自動化で労力の軽減。内容物に
よる汚染拡散防止。パンは自動洗浄・消毒。


◇10-01 牛大腸切開機

【装置概要】

内容物洗浄装置、脂肪分離装置、大腸自動切開機からなる。溜め水の中で作業
することなく衛生処理。脂肪分離装置(オプション)


◇11-09 牛頭部搬送・分離処理ライン

【装置概要】

牛頭部処理のフルラインシステム。切離後の頭部洗浄機、自動搬送装置、自動
頭部洗浄装置、衛生検査後、頭部前処理、上顎と下顎の分離装置(写真)、上
顎トリミング保定器、下顎トリミング保定器からなる。衛生処理、手作業の省
力化。



部分肉加工処理工程−牛・豚

◇05-09 豚ロース背脂肪整形機

【装置概要】

脂肪層厚さ測定は光学式センシング。揺動円弧カッターで、表層脂肪を設定厚
にカット。カッターの移動、高さ、角度は3軸同時制御


◇04-08 豚半自動大分割装置

【装置概要】

と体を保定、2カ所の切断部分の測定。左右一対の枝肉を切断装置で左右同時
に切断。プリセット位置から切断機へは自動誘導(投入)、切断及び切断部分
肉は各除骨ラインへ自動搬出


◇05-10 金属等異物検知機

【装置概要】

部分肉の部位や物理的変化に関係なく各メーカーのステンレス注射針を検出
部分肉重量に応じた最適の感度、位相角の自動設定による測定精度の安定化


◇09-20豚もも半自動除骨装置

【装置概要】

吊り姿勢の搬送により10の工程で連続的に処理。カッター・引き上げ装置・
ミートセパレータを用いた大腿・下腿骨自動除骨作業及び骨・肉の自動排出



と畜・加工関連機器

◇04-15 布製ダクト空調システム

【装置概要】

ソックダクトとも呼ばれ、微風・低速空調により、品温上昇を防止、体感温度
が3〜5℃軽減。室内の浮遊粉塵等を除去、衛生的作業環境の確保


◇09-10 ナイフ殺菌装置

【装置概要】

ナイフの非加熱殺菌装置。ナイフを電極にして溶液中で通電し、専用電源から
電力をナイフに加え短時間に強い殺菌を行う。
溶液の上層に浮上した汚れ等は殺菌槽からオーバーフローされる。数本のナイ
フ及びヤスリの殺菌が可能。


◇10-08 自動包丁研磨機

【装置概要】

ナイフの自動研磨機。処理場で使用する殆どのナイフ(現在6種類)の研磨が
可能。
ロボット操作により短時間で精緻な研磨。

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