トピックス

●●●14年牛枝肉の格付状況●●●

 社団法人日本食肉格付協会がこのほど公表した平成14年の格付結果によると、
格付頭数は13年を大幅に上回る1,030千頭(18.9%増)であった。と畜頭数の
うち格付頭数の割合は8割を上回るものとなり、と畜頭数、格付頭数ともに前年
を上回った。特に格付頭数は前々年をも上回って推移した(図1)。

 格付結果の構成割合を見ると、歩留等級Aに格付けされたのは去勢和牛では
83.5%、そのうち36.8%が4等級、34.3%が3等級で、歩留等級Aの去勢和牛
のほぼ7割が3、4等級に格付けされている。また、5等級は15.7%であり、全
体としては13.1%のみである。平成8年以降A5等級の格付割合は減少傾向に推
移していたが、13年の11.8%を底にA5等級の格付割合が上昇したことがわかる
(図2)。

 出荷県別結果によると全国では、乳用種去勢牛は全体の65.1%がB2等級であ
る。北海道ではB2等級が77.1%と全国平均より1割以上高い。
◇図1 格付頭数とと畜頭数◇
◇図2 去勢和牛の格付構成割合(14年)◇


●●●14年ハンバーグ・ハンバーガー生産量の推移●●●

 このほど公表された社団法人ハンバーグ・ハンバーガー協会がまとめた平成14
年のハンバーグ・ハンバーガーの生産販売実績によると、ハンバーグは昭和58年
を天井におおむね減少傾向に推移している。直近の5年間は一貫して前年を下回
り続けており、14年はBSEによる牛肉離れの影響をさらに受けたため、10.7%
の減少となり、かなり大きく前年を下回った。一方ハンバーガーは11年を除く
とおおむね増加傾向で推移してきたが、ハンバーグと同様にBSEによる牛肉離
れの影響を受けて14年の生産販売実績は143,087トンで前年を16.4%減少し、
大幅に下回った(図3)。

 14年の生産販売実績の143,087トンには内数として主にポーク類がある。こ
れを除いた数字を見ると、前年に比べて23.0%減少している。なお、ハンバーガ
ーのうち主にポーク類は前年の0.1%減で、前年並みであった(図4)。
◇図3 ハンバーグ・ハンバーガーの生産販売実績◇
◇図4 ハンバーガーの生産販売量◇


●●●14年度牛肉生産量等の推移●●●

 農林水産省「食肉流通統計」によると14年度の生産量(部分肉ベース)は前
年度比10.4%増となった。前々年度比は0.5%減で生産量はほぼ回復した。

 と畜頭数は乳牛は18.9%、和牛は0.6%とともに前年度を上回ったが、前々年
度と比べると、乳牛は4.0%増、和牛では12.5%減となった。これは品種特定の
徹底等によるものである。また、前年のBSEの影響による子牛導入の遅れ等に
より、年度末にかけて和牛、乳用種めす牛を除く乳牛のと畜頭数は前々年同月を
下回って推移している。特に和牛では4ヵ月連続で前々年同月を2割程度下回っ
て推移している(図5)。

 一方、輸入量は財務省「貿易統計」によると、14年度は12.1%減と前年度を
かなり大きく下回って推移した。国別ではアメリカ産1.9%、オーストラリア産
7.9%とともに下回った。前々年度と比較すると3割以上の減少となり。輸入牛
肉の回復の遅れが目立つ。(図6)。
◇図5 和牛のと畜頭数(比)◇
◇図6 国別牛肉輸入量(比)◇


●●●進む規模拡大●●●

 4月30日に公表された農林水産省「畜産統計」によると、平成15年2月1日
現在の肉用牛の飼養戸数は98,100戸で10万戸を割る状況となった。一方、1戸
当たりの飼養頭数は過去10年間一貫して伸び続けている。

 総飼養頭数規模別に見ると、飼養戸数は全体で対前年比94.1%、階層別では「50
〜99頭」でわずかに増加したことを除いて、すべての階層で減少している。特に
「1〜2頭」、「3〜4頭」の階層で減少が大きく、「1〜2頭」の階層はかなりの
程度、「3〜4頭」の階層ではかなり大きく減少した。飼養頭数は全体で対前年比
98.9%、階層別では「200頭以上」の階層が1.0%増加したことを除いて、すべ
ての階層で減少した。特に「1〜2頭」、「3〜4頭」の階層で1割以上減少して
いる。

