★ 機構から


外食産業における食肉の消費構成について(その 1 )
〜平成15年度食肉消費構成実態調査事業報告書から〜

食肉生産流通部



はじめに

 本編は、財団法人外食産業総合調査研究センターに委託して実施した平成15年度食肉消費構成実態調査事業の概要を取りまとめたものである。

 本調査事業は、食肉に関する情報の収集提供業務の一環として外食産業の食肉需要実態とその変化を把握し、食肉の需給の安定に資することを目的として実施した。報告の概要を今月と来月の2回に分けて紹介する。


1.調査の目的と方法

 本年度の食肉消費構成調査では、前年度までの飲食店などの外食産業を構成する業種だけでなく、外食産業やCVSチェーン、スーパーなどの惣菜部門向けの総菜類を製造・販売している惣菜メーカー、さらに、これまで全く調査対象としてこなかったために需要実態を把握できなかったスーパーの惣菜部門を対象に加えることで、外食、中食における食肉需要動向を把握することに努めた。

 外食産業を構成する業種へのアンケート調査票は、これまで協力が得られた外食企業、集団給食企業、ホテル・旅館業、学校給食センター、病院給食施設、料理品小売業に、新たに電話帳からの抽出を加えた6,500店舗(飲食店4,500、学校500、病院500、弁当・惣菜メーカー500、小売業500)に配布し、延べ回収数926(回収率14.2%)、有効回答数906(同13.9%)から回答が得られた。

 惣菜メーカーは、経済産業省「工場通覧」および(社)日本惣菜協会の会員社500事業所・社を対象とし、延べ54事業所(同10.8%)、有効回答50事業所(同10.0%)、スーパーなどの惣菜部門は、日本スーパー年鑑から無作為に抽出した500社を対象とし、延べ47社・店舗(同9.4%)、有効回答数43社・店舗(同8.6%)を分析の対象とした。なお、アンケートの発送と回収は、平成15年10月〜11月にかけて実施した。また、調査表は、14年1月〜12月を基準に記入をお願いした。


2.外食産業の食肉需要動向

1)回答店舗の概要

(1)業種・業態別の内訳

 回答の得られた813サンプルの業種構成をみると、営業給食部門は、日本料理店が105(うちとんかつ店29、すきやき・しゃぶしゃぶ店6)、西洋料理店が107(うちステーキ店17)、中華料理・その他の東洋料理店が146(うち焼肉店23、ラーメン店34)、一般食堂が88、そば・うどん店が64、喫茶、お好み焼き店などのその他飲食店が3、ホテル・旅館が52の計565店となり、全体の69.5%を占めている。

 集団給食部門では、社員食堂が4、弁当給食(仕出し弁当を含む)が22、学校給食が81、病院給食が61の計168店(20.7%)であった。

 料飲主体部門では、割烹・料亭が7、酒場・ビヤホールが36の計43店(5.3%)、さらに、料理品小売業(持帰り弁当・惣菜店、以下省略)が37店(4.6%)であった。

 前年との比較では、営業給食部門と料理品小売業の比率が高まり、集団給食部門、料飲主体部門の比率が低下する結果となった。

図 1  回答店舗の業種内訳

(2)従業員

 全体平均でみた1店舗当たりの従業員数は合計12.7人と、前年よりも小さくなっている。また、学校給食、病院給食を除いた平均では12.8人で、前年並の従業員であった。

 業種別には、ホテル・旅館(37.1人)、社員食堂(59.1人)、弁当給食(49.1人)といった従業員数が100人以上の店舗が多く含まれる業種では、平均でも35人以上を上回っている。

 その他の業種では、日本料理店(13.7人)では従業員数が10人以上となっているが、その他の業種は10人未満となっている。特に、その他飲食店(2.3人)、料理品小売業(4.4人)は個人生業店が多いことから5人未満と小さい。

図 2  業種別平均従業員数

(3)売上高

 平成14年の年間販売額は、全体平均では8,453万円と連続して前年より小さな値(25%減)となっている。業種別にみると、本年度調査では社員食堂(3億9,576万円)が最も販売額が大きく、次いでホテル・旅館(3億8,390万円)、弁当給食2億9,945万円)となっている。それ以外で年間販売額が1億円を超す業種はみられず、日本料理店(7,276万円)、中華料理・その他東洋料理店(5,983万円)の2業種が5,000万円以上であるが、その他はいずれも5,000万円以下と小さい。前年との比較では、中華料理・その他東洋料理店(157万円増)と社員食堂(7,376万円増)、料理品小売業(243万円増)では前年の販売額を上回ったが、その他はいずれも前年を下回る販売額となった。

