北海道/大原 睦生
北海道後志管内のほぼ中央、支笏洞爺国立公園とニセコ積丹小樽海岸国定公園が面積の13.5%を占めているという観光の町ニセコ町から真狩村へ通じる道道230号線を西へ走り、もう少しで真狩村というところに、高橋啓(ひらく)さんのオーストリッチ牧場がある。道道から牧場を見下ろすと、とにかく広い。大きな羊蹄山をバックにオーストリッチが小さく見える。ゆっくりした動きで草を食べている雌鳥、警戒するかのように首を伸ばし四方を忙しく見ている雄鳥。見ていて飽きない。各地に多く見られる草のないパドックで、配合飼料等で飼育されるオーストリッチとは異なり、ここでは一羽一羽が幸せに見える。 高橋さんに牧場の話を聞いてみた。「牧場の土壌は、粘土質だが傾斜があり、水はけは悪くないので、繁殖用放牧地約15ha、雌鳥11羽・雄鳥3羽を放牧し、若鳥は、約15haに40羽を放牧している。若鳥は林の中が好きで、成鳥は広い草地が好きだ。 広い放牧地だが、春から秋までの産卵期間中は、擬卵を置くとその場所に70〜80%は産卵するので、夕方の巡回でほとんどの卵を回収できる。また、昨年は、冬季の舎飼時に死亡した鳥がいたものの、オーストリッチは、牛より眼が良く、用心深いので放牧地での事故はなかった。 飼養管理としては、春から秋までは、放牧地の草だけで充分飼育できるが、現在の飼養羽数では6〜7月の牧草の最盛期には草が余るので、同じ牧区に牛も入れている。その時、排出される牛のふんもオーストリッチはよくついばんでいる。 放牧した若鳥は、ほぼ1年、体重約100kgくらいで出荷する。広い放牧地で運動しているせいか、赤身が多く、肉量も多いと出荷先では、好評だ。肝臓・心臓・砂肝も美味と喜ばれている。 また、オーストリッチのふんも上手に活用している。冬期の舎飼時の敷料床材に廃材のチップを使い、月に1回耕運機でローターをかけ、2年間で完熟させたものは、牛豚のたい肥と異なり、pH8.8のアルカリ性有機たい肥として西洋野菜の栽培によい。」と話している。 ここでは、羊蹄山とオーストリッチを背景に記念撮影をする観光客のために、封筒に入れたオーストリッチ用の餌を有料で販売している。オーストリッチもそれを知っていて、人が来ると近寄ってくる。このようにして、高橋さんは、昨年、えさの売上金20万円を、ニセコ町教育委員会に寄付した。「えさを買ってくれたのは大半が子供たち。子供の教育に役立てて欲しい。」と今後もえさの売上代金は全て寄付すると話している。 このように草資源を効率的に利用した低コストのオーストリッチ生産が日本各地に拡がることが期待される。
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