◎調査・報告


平成17年度ナチュラルチーズ嗜好実態調査

社団法人 中央酪農会議


はじめに

 わが国におけるチーズは、これまで堅調に伸びてきており、成長分野と位置づけられている。また、国際化の進展や食に対するニーズが多様化するなかで、輸入品と価格面で競争し得るとして、最も消費動向が注目される乳製品の一つである。

 現在、牛乳の販売不振により、生乳需給は厳しい緩和状況にあり、計画生産を実施するなかで、処理不可能も発生している。このため、チーズの需要拡大が期待されるが、近年、その成長がやや鈍化しており、成熟段階に入ったとの見方もある。

 このような状況の中で、今後、さらなる国産ナチュラルチーズの消費拡大を図るためには、輸入品も含めた市場の動向を正確に把握し、日本の消費者の嗜好に対応した製品開発を促進することが重要と考えられる。さらに、チーズの競合商品とみられる商品に対し、その優位性あるいは不利性について把握することは、今後の商品開発に資することが可能と考えられる。

 そこで、本会議では、今後の国産ナチュラルチーズの振興および開発促進の一助として活用していただくため、平成17年度生乳需要拡大事業の一環として、「ナチュラルチーズ嗜好実態調査」を実施した。今回、その調査結果の概要を紹介する。


官能評価調査

1 調査の目的

 本調査の目的は、ナチュラルチーズに関する一般の消費者を対象とした調査を行い、以下のことを明らかにする。

(1)ナチュラルチーズのおいしさについて

 @消費者の各種のナチュラルチーズに対する認知および摂食などの経験の実態
 A消費者がナチュラルチーズを実際に食べての官能評価

(2)ナチュラルチーズの効能の評価およびほかの食品との比較について

 @ナチュラルチーズの健康面における効能およびおいしさを感じる要因
 A本調査で食べたナチュラルチーズとチョコレート、ピーナッツ(落花生)との特定の項目の比較


2 調査の方法

  質問紙を用いた面接式で行った。東京の展示会場にて、参観していた20歳以上70歳未満の男女をパネラーとして調査を行った。

3 調査実施日

 平成17年11月


4 用いたサンプル

 用いたサンプルは、ナチュラルチーズ3点(表1)とし、小売向けに実際販売されている製品から選択し、都内の小売店において購入し、それぞれ5グラム〜10グラム程度にカットして供した。また、個人の基本的属性、日頃のチーズの消費状況、健康への効果面やおいしく感じさせる要因についても質問した。さらにサンプルに供した商品とチョコレートおよびピーナッツと食材の材料や飲み物との相性について比較を行い、品目間で順位付けを行った。

表1 サンプル一覧


5 分析方法

 パネラーの性別・年代といった基本属性により、クロス集計による分析を行った。

 検定は特に断りのない限りカイ二乗検定による。検定結果は、有意水準(p)が0.01以下のとき「**」、0.05以下のとき「*」、0.05よりも高いときは「-」と図表の下に表記した。

6 パネラーの属性

 有効回答数は338名。依頼の際に「チーズが嫌いだから」という理由で協力が得られないケースがあったため、このパネラーは比較的チーズの好きな人が多いという点に留意する必要がある。

 性別・年代の内訳は、女性が4分の3、男女とも各年代にわたり均等となるようにした。(表2)

表2 パネラーの年齢構成

表3 パネラーの職業

 前述の事情から、この調査のパネラーは、一般にチーズが好きな人が多い傾向がある。

 チーズ一般に対する好みについて質問したところ、回答者全体の44.4%が「大好き」、48.5%が「好き」と回答している。「どちらでもない」は5.6%で、「嫌い」は1.5%である。大嫌いな人は全くいない。

 なお、性別には有意差がみられた。(図1)

図1 パネラーのチーズ一般に対する好き嫌い(性別・年代別)


調査結果

1 チーズに対する日常の行動

(1)チーズを食べる頻度

i チーズを食べる頻度
 官能評価に参加した全ての人に対し、チーズを食べる頻度について質問を行った。

 全体では、「週4回以上」が16.3%、「週に2〜3回ぐらい」が24.6%、「週に1回ぐらい」が最も多く28.1%、「月に2〜3回ぐらい」が21.3%であった。

 性別における比較では、女性の回答のピークが「週に1回ぐらい」であるのに対し、男性では「月に2〜3回ぐらい」である。女性は男性よりも食べる頻度が高い傾向がみられ有意差も認められる。