 また、平均客単価(利用者1人当たりの平均消費額)は、ランチタイムが全体平均は1,124円と、前年(1,103円)より幾分高い結果となったが、ディナータイムは、全体平均では2,690円と3年連続して低い結果となった。

図 3  店舗当たり年間販売額の推移

(4)メニュー数と食肉メニュー

 調査対象が提供しているメニュー数(デザートを除き、シーズンメニューを含む)は、学校給食、病院給食を含めた全体平均で88.4種類、学校給食、病院給食を除いた場合には、全体平均で55.1種類と前回調査(58.2種類)と同程度となった。これに、食肉類を使用したメニューが、どの程度含まれているかをみると、全体平均では37.3種類となり、総メニュー数に占める比率は42.2%であった。学校給食、病院給食を除いた平均では20.2種類(36.7%)となっている。

 また、調理済み食材を利用したメニューの品揃え状況をみると、全体平均では8.1種類(メニュー全体に占める比率9.2%)であり、学校給食、病院給食を除いた場合には4.7種類(同8.5%)と、前回調査より依存度が低下した。

図 4  店舗当たり食肉メニュー数の推移

2)食肉類の需要動向

(1)食材率

 食材率(年間販売額に占める食材仕入額の比率)と食材仕入額に占める食肉類の比率をみると、食材率は33.0%となり、前年よりも0.4ポイント高い結果となった。また、食材費に占める食肉類仕入額の20%前後で推移しており、本年度調査では21.4%となった。

図 5  食材率と食材に占める食肉比率の推移

(2)食肉類の仕入状況

 平成14年における調査対象店舗の牛肉仕入店舗は、全体の73.1%と、BSEの影響から牛肉仕入店舗比率が低下した13年(72.0%)よりは幾分高まってはいるが、牛肉需要が拡大基調であった12年(78.1%)の水準までは回復していない。

 豚肉は全体の83.8%が「仕入れた」と回答しているが、傾向的には仕入店舗比率が幾分低下する傾向となっており、鶏肉も平成13、14年よりも低下し82.1%となった。

図 6  食肉類の仕入店舗比率の推移

(3)平均仕入量と国産・輸入の利用実態

 食肉類の仕入が認められた店舗当たりの年間仕入量は、牛肉1,536kg(前年調査1,330kg)、豚肉2,044kg(同1,840kg)、鶏肉1,787kg(同1,692kg)の合計で5,367kg(同4,862kg)となった。このうち牛肉が仕入量全体の28.6%(同27.4%)、豚肉が38.1%(同37.8%)、鶏肉が33.3%(同34.8%)と牛肉、豚肉の仕入量がそれぞれ前年から高い伸びを示した結果、相対的に鶏肉のシェアは低下した。

 次に、それぞれの原産国別の内訳をみると、牛肉の原産国別内訳では、国産33.0%、米国産24.9%、オーストラリア産17.9%、不明10.2%、国産・輸入判別不明14.0%、豚肉は国産46.9%、米国産11.7%、デンマーク産7.4%、カナダ産4.7%、不明9.1%、国産・輸入判別不明20.3%であり、鶏肉は国産42.5%、ブラジル産15.2%、中国産4.3%、タイ産3.6%、米国産2.9%、不明4.2%、国産・輸入判別不明27.3%であった。

 
図 7 − 1  牛肉の原産国

 
図 7 − 2  豚肉の原産国

 
図 7 − 3  鶏肉の原産国

(4)最近の仕入動向と要因

 平成14年の食肉類の仕入量の動向を整理すると、「増加した」との回答比率は牛肉、豚肉、鶏肉ともに国産より輸入の方で高くなっており、輸入食肉への依存度が高まったことを示している。

 逆に、「減少した」との回答比率は、BSEの影響が改善する傾向にあるものの、12年の水準までの回復が見られないことを反映して、国産、輸入牛肉ともに24%台の比率を示した。

図 8  平成14年の仕入動向

 そこで、仕入量が「減少した」要因をみてみると、「売上高の低迷」、「牛肉メニュー数の減少」、さらに「客の牛肉離れ」、との回答が目立っており、国産牛肉のBSE問題が沈静化しても、牛肉離れした消費者が戻りきらない状況を示唆している。

 また、今後2〜3年後の見通しについては、調査時点が国内あるいは諸外国の「鳥インフルエンザ」が発生する以前(平成15年10月〜11月)であったこともあり、牛肉より豚肉、豚肉より鶏肉が「増加する」との見方が多かった。