 全国農業地域別で見ると、飼養戸数は全国平均は対前年比94.1%、1割以上減
少したのは四国地方で、いずれの地域も減少した。飼養頭数は全国平均で対前年
比98.8%、北海道はわずかに増加、九州は前年並み、沖縄はほぼ前年並み以外は
減少となった。


●●●減少傾向続く豚の飼養戸数●●●

 4月30日に公表された農林水産省「畜産統計」によると15年2月1日現在の
豚の飼養戸数は、9,430戸(▲5.7%)と前年に比べやや減少した。

 飼養頭数については、小中規模の飼養者層を中心に減少があったものの大規模
飼養者層における規模拡大があったことから9,725千頭(1.2%)とわずかに増
加した。この結果、1戸当たりの飼養頭数は、1,031頭(7.3%)と引き続きかな
りの程度増加した(図7)。また、子取り用めす豚の飼養頭数は、929千頭(1.4%)
とわずかに増加している。

 県別に見ると、飼養戸数については、引き続き鹿児島が1位で1,020戸(▲
4.7%)、2位は茨城770戸(▲7.2%)、3位は宮崎750戸(▲7.4%)であった
(表1)。総飼養頭数についても、鹿児島が1,319千頭(2.0%)と総飼養頭数の
13.6%を占め、引き続き1位であった。また、2位は宮崎(シェア8.7%)、3
位は群馬(シェア6.7%)となった。
◇図7 豚の飼養頭数および戸数の推移◇
◇表1 県別飼養戸数(上位10県)◇


●●●どうなるメキシコとのFTA(自由貿易協定)と養豚農家●●●

 わが国でも2002年11月に初めてシンガポールとFTAを締結したが、その後
も韓国・ASEAN(東南アジア諸国連合)から締結に向けて新たな交渉が進んで
いる。メキシコとは今年10月の協定締結に向けて政府間で交渉が進められてい
るが、メキシコは対日本輸出金額のうち約1割を豚肉が占めており、メキシコ側
は豚肉をはじめ農畜産物の関税撤廃を強く主張している。

 日本の養豚農家戸数はこの10年間で約3分の1近くにまで減少。最近では家
畜排せつ物法の施行で2004年11月以降は不適切な処理には罰則が課せられるた
め、農家にとってふん尿処理施設の整備が重い負担となっている。そのような状
況下で、メキシコとの間で豚肉関税の撤廃が実現すれば今以上に安い豚肉が大量
に輸入されることになり、国内の養豚農家は大打撃を受けることになる。

 一方、日本の産業界ではメキシコとのFTA締結に期待を寄せており、国内外
ともに交渉は難航するものと思われる。

※自由貿易協定(FTA)……2国間または複数の加盟国間で締結し、加盟国間の
 関税や輸出入制限などの貿易障壁を撤廃する地域貿易協定。
 WTO上一定のルールの下に認められている。


●●●ブロイラー用ひな出荷羽数増加基調●●●

 農水省統計情報部によると、平成14年度のブロイラーひな出荷羽数は6億2
千8百万羽となり、前年度対比3.0%増となった。ブロイラー用ひな出荷羽数は
年々減少傾向であったが、1昨年は衛生問題から中国、米国からの輸入をストッ
プしたこと、また、BSEによる代替需要から国産志向の高まりにより13年ぶり
に前年を上回り、14年度の増で2年連続の増加となった。

 14年度においては、上半期はわずかな増加であったが、下半期の増加が目立っ
た。食品安全への関心が国産志向に拍車をかけている。15年度に入っても増加傾
向が続いており、農林水産省の予測では、5月、6月と増羽基調とのことであり、
1羽当たりの重量の増加と合わせて生産量が増加しており、輸入量は昨年を大幅
に下回っているものの、国産品の在庫量が大幅に上回り、もも肉、むね肉ともに
価格の低下が懸念されている(図 8)。
◇図8 鶏ひな出荷羽数の推移◇


●●●鶏肉の家計消費ふるわず●●●

 総務省が発表した平成15年3月の家計調査によると、1世帯当たりの食料支
出は99,177 円で前年に比べ3.5%減少し、景気がなかなか上向かない状況から
消費も低迷を続けている。肉類への1世帯当たりの支出は、BSEの影響で大きく
落ち込んだ昨年3月より、牛肉の支出が回復したことを反映し全体としては0.9%
の増加となった。しかし、鶏肉については金額、数量ともに昨年好調だっただけ
に減少傾向が続いており、一昨年をも下回っている。BSEの影響で生産者が増産
意欲を強めたため、国産品在庫が増加し、国産鶏肉の卸売価格はもも肉、むね肉
ともに低下しているにもかかわらず、小売価格には反映されていないのが、現状
である(図 9)。

