千葉農林振興センター/大塚 洋功
千葉県八千代市は東京都心まで30キロメートルという位置ながら、農業粗生産額約40億円と都市化が進む中、都市と農業の共生を保っている地域である。酪農においては、古くから首都圏への生乳供給地としての歴史を持ち、市内の主要産業の一つと位置付けられている。また、都市近郊の混住化地域のため、早くからふん尿処理対策にも取り組み、平成8〜12年に畜産環境整備特別対策事業により共同処理による牛ふんのたい肥化発酵施設、尿の浄化処理施設を導入し、地域環境との調和に努めている。また、自給飼料生産にも積極的に取り組む経営も多く、農地の遊休化抑制の一端も担っている。 今回紹介する(有)高秀牧場は経産牛120頭、育成牛80頭をフリーバーン+パーラー(8頭ダブル)方式で飼養している酪農経営である。経営方針としては、農場主の高橋秀行さんの「牛は草で飼う」の理念に基づき、乳牛の「長命連産」を目指している。酪農経営全体が所得確保のため1頭当たり搾乳量の増加を図る傾向の中、高秀牧場では乳牛の更新率の抑制、繁殖成績の向上による回転率の向上を目指すとともに牛群検定の活用などにより経営の安定化を図っている。 自給飼料生産においては、自己所有畑、遊休化した野菜畑を利用して、トウモロコシサイレージを約5ヘクタール生産し、河川敷などを利用してイタリアンのロールベールサイレージを約5ヘクタール生産している。また、育成牛の飼料として地域の水田の稲ワラ収集も約5ヘクタール行い、飼料コストの低減を図っている。 また、平成16年より地元の営農組合と連携し、稲WCS(ホールクロップサイレージ)にも取り組み始め、搾乳牛の飼料として上手に活用している。収穫は、既存の収草機を生かし牧草の予乾体系で行い、播種、栽培管理は地元の営農組合で行っている。取り組み当初は、食用種(コシヒカリ)での約2ヘクタールの苗移植栽培(湿田)であったが、今年度においては、更なる増収と労力低減を目指し、飼料用イネ専用種(ホシアオバ)による約10ヘクタールの乾田直播栽培を行っており、今秋の順調な収穫が期待されている。
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