トピックス

●●●日メキシコ経済連携協定に基づく平成17年度の関税割当の公表について●●●

  4月1日、農林水産省は、日本メキシコ経済連携協定(EPA)に基づく、平成17年度の食肉などの関税割当数量(特恵枠)などを下表のとおり公表した。

 なお、特恵枠内の輸入数量は、関税の緊急措置(SG)、特別セーフガード(SSG)の対象とはならない。

表1 日墨EPAに基づく平成17年度関税割当数量等

 

●●●牛タン、中南米を中心とした輸入が増加●●●

  米国のBSE発生に伴う輸入一時停止措置により、米国産への依存度が高かった牛タンの需給にも大きな影響が出ているが、米国産の在庫も底をつき、品薄感がさらに強まっているため、従来からの主要輸入国である豪州やニュージーランドの以外の国からの輸入も急増している。

  「貿易統計」の平成16年の冷凍牛タンの輸入量を見ると、全体では、前年の3分の1程度の輸入量となっている。しかし、国別で見ると、豪州が前年と比較して4.1%増、ニュージーランドが26.5%増と前年を上回っている。さらにシェアは少ないものの、チリやニカラグアからの輸入量も前年を大幅に上回り、15年には実績のなかったコスタリカなど、中南米を中心とした国からの輸入も増加している。
また、新たな輸入国としては、メキシコ、中国からの輸入も見られる。(表2)

表2 冷凍牛タンの国別輸入量
資料:財務省「貿易統計」

 

●●●16年度子牛市場取引状況●●●

 当機構の17年3月の「月別肉用子牛取引情報」(月報)によると、全国の17年度の肉用子牛の黒毛和種の取引成立頭数(雄雌合計)は357,992頭(前年度比▲2.4%)、平均取引価格(雄雌平均)は459千円/頭(同10.6%)となり、取引頭数は2年連続で前年度を下回ったが、取引価格は3年連続で前年度を上回った。

 取引成立頭数の一番多い都道府県は、鹿児島県の79,043頭(前年度比▲1.2%)、第2位が宮崎県で61,709頭(同▲4.5%)、第3が沖縄県で25,244頭(同▲0.3%)となった(図2)。

 一方、取引頭数の減少から、黒毛和種の主要生産地の平均取引価格(雄雌平均)は前年度をかなり上回り、鹿児島県が前年度比11.9%(461千円/頭)、宮崎県が9.5%(474千円/頭)と高値で推移している。特に沖縄県の前年度比の上昇率は、3年連続で全国平均のそれを上回り12.9%(402千円/頭)となった(図3)。

 肉用子牛の取引価格の上昇は、肉専用種繁殖雌牛の飼養頭数が微減傾向で推移していることに加えて、米国のBSE発生に伴う輸入一時停止措置による国産志向の高まりから肉専用種子牛の需要が高まっていることなどが大きく影響しているものと思われる。

図2 黒毛和種子牛取引成立頭数(平成16年度)
(単位:千トン)
資料:農畜産業振興機構調べ

図3 黒毛和種子牛取引平均価格前年度比
資料:農畜産業振興機構調べ

 


●●●食肉中央卸売市場での取引頭数が微減●●●

 豚肉は、卸売市場法に基づき開設されている10の中央卸売市場(仙台、さいたま、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島及び福岡)と地方卸売市場のうち、19の指定市場において上場取引されている。

 16年の豚肉のと畜頭数は、速報値で、1,657万8千頭となり15年に比べ18万2千頭増加した。と畜頭数は14年までは前年を下回っていたものの、2年連続して増加している。

 一方、16年の中央と指定市場別の取引頭数をみると、中央卸売市場での取引頭数は、96万8千頭で前年に比べ3.2%減少し、指定市場での取引頭数は128万1千頭で前年に比べ0.2%減少した。

 中央卸売市場の取引頭数と全国のと畜頭数に占める中央卸売市場取引頭数の割合の推移(図4)をみると、16年の全国のと畜頭数に占める中央卸売市場取引頭数の割合は、5.8%となり、前年0.3ポイント低下した。

