トピックス

●●●牛肉トレーサビリティ法、12月1日から施行●●●(ただし、16年12月までは生体のみ)

 牛肉トレーサビリティ法が12月1日から施行された。これにより、国内で生まれたすべての牛および輸入牛(輸入された直後にと畜されるものを除く)の両耳に、10桁の個体識別番号を印字した耳標の装着が義務付けられる。他の農家などへの譲渡など牛の異動に関する届出を基に、国が個体識別情報を記録・管理する体制が正式に法制の下始まった。

 この法律の正式名称は、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」。牛海綿状脳症(BSE)の国内での発生を契機に、牛肉の安全性に対する信頼確保やBSEのまん延防止対策の的確な実施を図るため、牛を個体識別番号により一元管理するとともに、生産から流通・消費の各段階において個体識別番号を正確に伝達する制度構築のために法制化されたもの。

 ひき肉などを除く牛肉(またはその容器など)への個体識別番号の表示が義務付けられる16年12月1日以降は、消費者が購入する精肉などに表示された個体識別番号をキーに、インターネットを通じて牛の生産・流通履歴を検索することが可能になる。

●●●豚肉の調整保管実施される●●●

 豚肉の卸売価格は、10月下旬以降、生産量の増加および消費の低迷等により上物と中物の価格差が80〜100円台と開き始め、その価格差がなかなか縮まらずに推移し、11月に入ると省令価格が15年度の安定基準価格である365円を下回る水準が続いた。国は、豚肉の価格回復を図るため、「豚肉価格安定緊急対策事業」として調整保管の実施を決め、当機構が、「豚肉価格安定緊急対策事業実施要綱」(平成15年11月20日付け15農畜機第941号)に基づき、11月25日より調整保管(市場等における買上げ保管)を開始した。

 この事業は、実施主体である全国連等(全国の区域をその地区とする農業協同組合連合会等)が、保管計画に基づき、保管の対象となる「省令」規格(「極上」および「上」)に格付けされた豚枝肉を市場等で買入することにより、出回り数量を減少させ、豚価の早期回復を図るものである。

 前回の調整保管は、3年前の平成12年10月末から12月中旬までの間に、保管計画数量10万5千頭に対して、東京市場などで2万7千頭弱の買い入れが行われ、調整保管実施から回復傾向を示していた。

 今回の調整保管計画数量としては、4万2千頭を予定している。

 10月の全国のと畜頭数は、1,541千頭(0.9%)と前年同月をわずかに上回っており、また、今後の出荷頭数も11月1,481千頭(1%)、12月1,531千頭(0%)とわずかに上回って見込んでおり、鍋物等の年末需要が期待されるところである。(図1)


日本の調整保管に続き、EUでも豚肉の民間在庫補助を開始

 前述のように、日本では調整保管が実施されているが、EUにおいても牛肉の消費回復等から、豚肉価格が下落している。

 このことから、欧州豚肉管理委員会は12月15日、豚肉の民間在庫に対する補助(PSA:英名Private Storage Aid)制度の発動を採択した。PSAは、12月22日から適用される。

○ 当該制度の概要

 EU15カ国の豚枝肉卸売価格(市場参考価格)が、EU規則で定められた基本価格(100キログラム当たり150.939ユーロ(約1万9,900円、1ユーロ=132円)の103%を下回り、この状態が続きそうな場合に適用され、取引業者に対し、一定期間特定の豚肉の一定量の在庫を促進するために助成金が支払われる。助成金単価はその都度決定される。

○ 最近の価格動向(原因)

 EUの豚肉市場参考価格は、2000年末及び2001年初めのEU域内でのBSE問題再燃や口蹄疫発生により2001年前半まで高値で推移したが、その後は(1)域内での牛肉消費回復(2)豚肉生産の増加(3)域外向け輸出の停滞−などにより価格は低下・低迷している。2003年11月の市場参考価格は、前年同月比2.9%安の100キログラム当たり123.6ユーロ(約1万6千円)となっている。

○ 助成単価
(単位:ユーロ/トン)

注)「ミドル」とは、ロースとベリーの一部で構成される部位

○ 一契約当たりの最小数量

  脱骨・・・・10トン
  その他・・・15トン

EUの豚枝肉卸売価格(15カ国:市場参考価格)

資料:MLC(イギリス食肉家畜委員会)「European Market Survey」




図1 豚肉の卸売価格の推移(9月〜12月)

資料:農水省「食肉流通統計」、東京食肉市場
注:直近値は速報値である。


●●●国産鶏むね肉価格、主要海外3都市に比べ低水準●●●

 11月の国産のむね肉の卸売価格(東京)は、210円/kg(1.9%)となった。むね肉の価格は、料理の種類、嗜好など違いからもも肉の価格の約3分の1程度で推移している。(図2)

