◎地域便り


岩手県 ●いわて牛トレーサビリティで安全・安心を消費者へ

岩手県/千田 牧夫


 畜産部門での粗生産額、1,310億円(平成12年・全国第4位)、肉用牛では第
5位、乳用牛第6位、豚第7位、ブロイラー第1位、これが「畜産いわて」の姿で
ある。

 千葉県下での国内で初めてのBSE(牛海綿状脳症)の確認により、畜産農
家や食肉関係事業者にとって、過去に経験のない危機的状況に直面した。

 この局面を打開しようと岩手県では、さまざまな対策を講じてきたが対策の
1つとして、消費者に牛肉の安全・安心情報を届けるため、岩手県独自に取り
組んでいる「いわて牛トレーサビリティシステム」がある。

 この「いわて牛トレーサビリティシステム」においては、個々の牛ごとに飼
養履歴を記載したTBCカード(TBC=Trace Beef Card)を、生産から流通、消
費へと受け渡していくことをベースとしている。また、肉牛生産農家、農協等
畜産関係団体、岩手畜産流通センター(県内唯一のと畜場。以下「岩畜」とい
う。)、量販店、県、それぞれが合意のもと、それぞれの役割に応じて、経費
も含めた責任を分担しながら運用されている。

 生産者は、TBCカードに個体識別番号、生産者名、移動履歴(所有移転)、
飼料給与状況などを記載し、牛の移動の際に牛とともにTBCカードを受け渡し
ていく。最終的にTBCカードは、と畜出荷の際に岩畜に提出され、岩畜でのと
畜情報の記入とBSE検査合格印が押された後、このBSE検査済TBCカードの写し
が枝肉や部分肉とともに量販店に渡されていく。量販店では、牛肉パック商品
に個体識別番号シールを貼付して販売し、消費者は店頭に備え付けたBSE検査
済TBCカードを閲覧することにより、牛肉の飼養履歴情報を確認することがで
きる。また、岩手県のホームページ(http://www.pref.iwate.jp/〜tbc/)で
も、BSE検査済TBCカードを公開しており、自宅のパソコンからでも情報を確認
できる仕組みとなっている。

 平成14年2月22日、49店舗の協力でスタートしたシステムであるが、その後、
協力店舗が徐々に増え、10月4日現在、県外27店舗を含む124店舗でシステムが
運用されており、牛肉の安全・安心情報を求める消費者にとっても一定の評価
があったものと考えている。

 「いわて牛トレーサビリティシステム」は、県内(岩畜)でと畜される場合
を前提としたシステムであり、県内産の約7割に当たる県外出荷牛(他県と畜)
には、適応できないという課題が残されている。県域を越えて広く国内に流通
する牛肉については、県独自の取り組みでは限界があり、全国統一した仕組み
でのトレーサビリティシステムの構築が待たれるところである。

  

【トレーサビリティー啓発ポスター】
【1頭ごとに作成する
TBCカード】
【個体識別番号が貼付された
牛肉パック商品】

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