新潟県は、地域特産品を目指して畜産研究センターにおいて3年かけて開発した県内初の肉用地鶏を、平成16年3月9日に開催した試食会で平山征夫新潟県知事が「にいがた地鶏」と命名し、デビューさせた。この地鶏は、新潟県固有の在来種(明治時代までに国内で成立しまたは導入され定着した品種)である「
蜀鶏
」を活用したもので、試食会に出席した消費者などの評判も「歯ごたえ十分、ジューシーでうま味がある。」と上々だった。
〈開発の経緯〜味にこだわり〜〉
現在、地鶏は全国各地で約40銘柄が生産されているが、新潟県には肉用の地鶏はなく、生産者などから開発が求められていた。一方、畜産研究センターでは従来から天然記念物の在来種「蜀鶏」の系統維持を行っていたことから、平成12年度からこれを活用した県産地鶏の開発に着手した。
開発のコンセプトは、新潟県独自の特色があり、ブロイラーとは異なるうま味、歯ごたえがあること。まず、県独自の特色を出すため、「蜀鶏」を中心に他の在来種と交配して数種類の候補鶏を作出し、その発育成績と呈味成分(アミノ酸など味を示す物質)の成績から最終候補3種類を選抜した。次に、畜産研究センター、新潟大学、県内ホテル調理師の三者で食味官能試験を行い、その結果、三者とも「蜀鶏」の雄と名古屋種の雌からできた交雑種の雄に横斑プリマスロックの雌を交配したものが最もおいしい鶏であると一致し、平成14年11月、県産地鶏の作出が完成した。その後、民間養鶏業者などの協力を得て試験生産を行ってきた。
〈県内調理師も味に太鼓判〜3月9日デビュー〜〉
「にいがた地鶏」の特徴は、味にとことんこだわったこと。一般に新しい肉用鶏を開発する場合、発育成績を考えて地鶏を組み合わせ、その後、ブロイラーと味を比較する。しかし、「にいがた地鶏」は最初から呈味成分の理化学的な数値を基に候補鶏の選抜を行い、最もおいしい組み合わせを作出した。
平成16年1月20日、司厨士協会新潟県本部の協力を得て、和、洋、中華各7人の調理師を対象に他県産有名地鶏、ブロイラーとの食味比較のモニタリングを行った。これは「にいがた地鶏」を世に出すかどうかの最終試験でもあった。その結果、総合評価では「にいがた地鶏」が最も優れているとの評価をいただいた。特に、調理法では水炊き、グリル調理、食味項目では歯ごたえ、うま味、ジューシーさの評価が高かった。この結果、「にいがた地鶏」のデビューが決定した。
平成16年3月9日、平山征夫新潟県知事や消費者ら約30人が出席の下、「にいがた地鶏」のデビューを兼ねた試食会を開催。「にいがた地鶏」の棒々鶏、水炊きなどの料理を試食した多くの出席者は「歯ごたえ十分、ジューシーでうま味がある。」と評判も上々であった。
〈今後の展望〉
デビュー以後、県内ホテル、レストラン等5カ所で試験的に「にいがた地鶏」を使った料理を提供しているが、「にいがた地鶏」を指名しての来客があるほど好評である。しかし、試験生産で生産量が少ないことから、提供品目数、食数とも限定せざるを得ず、生産拡大が当面の課題となっている。また、地域特産品とするためには厳格な品質管理が不可欠である。
今後、新規飼養者の拡大に努めるとともに、生産者、流通業者を会員とする品質管理組織を設立し、この「にいがた地鶏」の地域特産品としての普及定着を図っていきたい。
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