図2 国産鶏肉の卸売価格(東京)および輸入むね肉の卸売価格

資料:農水省「ブロイラー卸売価格」、「食鳥市況情報」及び(社)日本食鳥協会調べ


 農林水産省が公表した「東京及び海外主要5都市における食料品の小売価格調査(平成14年11月調査)」によると、東京を100とした場合、海外主要5都市の食料総合の価格は、東京の7割程度から同水準の範囲となっているが、鶏肉(むね肉100g)については、ニューヨーク、シンガポール以外の3都市(ロンドン、パリ、ジュネーブ)で、東京より3割程度高い価格(パリ)から1.4倍以上高い価格(ジュネネーブ)となっている。

 鶏むね肉は、中国、タイなどの海外ものが、350円/kg(直近8月卸売価格:日本食鳥協会調べ)程度で販売されていることから、内外価格差を見た場合でも、国産鶏肉むね肉の安値は傾向がみてとれる。(図3)

図3 海外主要5都市における食料品の小売価格調査結果(平成14年11月)

資料:農水省「東京及び海外主要5都市における食料品の小売価格調査結果」


●●●中国産食肉加工品に対するサイクラミン酸の検査命令●●●

 厚生労働省食品安全部監視安全課は、食品衛生法に基づく「輸入食品に対する検査命令の実施について」(平成15年8月29日付け通知)をもって、従来、暫定的に自主検査指導やモニタリング検査により輸入時に検査を行っていた中国産豚肉加工品(食肉製品を含む。)等に対して、サイクラミン酸(指定外添加物)を検査項目とする検査命令を実施することとした。

 10月に入ってからのサイクラミン酸検出輸入食肉加工品の違反事例は、焼き鳥串、シュウマイ、唐揚げ製品など十数品目に及んでいる。不適格となった主な原因のほとんどは、中国では指定添加物であるサイクラミン酸が、甘味料として食肉加工品の味付け原料(醤油、ワイン)に含有していたことによる「添加物の使用状況の確認不足」等となっている。これらの品目に対する措置としては、全量廃棄、または全量保管した上で積み戻し等が指示されている。(厚生労働省、食品安全情報、輸入食品監視情報ホームページから)


●●●脱脂粉乳生産量、4カ月連続で前年同月を上回る●●●

 農林水産省が11月28日に公表した「牛乳乳製品統計」によると、10月の脱脂粉乳の生産量は、前年同月に比べて10.2%増の1万4千トンとなり、7月以降、4カ月連続で前年同月を上回った。

 生産量、輸入量、在庫量から推計した10月の推定出回り量は1万6千トンと同月の生産量を若干上回った結果、10月の推定期末在庫量は前月より1千トン減少し、8カ月ぶりに8万トン台を割り込んだ。しかし、前年同月との比較では、16.5%上回る高い水準となっており、前年同月からの増加率は5月以降徐々に拡大している。

 脱脂粉乳の生産増加の要因は、生乳生産量が、都府県での減少を北海道の増加が補う形で、前年並みを維持している中で、飲用牛乳の生産量が、夏場の天候不順などの影響もあり前年を下回って推移した結果、乳製品向けの生乳処理量が必然的に増加したことによるものである。

 脱脂粉乳を原材料の1つとして使用する乳製品の生産動向を見ると、10月の乳飲料、発酵乳の生産は、久し振りに前年同月をわずかに上回ったものの、加工乳の生産は相変わらず低迷を続けており、消費の拡大により脱脂粉乳の在庫取り崩しが進むことは考えにくい状況となっている。(図4)

図4 脱脂粉乳の生産量等の増減率(前年同月比)の推移

資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」、農林水産省牛乳乳製品課、農畜産業振興機構調べ


●●●今年度の鶏卵卸売価格(全農・東京・M)近年最安値か●●●

 再三にわたる「繰り上げとう汰、ひなえ付け羽数の抑制」の呼びかけに対し、8月のえ付け羽数7,324千羽(▲14.5%)、10月が8,632千羽(▲5.7%)と生産調整を行ったが、卵価が回復していない。(図5)

 鶏卵卸売価格(全農・東京・Mサイズ)は、11月段階の試算で15年度145円/kgとなって、11年度をピークに下落しており、近年まれにみる安値記録を更新している。(図6)

 そのような中で、農林水産省「農業物価指数」による成鶏用の配合飼料の価格(バラ)は、国際相場から10月で5万3千円/トンと上昇し、平成13年度以降、毎年2〜3%ずつ値上がりしており、生産者は、コストアップを余儀なくされている。

 成鶏用配合飼料の出荷量や鶏卵生産量の推移をみても、生産過剰とは言い切れない状況にあるものの消費不振も加わって卵価は低迷している。(図7)

図5 採卵用めすひなえ付け羽数の推移

資料:農水省「鶏ひなふ化羽数」

 

図6 鶏卵卸売価格の推移(東京・M)

資料:全農「畜産販売部情報」等

 

図7 成鶏用配合飼料の出荷量と鶏卵生産量の推移
資料:「鶏卵流通統計」及び「飼料月報」

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