 近年、中央卸売市場での取引数量が減少してきているが、この主な要因としては、地方の生産者の飼養規模拡大が進むとともに、地方の食肉センターの整備に伴い、部分肉取引が拡大していることなどが挙げられる。

図4 中央卸売市場の取引頭数と全国と畜頭数に占める割合
資料:畜産物流統計、食肉流通統計

 

●●●国産冷蔵品のうで、ももなどのすそもの価格上昇●●●

 2 月の国産豚肉の仲間相場は、冷蔵品で1キログラム当たりロース941円(前年同月比6.3%減)、ヒレ1,079円(同1.3%減)、うで504円(同3.3%増)、もも538円(同4.1%増)となった。

 直近の価格の傾向をみると国産冷蔵品ロース、ヒレなどの高級部位が2ヵ月連続で前年同月を下回り、うで、ももなどのすそものが1年を通して前年同月を上回って推移している。

 14年度の平均価格を100とした最近の国産冷蔵品のロース、うで、ももの仲間相場の動きをみると、15年度はそれぞれが前年に対しほぼ同様な比率で増減していたが、16年2月以降は、うで、ももが14年に比べ高水準になる傾向が強く、ロースは、14年の水準を下回る傾向にあった。(図5)

 これは、15年末からの卸売価格の上昇により、テーブルミートとして、単価の安いうで、ももなどの「切り落とし肉」に人気が出てきたこと、また、ロースの輸入品在庫が高い水準にあるためと推察される。

図5 国産豚肉の部位別仲間相場の推移(平成14年度平均を100とする)
資料:農畜産業振興機構調べ

 

●●●ブラジル産鶏肉の輸入数量および価格の変化●●●

 昨年1月、国内外で鳥インフルエンザが発生し、鶏肉の輸入主要国である中国、タイ、米国などからの鶏肉輸入が一時停止され、ほぼ1年が経過した。

  この間、米国産鶏肉については、平成16年10月に輸入停止措置が解除(コネチカット州およびニュージャージー州を除く)されたものの、依然、タイからの鶏肉輸入停止が継続されている。このため、(1)鶏肉調製品の輸入拡大、(2)ブラジル産鶏肉への一極集中という大きな変化が見られた。

  そのような中、ブラジル産の鶏肉の輸入量の推移をみてみると、16年2月以降輸入量全体の約9割を占めることとなり、2万5千トンをベースに前年同月を大きく上回る月が続き、16年11月から17年1月の需要期には毎月3万トン前後の数量が輸入された。(図6-1、6-2)

  ブラジル産鶏肉は、従来のタイ、中国産の代替品として加工向けのもも正肉(B.L.)、もも角切肉(B.L.K)の流通形態が多いといわれており、(社)日本食鳥協会調べによる輸入鶏肉の卸売価格は、もも正肉、切り身(ムネ肉もも肉を特定しない唐揚げ用などの角切り肉)は、鳥インフルエンザ発生前には、1キログラム当たり380円であったものが、輸入が集中した16年2、3月は517円と高騰し、輸入量が2万5千トンをベースに安定して輸入されるようになると460〜480円程度で推移した。(図7)

図6-1 15年の鶏肉国別輸入割合
  図6-2 16年の鶏肉国別輸入割合
 

図7 ブラジル産鶏肉の価格
資料:(社)日本食鳥協会調べ


 

●●●国産チーズ対策、大幅に拡充●●●

 17年度の畜産物価格・関連対策のうち、国産チーズ対策については、大幅に拡充されることとなった。

 これまで、チーズ向け生乳の奨励金は、「酪農安定特別対策事業」において、12年度の取引実績数量(16年度2.9円/キログラム)と、13年度以降の増加分(同5.9円/キログラム)に対し交付されていた。現在、国内のチーズ供給量のうち9割が輸入品で占められており、国産チーズは1割にとどまっているが、内外価格差が比較的小さく、価格面での国際競争の余地があり、国産チーズの需要拡大を推進することから事業の見直しが行われ、大幅な拡充となった。

