2000年秋、鳥取県畜産農協と京都生協との牛肉(コープ鳥取牛)の産直が20周年を迎えた。それを機に、「従来の産直にあぐらをかかず、21世紀へ新たな挑戦をしよう」ということで生まれたのが、新産直牛である。現在は、京都の消費者の皆さんから「こだわり鳥取牛」とネーミングを頂いている。
この牛のコンセプトは5点。健康、エコロジー循環、国産、安全、低価格である。生産者だけでなく、「消費者・生産者双方で創ろう」と、共同して取り組んだ。
健康という点では、サシより赤身重視で、消費者の食肉への価値観も変えて頂く。循環では、生協のPB商品であるとうふや油あげ、おからなどから産出される食品副産物を紹介して頂く。その原材料の安全性の確認などについて双方で取り組む。現在は当たり前となったが、安全面では、県内の酪農家から生まれた牛に限定し、病歴、動物医薬品の投与の制限、エサの給与、飼養期間などのトレーサビリティの徹底に取り組む。
そして、一番の特徴が、エサである。有限な資源の再利用のため、TMRでの食品副産物の利用を柱とする一方、稲発酵粗飼料も大きな柱としてきた。エサの国産化や自給粗飼料の利用にこだわる。たい肥を水田へ還元し、牛・草・たい肥の循環を促進する。さらには耕作放棄水田・転作田の利用による環境保全や耕畜連携を強化する。循環型農畜産業を生・消双方が大切にしながら、牛肉づくりを行う、というものであった。
2001年5月から、ホルスタイン肥育に着手し、若令肥育12ヶ月で出荷。京都で百数十名の消費者に集まって頂きデビューして以来、毎月10頭づつ出荷している。
この取り組みを通じて、農協管内での稲発酵粗飼料の作付は、2001年20haから、2003年には85haと、倍々ゲームで増加。今年も95haとなる。産直の取り組みにより、大胆な作付ができ、地域の水田利用や振興にもつながっている。
さらに、月1回の京都の店舗での店頭販売と交流に加え、飼料稲の田植えと稲刈りの時には、生協組合員の鳥取牛サポーターや畜産担当の職員に、鳥取の現地に来ていただき、交流を深めている。
低価格(枝肉キロ600円)という大胆な目標設定したため、現在はわずか月10頭出荷だが、あくまで、農畜産業のあり方を問う「百年計画」として取り組んだ「こだわり鳥取牛」である。BSEの発生や現在の水田農業の実態を踏まえれば、方向性は正しいと思う。
名前のとおり、「こだわり」をもち、大切にすることが、稲発酵粗飼料の生産や耕畜連携に着実につながる。そして、農業ばかりでなく、これからの環境政策の中でも、牛の力は、ますます復権していくものと期待している。
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こだわり鳥取牛のエサとなる飼料稲の田植えを行う京都生協の組合員・職員の皆さん |
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京都生協店舗での「こだわり鳥取牛」の試食販売の様子 |
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