      単位:%        図 9  今後2から3年後の見通し

 逆に、牛肉は調査時点が米国でのBSE牛が発見される以前にもかかわらず、豚肉や鶏肉よりも「増加する」との見通しが小さい値となっており、外食店舗の中には、今後とも一部の消費者は引き続き牛肉から距離をおくとみていることを示している。


3.弁当・惣菜メーカーの食肉需要動向

1)回答事業所の概要

 本年度調査では、平成11年度に引き続き弁当・惣菜メーカーの食肉需要動向を調査した。有効回答数は50事業所で、その94.3%が株式会社からの回答であり、有限、合名会社は従業員規模が1〜49人規模の4事業所だけであった。

 従業員数は、正社員38.6人、パート・アルバイト121.3人の計159.9人であり、前回調査(平成11年度)とほぼ同人数(163.3人)であった。また、この分野の特徴として従業員全体に占めるパート従業員の比率が75.8%(前回調査74.2%)と高いことが指摘できる。

図10 弁当・惣菜メーカーの従業員数

 また、営業状況を整理すると、1日の操業時間は平均12.9時間(前回調査13.1時間)と長く、年間操業日数は336.2日(同324.6日)と月に2.4日しか休みを設定しておらず、年間出荷額は32億4,210万円(同17億2,200万円)であった。

 次に、年間出荷額に占める原材料比率をみると49.0%(前回調査51.6%)と、一般の食料品製造業より低く、原材料比率のうちの食肉比率は12.3%(前回調査18.8%)と前回調査よりも低くなっている。

 また、生産した弁当、惣菜類の販売先は、29.4%がスーパー、25.7%がコンビニへの販売となっており、前回調査よりコンビニへの販売が拡大している。その他には、製パン業、惣菜メーカーなどのその他への販売が19.2%、直営店舗での販売が11.6%、外食企業への販売が10.9%であった。

図11 弁当、惣菜類の販売先

2)製造品目

 製造している弁当、惣菜のメニュー数は、弁当類が59.8種類、惣菜類は99.2種類の計159.0種類と、前回調査よりも1.5倍に増加している。このうち食肉類を使用したメニュー数は、弁当類で30.4種類(全体に占める比率21.5%)、惣菜類では25.4種類(同20.6%)と、前回調査よりも増加している。

図12 製造メニュー総数と食肉メニュー数

3)食肉類の需要動向

(1)仕入の有無と部位別


 回答の得られた50事業所について、平成14年(1〜12月)における食肉類の仕入れの有無をみると、牛肉は60.0%、豚肉80.0%、鶏肉は74.0%の事業者が仕入れていた。

 仕入形態は、牛肉は72.2%、豚肉は67.2%、鶏肉では69.7%を生鮮・冷凍形態で仕入れ、残りは加工品形態であった。

 また、使用している部位は、牛肉ではバラ、ひき肉、モモが、豚肉ではバラ、ひき肉、ロースが多く、鶏肉になると、モモ、ムネ肉といった正肉の利用が多い。

図13 食肉類の仕入事業所比率

(2)食肉類の需要量

 食肉類の仕入が認められた事業所当たりの年間仕入量は、牛肉174.4トン(平成11年度調査147.0トン)、豚肉240.4トン(同157.5トン)、鶏肉280.2トン(同311.4トン)と、鶏肉の需要量が最も多く、次いで豚肉となっている。

 次に、それぞれの原産国別の内訳をみると、牛肉の原産国別内訳では、米国産が37.9%、豪州産が20.1%を占め、国産はわずか1.7%にとどまっている。豚肉になると国産が50.4%を占め、次いで米国産が15.9%なっており、鶏肉は国産(21.8%)、ブラジル産(18.2%)、中国産(24.0%)、タイ産(27.3%)と原産国が分散している。

図14− 1  牛肉の原産国

 
図14− 2  豚肉の原産国

 
図14− 3  鶏肉の原産国

 
図15 食肉類の仕入動向

 
図16 今後の需要見通し

 また、平成13年と比較した14年の仕入動向は、牛肉は国産、輸入とも「減少した」が「増加した」を上回った。豚肉は国産では「増加した」と「減少した」が同じ比率であったが、輸入では「増加した」が上回っている。鶏肉になると、国産、輸入とも「増加した」と「減少した」が同じ比率であった。

 さらに、「増加した」を国産と輸入で比較すると、牛肉と鶏肉は国産より輸入の比率の方が高く、豚肉は国産の方が高い比率を示した。

 さらに、今後2年から3年後の需要見通しについては、需要の大きさと同様に鶏肉、豚肉、牛肉の順番で「増える」との回答比率が多く、鶏肉と豚肉を主体とした需要構成が続くものと予想される。


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