15年度の概況

　平成15年度の加工乳・乳飲料等の生産量を前年度と比べると、加工乳は対前年度比20.3％減少したものの、乳飲料は対前年度比5.3％の増加となった。乳飲料の内訳をみると、消費者のし好の変化や新商品の発売によって、乳飲料では、色物乳飲料のコーヒータイプと白物乳飲料の生産量が増加している。企業区分別にみると、農協プラント系（以下「農プラ系」という。）では、加工乳、乳飲料ともに減少しているものの、中小系では増加、大手3社では加工乳は減少、乳飲料は増加した。

　はっ酵乳の生産量は、健康志向に支えられて全体では7.0％の微増となった。

１．生産シェア

（1）加工乳・乳飲料

　加工乳では大手３社の生産シェアが低くなっており、農プラ系、中小系のシェアを下回っている。一方、色物乳飲料と白物乳飲料では大手３社のシェアが高く、50％を超えている。（図１）

図1　加工乳・乳飲料の生産シェア（平成15年度）

注１：本調査で企業区分は次のとおりとする。大手３社は明治乳業、森永乳業、日本ミルクコミュニティをいう。農プラ系は、主に酪農生産団体が出資する乳業会社、中小系は大手３社・農プラ系を除くその他の乳業会社をいう。 注２：乳飲料には大きく分けると牛乳をベースとして牛乳の栄養分や風味をそのままに、カルシウムや鉄、ビタミンやミネラルなどの栄養分を強化した白い乳飲料（白物乳飲料）と、コーヒーや果汁などの入った色のついているもの（色物乳飲料）がある。

（2）はっ酵乳

　はっ酵乳全体の生産シェアは乳業系が78.4％となっており、非乳業系のシェアは21.6％と低い。「プレーン」は乳業系のシェアが90％を超えており、「ドリンク」は非乳業系のシェアが37.0％とほかの種類に比べ比較的高くなっている。（図２）

図2 はっ酵乳の生産シェア（平成15年度）

注３：本調査で、乳業系・非乳業系に区分する場合、乳業系は牛乳処理場を持っている会社、非乳業系は牛乳処理場を持っていない会社とする。 注４：はっ酵乳の区分は次のとおりとする。「ハード」は寒天やゼラチンなどで固形化したもの、「ソフト」は果肉などを加えた流動性のあるもの、「プレーン」は牛乳・乳製品をはっ酵させたもの、「ドリンク」はプレーンヨーグルトを液状化したもの、「フローズン等」はフローズンヨーグルトや上記以外のもの。

（3）生クリーム等

　生クリーム等全体の生産シェアでは乳業系が80％以上を占め、非乳業系のシェアは低いが、乳脂肪18％未満では、非乳業系の生産シェアが50.6％と高くなっている。（図３）

図3 生クリーム等の生産シェア（平成15年度）

２．成分

（1）加工乳

　「低脂肪」タイプは、乳脂肪率が0.9％〜1.0％、無脂乳固形分率は9.5％〜10.0％に集中している。「濃厚」タイプは、乳脂肪率4.1〜4.3％、無脂乳固形分率8.6％〜9.0％に集中している。「その他」（「低脂肪」「濃厚」タイプ以外のもの）では無脂乳固形分率は8.4％〜8.5%に集中しているが、乳脂肪率はバラツキがみられる。（図４）

図4 加工乳の成分（平成15年度）

（2）乳飲料

　成分を比較すると、「色物乳飲料」より「白物乳飲料」の乳脂肪率が高く、無脂乳固形分率についても同様の傾向がみられる。

   「白物乳飲料」の乳脂肪率は1.7％〜2.5％、無脂乳固形分率は8.7％〜9.2％となっている。企業区分別に比較すると、大手３社の「加工乳（平均）」の乳脂肪率は、「白物乳飲料」と比べて高くなっている。また、中小系では「白物乳飲料」の乳脂肪率が「加工乳（平均）」より高くなっている。（図5）

図5　白物乳飲料と加工乳（平均）の成分（平成15年度）

３．乳脂肪率ごとの生産量

（1）加工乳

　乳脂肪率ごとに生産量をみると、「低脂肪」タイプの製品が全体の65.4％を占めている。企業区分別にみると大手３社以外は「低脂肪」タイプの製品が多くなっている。（図６）


　なお、原材料の使用割合では、生乳が33.8％となっており、企業区分別にみると大手3社が43.5％と最も高くなっている。

　加工乳は大手3社の生産量が大きく減少し、中小系の生産量が増えたが全体的には減少傾向にある。特に「濃厚」タイプの生産量の減少は、「製造品目の減少」や「牛乳への移行」のために、今後も減少するとの見方が支配的である。

図6　乳脂肪率ごとの生産量（加工乳）

（2）乳飲料

　乳飲料全体では、乳脂肪率0.5〜1.0％の割合が高く、同乳脂肪割合は「色物乳飲料」についても全体の半分以上を占めている。

　「白物乳飲料」は乳脂肪率1.5〜2.0％の生産量が多いが、企業区分別にみると、中小系では3.0〜3.5％の製品が多くなっている。（図７）

　乳飲料全体の原材料使用割合をみると、生乳は13.7％となっている。

　乳飲料の生産量は「色物乳飲料」のコーヒータイプと「白物乳飲料」の生産量が前年度に比べ増加している。生産見通しについては「製造を中止」したり、「他飲料にシフト」したが、「新商品の販売」や「製品のリニューアル」により、生産量は横ばいとの見方が主流である。

図7　乳脂肪率ごとの生産量（白物乳飲料）

（3）はっ酵乳

　乳脂肪率ごとの生産量では、3.0〜3.5％の製品が全体の32.7％と最も多いが、非乳業系だけでは0.5％未満の製品が大半を占めている。タイプ別にみると「ドリンク」の乳脂肪率は0.5〜1.0％、「プレーン」は3.0〜3.5％に集中している。（図８）

図8　乳脂肪率ごとの生産量（はっ酵乳）

　はっ酵乳の生産量は、ほぼ前年度並みである。「新商品の発売」の増加要因があるものの、「消費者のし好の変化」で減少傾向の製品もみられる。このため、はっ酵乳全体では横ばいで推移していくものとの見方が強い。

（4）生クリーム等

　乳脂肪率ごとの生産量をみると、乳脂肪率18％以上では、42.0〜48.0％の割合が一番高い。そのうちの大半は、「業務用」である。（図９）

図9　乳脂肪率ごとの生産量（生クリーム等乳脂肪18％以上）

　生クリーム等については、「低脂肪牛乳の生産動向の影響」を受けやすいものの、「市場の成熟化」により、大きな変動要因がみられないため横ばいの状態が続くという見方が多い。