1 平成17 年度の食料自給率実績
平成17年度の総合食料自給率(概算値)は、カロリーベースで40%(8年連続横ばい)、生産額ベースで69 %(対前年度横ばい)となった。
カロリーベースの食料自給率を食料消費面から見ると、米については引き続き消費が微減した。また、畜産物については、鳥インフルエンザ発生の影響等により減少していた鶏肉の消費が増加したものの、牛乳・乳製品が飲用需要等を中心に減少した。さらに、植物油脂、果実、野菜についても消費が増加した。この結果、国民1人・1日あたりの総供給熱量は2,573kcal(対前年度0.4%増)となった。
一方、生産面では、ばれいしょ、魚介類等が減少したものの、大豆、野菜、果実などの生産量が前年度に比べて増加した。この結果、国民1人・1日あたりの国産熱量は1,021kcal(対前年度0.7%増)となった。
また、生産額ベースの食料自給率については、畜産物が国産単価の上昇等に伴い国内生産額が増加した一方、米や野菜は国産単価の下落に伴い国内生産額が減少したため、食料の国内生産額は10.2兆円(対前年度3.9%減)となり、輸入品を含めた食料の国内消費仕向額は14.9兆円(対前年度2.9%減)となった。
2 平成17年度の実績値と平成27年度の目標値との関係
次に、これらの実績値と、食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画)」で示された27年度における総合食料自給率の目標値との関係について、食料消費面及び農業生産面から以下の通り分析を行った。
【食料消費面】
(1)平成17年度実績と平成27年度目標に向けたシナリオとの関係
食料・農業・農村基本計画の食料自給率目標について、基準年としている15年度と目標年である27年度との自給率の値を直線的に結んだものを目標達成に向けたシナリオ(以下「目標シナリオ」という)とした場合、17年度の実績値が目標シナリオを下回る(望ましい食料消費の姿)を実現していく上で消費が不足している)のは、麦類、牛乳・乳製品、牛肉となっている。
一方、目標シナリオを上回る(望ましい食料消費の姿)を実現していく上で「消費が過大となっている」のは、豚肉、鶏肉となっている。
なお、米、大豆、油脂、野菜、鶏卵、砂糖は、ほぼ目標シナリオに乗った実績となっている。
(2)品目別に見た実績値と目標シナリオとの乖離の要因
17年度の実績値と目標シナリオとの乖離に関する主な要因は以下のとおりである。
麦類: 手軽に総菜を同時に食べることができる調理パンが好まれるようになったことによパン自体の消費減。贈答品需要の低迷等による日本麺需要の減少。
牛乳・乳製品: 豆乳類・野菜ジュース等他飲料との競合の激化による飲用需要の減少。価格高騰によるチーズ消費量の減少。
牛肉: 米国産牛肉の輸入停止措置の影響による消費量の減少。
【農業生産面】
(1)平成17年度実績と平成27 年度目標に向けたシナリオとの関係
食料消費面と同様に、農業生産面について17年度実績と目標シナリオとの関係を見ると、17年度の実績値が目標シナリオを下回る(「生産努力目標」を実現していく上で生産が不足している)のは、野菜、生乳、牛肉、豚肉、さとうきび、飼料作物となっている。
一方、生産実績が目標シナリオを上回る(「生産努力目標」を実現していく上で生産が十分なレベルを超えている)のは小麦、鶏肉、てん菜となっている。
なお、大豆、鶏卵は、ほぼ目標シナリオに乗った実績となっている。
(2)品目別に見た実績値と目標シナリオとの乖離の要因
17年度の実績値が目標シナリオを下回る品目の主な要因は以下のとおりである。
野菜: 農業従事者の高齢化の進展等による作付面積の減少の進行。国内生産が加工・業務用需要に十分対応できていない。
生乳: 生乳需給の緩和に伴う北海道、九州等での生産抑制対策の実施。
牛肉: 生乳生産量の減少に伴う乳用種及び交雑種の出荷頭数の減少。
さとうきび: 台風及び干ばつ等の影響。
飼料作物: 飼料作物作付面積の減少及び低温等による単収の減少。
3 平成17年度の実績における主な課題
17年度の実績及び分析を踏まえ、以下の課題に早急に取り組むことが必要である。
【食料消費面】
基本計画における「望ましい食料消費の姿」では、全世代平均の脂質熱量割合の低下、脂質を多く含む品目の消費減、糖質(炭水化物)を多く含む穀類の消費の横ばい、カルシウム等微量栄養素及び食物繊維が摂取できる豆類、野菜及び牛乳・乳製品の消費増を見込んでいる。
こうした見込みを踏まえ、食料自給率目標の達成を図る上で大きなウエイトを占める米については、消費の減少傾向が鈍化しつつあるものの依然として減少傾向が続いているため、望ましい消費水準の実現に向けて消費を着実に拡大させる必要がある。
また、牛乳・乳製品については、今後、飼料自給率の向上を前提に消費を拡大させる必要がある。
一方、17年度の実績値が目標シナリオを上回っている豚肉、鶏肉については米国産牛肉の輸入停止措置に伴う牛肉消費減の代替需要と考えられるが、今後、食料自給率を向上させるとともに脂質熱量割合を低下させていく観点から、国産の肉類の消費拡大を図りつつ、消費の全体量を望ましい消費水準としていく必要がある。
【農業生産面】
野菜については、食の外部化や簡便化により需要の増加が見込まれる外食・中食向けや飲料向け等の加工・業務用野菜において、国産野菜の供給が十分対応できず、相当程度が輸入品によって賄われていることから、実需者側のニーズに的確に対応した国産野菜の生産を促進する必要がある。
また、牛乳・乳製品については、需要に応じた生産を基本としつつ、チーズや生クリーム向け等といった需要が見込まれる品目への生乳の供給を拡大し、生乳全体の生産量の維持・向上を図る必要がある。
さらに、飼料作物については、食料・農業・農村基本計画で示した飼料自給率目標(35%)を達成していくため、今後、作付面積及び単収の両面から目標シナリオと実績との乖離を着実に解消していく必要がある。