青森県/阿保 洋一
本県には100カ所の公共牧場があり、夏山冬里方式による肉用子牛の生産が展開されているが、近年、放牧利用頭数が年々減少しており、公共牧場の経営が厳しさを増している状況にある。そこで公共牧場の活性化や耕作放棄地などの放牧利用を推進し、肉用牛生産振興に資することが緊急の課題となっている。 このような中で、去る3月8日に青森市内において、県と青森県草地畜産協会の共催により「青森県公共牧場等管理技術研修会」を開催し、県内はもちろん、県外の行政機関、普及員を含め公共牧場管理者など、約90名が参加した。 本研修会では、毎年預託頭数が増加傾向にある優良牧場の事例として、岩手県胆沢町営公共牧野が豪雪の中という厳しい状況の下で実践されている冬季預託状況について、その現場での活動が詳細に報告された。この取り組みは、今後の本県の公共牧場の在り方が示唆される貴重な発表であった。 また、県内ではまだ少ない耕作放棄地での放牧利用の取り組みについて、(独)東北農業研究センターから放牧開始に必要な資材や草地化の手順、放牧牛の馴致方法、また、牛舎内飼養とのコスト比較などの紹介があった。 次いで、県畜産試験場から、利用率が低下している公共牧場の利用拡大の一つの方法として、粗放的な放牧利用の提案があり、その草地管理技術についての説明がなされた。また、県家畜市場からは、放牧子牛の市場評価の向上対策について、今後の取り組み状況について説明があった。 平成14年度に県市場が購買者に対して行ったアンケート調査結果によると、放牧子牛を積極的に購入したいとする声が多かったことや、市場上場牛の取引結果からも、放牧子牛の平均体重および平均取引価格が舎飼育成方式と比較してそん色がないことが判明した。このことから、平成17年の4月子牛市場から、市場名簿に放牧を経験した牛であることを明示して上場するという新しい取り組みが決定されている。これにより放牧子牛がPRされ、今後は購買者が希望する放牧を活用した子牛の生産頭数が増加することが期待されている。 事例発表後の意見交換会では、公共牧場と耕作放棄地の放牧利用の役割分担についての考え方や、市場名簿への放牧子牛記載方法のマニュアルなどについて活発な議論が展開され、今後の放牧利用の活性化に向け、関係者が一丸となって取り組むこととして締めくくった。
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