 17年度は「生乳需要拡大奨励事業」(組替新規)において、奨励金交付対象数量は当該年度の実績数量から基準数量を減じた数量とし、奨励金単価については加工原料乳並みの10円/キログラムとなった。また、当該年度の実績数量が前年度の実績数量を超えた数量については、12円/キログラムとなった。(図8参照)

 この対策を行うことにより、国産チーズの需要拡大を図り、生乳の新しい需要先として確保されることから、近年、問題となっている脱脂粉乳の過剰在庫の積み増し防止につながると期待される。

 また、チーズ生産拡充に対応するため、乳業工場の受け入れ体制の整備が必要なことから、「乳業再編整備等対策事業」を見直し、工場新設の要件として、既存施設の廃棄を 3工場以上としていたが、ナチュラルチーズ工場に限り2工場以上と採択要件が変更される予定である。

図8 チーズ対策の見直しについて

 

●●●16年の鶏卵の特売実施率、平年とかわらず●●●

 鶏卵の卸売価格(全農・東京・M)は3月で11カ月連続前年同月を上回って推移しており、10月以降、200円台を大幅に上回る高水準で推移している。(図9)

 16年度(4〜2月まで)の鶏卵の全国1人当たりの家計消費を金額ベースで見ると、9月以降前年同月を上回って推移しており、特に1月以降は前年同月を大幅に上回っている。一方、数量ベースでは前年同月を上回ったのは10月のみで、各月とも前年同月を下回って推移し、特に2月は、1人当たり737グラムとかなり低水準になった。従って、1人当たりの消費単価は、15年度は100グラム当たり24円であるのに対し、16年度(4〜2月まで)では27円と単価が上がっている。

 このような中、「主要食料品の小売価格等の見通し」による量販店での鶏卵の特売実施率(表1)を見ると、14年平均では16.2%、15年は15.3%、16年は17.7%となっており、小売価格が高水準であっても、特売実施が控えられたいうことはなかった。このことは、鶏卵が単価は高くとも量販店の「目玉商品」として取り扱われていたものと推察される。

図9 最近の鶏卵価格(東京/M)の推移
資料:全農「畜産販売部情報」

表1 量販店における鶏卵の特売実施率
資料:農林水産省 消費安全局 消費・安全政策課「主要食品の小売価格等の見通し」より

 

●●●4〜6月期配合飼料価格、引き上げ●●●

 全農は3月14日、4〜6月期の配合飼料供給価格を、トウモロコシ、大豆かすの値上がり、外国為替の円安により全国全畜種総平均トン当たり約1,200円値上げすることを公表した。なお、大豆かすなどの値上がりが大幅なことから、原料配合割合によって畜種別の改定額は大きく異なるとしている。

<最近の原料コスト動向など>

1.飼料穀物

 トウモロコシのシカゴ定期は2004年米国産トウモロコシの史上最高の豊作が確定したことから年初より安定した価格で推移してきたが、2月に入り大豆の主要産地であるブラジルでの干ばつ懸念から大豆のシカゴ定期が急騰したことにつられて上昇に転じ、現在は210セント/ブッシェル(3月限)前後の水準となっている。今後は、南米の大豆生育状況や今年の米国産トウモロコシ作付面積動向が相場に影響を与えると予想されるが、(1)現在のシカゴ定期はここ数年の中では安値圏にあること、(2)投機資金の流入により商品市況全体が上昇していることなどにより、価格は堅調に推移するものと見込まれる。

2.たんぱく質原料

 大豆かすのシカゴ定期は、2004年米国産大豆の生産量が史上最高の豊作となったことにより下落したが、2月に入りブラジルで乾燥気候が続き新穀生産量が減少する懸念が広がったため急騰し、現在は180ドル/ショートトン(3月限)台の水準となっている。

4〜6月期の国内大豆かす価格は、シカゴ定期の大幅な上昇・円安に加えて、搾油量減少による国内大豆かす需給のひっ迫により、1〜3月期に対して大幅に値上がりすると予想される。

 配合飼料価格の値上げが行われるものの、配合飼料価格安定制度による補てん金は交付されない。これは、同期の配合飼料価格が直前1年間の供給価格の平均を下回るため、補てん金交付の対象とならないことによるものである。


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