高病原性鳥インフルエンザおよびBSEの発生は、社会的、経済的な影響が極めて大きく、食の安全・安心を確保する上でも、防疫対策、まん延防止対策、原因究明対策、風評対策を講ずるに当たって緊急的かつ機動的、効果的に実施することが肝要である。
特に、鳥インフルエンザについては、伝播性が極めて高いことから初期の迅速、機動的な防疫対策、まん延防止対策などについて大きな課題を提起されたところである。
このような状況の下、中国四国管内各県が危機管理意識の高揚と危機管理体制の早期確立を図り、食の安全・安心の確保に資するため、シンポジウムが7月13日に岡山市立市民文化ホールにおいて中国四国農政局主催で開催された。
県行政機関、関係団体、関係業界、生産者など約530名の参加があった。
概要は以下のとおり
パネルディスカッション
コーディネーター:鳥取大学家畜微生物学教授 大槻公一
パネリスト:農林水産省消費・安全局衛生管理課 小倉総括課長補佐
京都府農林水産部畜産課 地脇畜産課長
山口県農林水産部畜産課 西村畜産課長
広島県農林水産部畜産振興室 積山畜産振興室長
講演内容
(1)基調講演では、4人の講師が家畜伝染病発生時の行政の対応および生産農家の危機管理体制の確立など食の安全・安心を確保することを前提とした講演が行われた。
農林水産省消費・安全局衛生管理課小倉総括課長補佐は、高病原性鳥インフルエンザの発生経緯、感染経路の究明、行政の対応などを説明した後、家畜伝性病予防法の改正を説明した。
京都府農林水産部畜産課地脇畜産課長および山口県農林水産部畜産課西村畜産課長は、平成16年1月、2月に相次いで鳥インフルエンザが発生、(山口県:1月 京都府:2月)発生から終息までの一連の対応を報告した。
特に、京都府は、匿名の電話で発覚した事例から、「素早い対応には、発生農家からの速やかな届けが不可欠であり、発生農家への十分な経営支援策を充実し、報告を促す必要がある」と強調した。
広島県農林水産部畜産振興室積山畜産振興室長は、中国四国管内では平成15年11月に広島県福山市で牛海綿状脳症(BSE)が発生し、一連の対応を報告した。また、「感染が疑われる牛が大量に出た場合の隔離場所がないなど危機管理体制の充実化を図るなどの課題が残る」と指摘した。
(2)パネルディスカッションでは、鳥取大学家畜微生物学教授大槻公一氏をコーディネーターに、基調講演した4氏がディスカッションを行った。
鳥インフルエンザ発生時の行政対応、情報の整理などについて、幅広く意見、情報交換を行った。
BSE関連では、「感染牛の疑いがある牛が増加した場合、処分場が不足している」との指摘がなされた。この意見に対して、農林水産省小倉課長補佐は「各県に処分場を設置するのは、困難である。従って、広域的な協力体制を検討していきたい」と回答した。
最後に、大槻教授が「鳥インフルエンザは日本だけの問題ではなく、発生した各国が協力して対応を研究すべきである」とまとめた。
|