トピックス

●●●牛肉輸入量、大幅に増加●●●

 財務省の貿易統計によると、7月の牛肉輸入量(煮沸肉などを含む。)は、
前年同月比63.9%増の6万3千トンとなった。牛肉の輸入量が6万トンを超え
たのは、13年10月以来、21ヵ月ぶりのこととなる(図1)。

 生鮮・冷蔵は39.1%増の3万1千トンと大幅に増加した。8月1日から関税が
38.5%から50.0%に引き上げられることから、その前の駆け込み輸入が、7
月の輸入量を押し上げた主な要因であると思われる。

 一方、関税の緊急措置の発動が回避された冷凍でも、97.4%増の3万2千ト
ンと前年同月の2倍近い水準に達している。豪州および米国産の冷凍輸入牛肉
について関税分類別の内訳を見ると、豪州産では「その他」に区分されるトリ
ミングなどの加工用が、米国産では「ばら」の輸入が特に目立って増加してい
る(図2-1、2-2)。

 ただし、8月以降は、生鮮・冷蔵で2万トン前後、冷凍では2万トン台前半の
輸入量に落ち着くものと業界では予測している。
図1 牛肉輸入量の推移
資料:財務省「貿易統計」

図2-1 米国産牛肉の部位別輸入量
資料:財務省「貿易統計」

図2-2 豪州産牛肉の部位別輸入量
資料:財務省「貿易統計」

●●●米国産牛肉の卸売価格が上昇●●●

 15年5月以降、米国産牛肉の卸売価格の上昇が顕著となっている。輸入牛肉
の仲間相場(農畜産業振興機構調べ)を見ると、4月に2,028円/kgであった
冷蔵品のリブアイロール(ロイン)は、8月では2,355円/kgとわずか4ヵ月
で16.1%上昇した。同様の傾向は冷蔵品に限らず、冷凍品でも見られる。大
手牛丼チェーンなどが使用している冷凍品のショートプレート(ばら)では、
4月から8月までの4ヵ月で28.4%上昇した(図3)。
図3 米国産牛肉の卸売価格の推移
資料:農畜産業振興機構調べ

 こうした米国産牛肉の卸売価格の上昇は、原産地である米国での価格上昇が
主な要因と見られる。米国での肥育牛の生産者販売価格(去勢、チョイス級、
ネブラスカ州の相対取引価格)を見ると、14年後半から、と畜頭数の減少に
伴い堅調に推移していたが、15年5月にカナダでのBSE発生を機に一段と上昇
した。米国はカナダから年間50万トンの牛肉だけでなく、169万頭の肥育牛
(と場直行牛)や肥育素牛も輸入していただけに、BSEの発生を機にカナダか
らの牛肉、生体牛の輸入を停止した影響は、小さいものではない。米国は8月
から条件付きでカナダからの牛肉の輸入を再開したが、キャトルサイクルの底
で飼養頭数規模が縮小しているだけに、肥育牛価格はしばらく高水準を維持す
るものと見られている(図4)。
図4 米国の肥育牛価格の推移
資料:米国農務省
 注:ネブラスカ州の肥育牛の農家販売価格(去勢、チョイス級、1,100〜1,300ポンド)

●●●7月の冷凍豚肉輸入量、前年を更に上回る●●●

 貿易統計(財務省)によると7月の豚肉輸入量は、120,022トンとなった
(図5)。

 これは、8月1日の関税緊急措置発動を控えていたことおよびBSEによる牛
肉代替需要があったことにより113,542トンと対前年を30.6%も上回った前
年同月の輸入量をさらに5.7%上回る数字となった。

 今年度も8月1日に関税緊急措置発動が決まりかけ込み輸入によるものと思
われる。

 内訳を見ると、冷蔵品は18,495トン(▲25.4%)と前年同月よりも大幅に
落ち込んだものの、主にハム・ソーセージ等の加工品原料に向けられる、保存
の利く冷凍品は、101,523トン(14.5%)と前月を56,510トンも上回る増
加となった。
図5 豚肉の冷蔵品、冷凍品別輸入量とCIF
資料:財務省「貿易統計」

●●●6月の食肉加工品生産量のうち、ソーセージ、ベーコンはやや落ち込む●●●

 (社)日本食肉加工協会調べによる6月の食肉加工品仕向肉量は、全体で39
.668トンで、そのうち豚肉は、86.8%を占める34,444トンとなった。

 最近の食肉加工品生産量の推移をみると、13、14年度に比べ、やや落ち込
んでいるもの好調に推移しているのは、ハム類で、6月は、ハム(ロースハム、
ボンレスハム等の区分)が10,027トン、プレスハム(プレスハム、チョップ
ドハム等の区分)が2,694トンとなった。

