◎地域便り


東京都 ●「特用家畜シンポジウム」が東京で開催される

東京都/杉村 正司


 
  都道府県の担当者や各種業界の方々が参加したシンポジウム


 平成16年8月31日(火)、東京都文京区湯島の全国家電会館5階大講堂において、社団法人畜産技術協会が主催する特用家畜シンポジウム「資源循環型社会と特用家畜」が開催された。当日は、台風16号の影響から開催が危ぶまれたが、全国から184名の参加を得て盛大に開催された。

 シンポジウムは、第1部が特用家畜全体の総論、第2部が各畜種ごとの各論、第3部が総合討論という3部で構成されていた。

 第1部は、東京大学副学長の林良博氏が「特用家畜が果たすべき役割と将来展望」と題して基調講演し、多頭数飼育という効率主義がもたらすさまざまな問題、畜産を取りまく厳しい現状の中、特用家畜が「多様性の向上」と「小規模畜産業の再興」という大きな役割を担っていると訴えた。

 第2部は、信州大学唐澤教授がダチョウおよびエミューの生産と利用について、帯広畜産大学関川教授がシカ肉の特徴や養鹿産業について、宮崎大学入江教授がアヒル、ガチョウやホロホロ鳥などの家きん、水きん類の飼養、畜産物への利用について、玉川大学佐々木教授がミツバチの特徴、役割とみつ源植物について講演した。

 さらに、第2部後半では、鹿児島大学萬田名誉教授がアイガモ農法やヤギの飼養の実践を通して、有機農業での特用家畜の活用とその効果、さらにそれらがもたらす地域での広がりについて、東京大学林副学長が人と犬の関わりや馬を中心に、伴侶動物、展示動物、セラピー動物としての特用家畜の活用について講演した。

 第3部は、第2部講演者のほか、東京大学名誉教授正田陽一氏がパネラーとして加わり、冒頭「特用家畜」の定義、歴史、考察などについて発言があった。その後、各パネラーから、用畜、ふん畜、役畜、伴侶動物、教育的展示動物など、特用家畜が果たすさまざまな役割、さらには資源循環型社会の中で地域振興、環境保全など幅広い観点から特用家畜の活用、そして産業として成り立つためのマーケットの構築などについて、さまざまな考えが述べられた。参加者からは、それそれの地域での特用家畜の振興に向けた質問が寄せられ、パネラーが回答するとともに活発な議論が展開された。

 このシンポジウムには、都道府県の関係者や民間企業から多数の参加があったが、地域興しや活性化という面で、一つのきっかけになることが期待されるものであった。


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