岩手県/千田 牧夫
畜産部門での粗生産額、1,310億円(平成12年・全国第4位)、肉用牛では第 5位、乳用牛第6位、豚第7位、ブロイラー第1位、これが「畜産いわて」の姿で ある。 千葉県下での国内で初めてのBSE(牛海綿状脳症)の確認により、畜産農 家や食肉関係事業者にとって、過去に経験のない危機的状況に直面した。 この局面を打開しようと岩手県では、さまざまな対策を講じてきたが対策の 1つとして、消費者に牛肉の安全・安心情報を届けるため、岩手県独自に取り 組んでいる「いわて牛トレーサビリティシステム」がある。 この「いわて牛トレーサビリティシステム」においては、個々の牛ごとに飼 養履歴を記載したTBCカード(TBC=Trace Beef Card)を、生産から流通、消 費へと受け渡していくことをベースとしている。また、肉牛生産農家、農協等 畜産関係団体、岩手畜産流通センター(県内唯一のと畜場。以下「岩畜」とい う。)、量販店、県、それぞれが合意のもと、それぞれの役割に応じて、経費 も含めた責任を分担しながら運用されている。 生産者は、TBCカードに個体識別番号、生産者名、移動履歴(所有移転)、 飼料給与状況などを記載し、牛の移動の際に牛とともにTBCカードを受け渡し ていく。最終的にTBCカードは、と畜出荷の際に岩畜に提出され、岩畜でのと 畜情報の記入とBSE検査合格印が押された後、このBSE検査済TBCカードの写し が枝肉や部分肉とともに量販店に渡されていく。量販店では、牛肉パック商品 に個体識別番号シールを貼付して販売し、消費者は店頭に備え付けたBSE検査 済TBCカードを閲覧することにより、牛肉の飼養履歴情報を確認することがで きる。また、岩手県のホームページ(http://www.pref.iwate.jp/〜tbc/)で も、BSE検査済TBCカードを公開しており、自宅のパソコンからでも情報を確認 できる仕組みとなっている。 平成14年2月22日、49店舗の協力でスタートしたシステムであるが、その後、 協力店舗が徐々に増え、10月4日現在、県外27店舗を含む124店舗でシステムが 運用されており、牛肉の安全・安心情報を求める消費者にとっても一定の評価 があったものと考えている。 「いわて牛トレーサビリティシステム」は、県内(岩畜)でと畜される場合 を前提としたシステムであり、県内産の約7割に当たる県外出荷牛(他県と畜) には、適応できないという課題が残されている。県域を越えて広く国内に流通 する牛肉については、県独自の取り組みでは限界があり、全国統一した仕組み でのトレーサビリティシステムの構築が待たれるところである。
【トレーサビリティー啓発ポスター】 |
【1頭ごとに作成する TBCカード】 |
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【個体識別番号が貼付された 牛肉パック商品】 |