 一方、推移が思わしくないものは、ベーコン類の5,794トンとソーセージ類
の22,925トンとなった(図6、7、8、9)。
図6 ハムの生産量の推移
図7 プレスハムの生産量の推移
図8 ベーコンの生産量の推移
図9 ソーセージの生産量の推移
資料:(社)日本食肉加工協会調べ

●●●8月からのブロイラー用ひなえ付け羽数は減少●●●

 農林水産省が公表した7月分のブロイラー用ひなふ化羽数は54,254千羽(
前年同月比1.0%)で、このうち出荷(え付け)羽数は52,737千羽(0.9%)
であった。7月上旬に聞き取ったブロイラー用の出荷計画によると、8月▲3%、
9月▲1%、10月▲6%と秋口以降は前年を下回るものと見込まれる。地域的
に見ると、北海道・東北地区は前年を上回るものの、九州では前年をかなり下
回るものと予想される。13年末以来続いてきた増産基調も、需要の頭打ちか
ら、15年に入って供給過多となっており、国産の市況の低迷により大変な問
題となっていたが、ようやく生産調整の動きが出てきたといえる。8月17日以
降の処理分につき、中国からの輸入が再開されたが、輸入が解禁されても中国
での検査体制の強化などクリアしなければならない問題があり、輸入解禁とな
って、すぐに輸入が通常化するとは考えられないため、需給の見通しがつかな
い情勢が当分続くと考えられる(図10)。
図10 鶏ひな出荷羽数の推移
資料:農水省「鶏ひなふ化羽数」

●●●中国産鶏肉の輸入再開●●●

 動物検疫所における中国産あひる肉の精密検査の結果、高病原性鳥インフル
エンザウイルス(血清亜型H5N1)が分離されたことから、中国における高病
原性鳥インフルエンザが存在すると判断し、5月12日以降中国産の家きん肉等
の輸入を一時停止していた。その後、中国家畜衛生当局からの調査報告書の提
出およびわが国の専門家による現地調査の結果により、中国国内において、9
0日間以上本病の発生がなかったこと、清浄化のための措置が講じられたこと
から、と殺日が8月17日以降の鶏肉等については輸入一時停止を解除すること
とした。鶏肉以外の家きん肉については、輸入停止措置を継続することとなっ
た。

 数量的には少ないが、15年3月3日から鳥インフルエンザにより輸入を一時
停止していたオランダ産家きん肉についても清浄性が確認できたとして、8月
12日付けで輸入停止措置を解除した。

●●●北海道の生乳生産量、増産傾向で推移●●●

 農林水産省「牛乳乳製品統計」によると、北海道の7月の生乳生産量は339,
813トン(3.2%)と13年7月以降25カ月連続で、前年同月を上回って推移し
ている(図11、12)。

 北海道では、今年冷夏となり、乳牛にとって過ごしやすい環境となったこと
が、生乳生産量が増加した大きな要因と考えられる。北海道の15年度の生乳
生産は、当初、前年の大幅増産の反動で低迷すると見られていたが、十勝を中
心に増産ペースを維持し、前年を上回って推移している。

 生乳生産を占う上で重要な粗飼料の生産においても、一番牧草の収獲は量的
には若干少なかったものの、品質はおおむね良好であった。
図11 北海道生乳生産量
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」

図12 北海道生乳生産量対前年同期比
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」

●●●ドレッシングの原料卵使用量、4年ぶりに前年を割り込む●●●

 日本農林規格(JAS)によると、マヨネーズは、ドレッシング類のうち半固
形状ドレッシングとして区分されており、卵黄又は全卵を使用し、食用植物油
脂、食酢、食塩、香辛料等を使用したものと規定されている。

 農林水産省総合食料局 食品産業振興課の資料によると、マヨネーズを含む
ドレッシング類の原料卵の消費量は、14年度は74,911トン(▲0.7%)と、
前年度をわずかに割り込み、4年ぶりに減少に転じた(図13、14)。

 一方、鶏卵の加工品であるマヨネーズと液状ドレッシング等と合わせたドレ
ッシング類全体の生産量は、14年度は392,872トン(0.3%)とわずかに増
加したものの、内訳を見るとマヨネーズ生産量は237,872トン(▲2.1%)と
わずかに減少し、液状ドレッシングは104,906トン(2.6%)とわずかに増加
している。(全国マヨネーズ協会調べより)

 消費面では、平成13年度までは、家庭における調理方法や外食メニューの
多様化等を背景に、ドレッシング類の消費は増加傾向にあったが、平成14年
度の総務省「家計調査報告」によるマヨネーズ・ドレッシングの家計消費量は、
1,486g/人(▲1.5%)と約23g減少し、消費量が停滞気味となった。

 最近の卵価低迷による生産抑制とともに一層の消費拡大が望まれる。
図13 ドレッシング原料卵使用量の推移
資料:農林水産省総合食料局 食品産業振興課

図14 マヨネーズ・ドレッシングの年間家計消費量(全国1人当たり)
資料:総務省「家計調査報告」


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