◇図9 鶏肉の家計消費(全国1人当たり)◇


●●●14年度末輸入鶏肉在庫量大幅に下回る●●●

 14年度の鶏肉輸入量は50万トンを切る水準で推移した。13年度の55万トン
強から、9年度を下回る輸入量となった。中国からは前年度を25.5%下回り、米
国産も衛生面の問題から断続的に輸入一時停止の措置がとられたため、前年度を
大きく下回った。タイ産もやや下回りブラジル産だけが前年度をかなりの程度上
回る結果となった。年度トータルでは、14年9月以来前年度を7ヵ月連続で下
回った結果である。しかし、鶏肉調製品の輸入量は、増加傾向にあり、中国とタ
イの2カ国でほとんどを占めているものの、21万トンを上回る拡大を続けてい
る。調製品の輸入量が増加していることが、生肉需要の代替となり、市況を圧迫
している。



●●●バターの生産量、減少傾向●●●

 バターの生産量が減少傾向で推移している。3月の生産量は7千5百トン、対
前年同月比87.9%となっており、9月以降7ヵ月連続で前年を大きく下まわって
いる(14年4月〜15年3月累計では7万2千トン、対前年比86.7%)。

 主な原因としては、牛乳の消費が好調に推移していることから、バターの原料
となる生乳が牛乳用に回され、加工向けが減少していること、バター製造時に同
時に生産される脱脂粉乳の在庫が増加傾向であることから、加工向けが抑制され
ていることと考えられる。

 脱脂粉乳を原料として製造される加工乳の需要が食中毒事故以来低迷したまま
であるため、脱脂粉乳の在庫は3月末で8万1千トン、対前年同月比7.7%増と
なっている。

 メーカーも脱脂粉乳の在庫増を考えると、バターの生産を伸ばせないのが現状
であり、牛乳消費が伸びる夏場に向け、バターのひっ迫も予想される。
◇図10 バター推定期末在庫量の推移◇


●●●採卵鶏1戸当たりの飼養羽数、引き続き増加●●●


 農林水産省が公表した「畜産統計(15年2月1日調査)」によると、採卵鶏
の飼養戸数は4,340戸(▲4.2%)とやや減少した。成鶏めす飼養羽数は、小・
中規模飼養者層を中心に減少があったことから137,272千羽(▲0.3%)と前年
並みであった。1戸当たりの飼養羽数は、31,600羽(3.9%)と引き続き増加し
た(図11)。

 県別飼養羽数を見ると、上位5県は、茨城、鹿児島、愛知、千葉、北海道とな
った。また、1戸当たりの飼養羽数の上位5県は、青森、岩手、広島、山口、北
海道の順になり、特に山口については前年に比べ大幅に1戸当たりの規模が拡大
した(表2)。引き続き環境問題等から、大消費地から離れた県で規模拡大が進
む傾向がうかがわれる。

◇図11 採卵鶏の飼養羽数および戸数の推移◇
◇表2 県別1戸当たりの飼養羽数◇


●●●鶏卵価格差補てん基準価格、1キログラム当たり168円●●●

 平成15年度の鶏卵価格安定基金制度の補てん基準価格は、前年度の169円/kg
より1円値を下げ168円/kgとなった(図12)。毎年、管理・運営主体である
全農系の(社)全国鶏卵価格安定基金、全鶏連系の(社)全日本卵価安定基金が
農林水産省の承認を得て、この補てん基準価格を決定している。この制度は、標
準取引価格(全農中央鶏卵センター他、指定鶏卵販売所での総販売価格の加重平
均月額)が補てん基準価格を下回った場合、生産者等の積立金からその差額の90%
を同基金から補てんすることとし、生産者の経営の安定を図ることを目的として
いる。補てん額は表3のとおり。
(補てん基準価格ー標準取引価格)×0.9=その月の補てん単価(円未満切捨)

 なお、14年度は7回実施されている(表3)。

◇表3 標準取引価格と補てん基準価格◇
◇図12 標準取引価格と補てん基準価格◇



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