 女性の年代別では、有意差は見られないものの40代での摂食頻度の高さと20代での摂食頻度の低さに傾向がうかがえる。ただし、これらの傾向は、チーズが使われた料理に対する認知度の影響が考えられる。そのため、実際の頻度の差はもっと小さいと推測される。(図2)

図2 チーズを食べる頻度(性別・年代別)

 また、この調査では、チーズを食べる頻度について、平成12年度以降同じ質問を行っている。なお調査時期は各年とも11月であり、調査実施場所は同一、パネラーの性別・年齢構成はほぼ同様である。そこで、平成12年度以降の「チーズを食べる頻度」へのパネラー回答について比較した。

 「週に2〜3回ぐらい」と「週に1回ぐらい」との回答が中心的であることは各年とも共通している。「週4回以上」との回答は、平成12年度においては13%であったが、13年度以降は16%〜18%台で安定している。(図3)

図3 チーズを食べる頻度の経年変化

ii チーズを食べる頻度の変化

 今から5年前と比較してチーズを食べる頻度が「増えたか、減ったか」について質問を行った。

 全体では47.3%の人が「増えた」と回答し、「減った」と回答した人は9.5%にすぎない。性別における比較では、女性の52.0%が「増えた」と回答しているのに対し、男性の「増えた」との回答は34.1%と低い。男性の場合「変わらない」との回答が最も多く53.4%と半数以上に達している。

 女性の年代別では、有意差は見られないものの40代、50代における「増えた」の回答割合に高い傾向がみられた。(図4)

図4 チーズを食べる頻度の変化

 チーズを食べる頻度の変化についての回答について、平成12年度以降の経年変化をみたのが図5である。この質問は「今から5年前と比較して、あなたのチーズを食べる頻度は増えましたか」と、5年前を振り返って自分の摂食頻度を質問するものである。

 平成12年度は、頻度が「増えた」との回答が59%だったのに対し、13年度以降は48%〜50%台で安定している。長い目でみると、チーズの摂食頻度は増加しているものの、平成12年度ごろと比較して、頻度の増加が穏やかになっている可能性がある。

図5 チーズを食べる頻度の変化の経年変化

iii チーズを食べる頻度が増加した理由

 チーズを食べる頻度が「増えた」と回答した人に、その理由を質問した。

 最も回答割合が高いのは「お店のチーズの品揃えが増えたから」で全体の44.4%、次いで「チーズを使う料理が増えたから」(41.3%)、「健康によいから」(38.8%)、「自分の好みの製品と出会ったから」(31.3%)の順となる。

 性別による回答割合では有意差が認められたものはなかったものの、女性では男性に比べ「値段が安くなったから」および「自分の好みの製品と出会ったから」の回答割合が高くなっている。

 女性の年代別の回答割合では、「健康によいから」で有意差が認められ、60代では66.7%と最も多くなっており、一方20代では11.5%に留まっている。

 なお「テレビや雑誌、ネット等を見て関心を持ったから」の回答は5.0%と意外に少ない結果であった。(表4)

表4 チーズを食べる頻度が増えた理由(複数回答)


チーズを食べるうえでの留意点


チーズを食べるうえでの留意点について質問した。

 最も回答割合が高いのは「味」で全体の90.5%で圧倒的に多く、次いで「香り」が47.0%、「賞味期限」が33.7%、「添加物の内容」が33.4%、「栄養成分」が25.4%、「産地」が23.4%、「歯ごたえ」が22.2%の順となる。

 性別による回答割合では「添加物の内容」「賞味期限」および「産地」において有意差が認められ、いずれも女性が男性に比べ回答割合が高くなっている。

 女性の年代別の回答割合では、「味」「添加物の内容」および「産地」において有意差が認められ、「味」では20代が96.2%で、「添加物の内容」では50代が51.1%で、「産地」では40代および50代がともに34.0%で、それぞれ最も高い回答割合となっている。

表5 チーズを食べるうえでの留意点(複数回答)

 なお、サンプルに対する嗜好等の個々の結果については表6、表7にまとめた。

表6 3種類のサンプルに対する嗜好や健康への効果面およびおいしさの要因

表7 3種類のサンプルとチョコレートおよびピーナッツと食材や飲み物との相性の比較


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